PROLOGUE:零の指弾-黒崎零-
黒崎零。彼と出会った時に俺はただならぬ縁を感じた。
思いだしちゃあいけないこと……俺にはそんなのいっぱいあるけども。
彼が衝撃の告白をするまで俺はそれが何かわからないままだった――
俺が生まれたのは鹿児島のどこかの町、物心ついた時から親なんていない。気がつけば悪友とつるんで悪巧みを繰り返し、学校にも行けなくなった。
10代から20代はただ遊びを楽しめればよかった。色んなところへ行ってみたいと思って、違法な仕事を渡り歩いて全国をまわった。
色んな男と喧嘩して色んな女を抱いて、それで俺の人生は良かった気がした。
「邪魔なヤツを殺そう」
俺の目のまえに現れた10代の少年が真顔で俺に言ってきた。
少年と言っても、両腕と背中に立派な紋々が入った筋入りの組員だ。そして組長の息子だ。俺は彼のボディーガード兼お目付け役として彼と行動をともにした。
おそらく全てが変わったのは組長の白崎左之助が消されてからのことだ。
俺と組長の息子をはじめとした白崎組の面々が次に狙われるのは明白だった。俺たちを除く組員が続々と俺達の元から離れて別の組と合流していった――
彼はそれでも動じている様子がなかった。
ソファーで腰掛けて悠々自適に好物のドリンクを飲みながらリラックスしている。明日誰かに殺されてしまうのかもしれないのに――
「お前、人を殺した事がないのか?」
「そこまでの事はした事がない。逆にお前にはあるのか?」
「ないよ。だけどきっと簡単なことさ」
「簡単なこと?」
「みせたいものがある。そのまえに俺と契りを交わして貰わないといけない」
「契り?」
「これから俺と一蓮托生だ。逆らったら、どうなるか分かるな?」
俺は以前組長にそんなことを言われた事がある。でもここからが違った。
「この場でお前にマシーンのモルモットになって貰う。間違った判断をするな。今ここでお前にある選択肢はこの場で生き残るか死ぬかだ……!」
彼は微笑む。その笑みはもはや少年のつくる顔ではなかった。今までにみたことのない極悪人のそれそのものだった。
「わかった。わ、わかったよ……」
俺は冷や汗を垂らしながらも、そう答えた。
「いかつい男がビビるなよぉ! はっはっは!」
彼は明るく笑いながら俺の肩をたたいて掴む。
情けない話だが、俺の体はずっと震えていた。そしてその翌日、俺は組からも組長の息子であるそいつからも逃げることにした――
もうアイツの名前は覚えていない。思いださない方がいいのだろうけど。
そんな夢をさっきまでみていた――
あくびをしながらカーテンを開ける。鳥のさえずりが聴こえる。
差し込む光は変な悪夢を忘れさせてくれたようだった――
∀・)後半開始でございます!気がついた人がいるかもしれませんが、じつは前半のプロローグと多くをリフレインさせてます!でもよくみると前半とプロローグと多くが違うんですね~!そこが結構ポイントです!後半も引き続きお楽しみくださいませ★★★彡