~第4幕~
創と紫音が正式にカップルとなって、創のクラブ通いはなくなった。
そのかわりに拠点を再び川崎に戻すこととなる。信じられない話だが、創はクラブ遊びに耽っていたようで、インターネット上で様々な商売を展開させていた。その収益は大野会本部から奪った組織金と同額ぐらいの大金にのぼる。
「創くん! すご~い!!」
「惚れなおしてくれたか?」
「うん! 大好きよ!」
いい歳をした女と大人になってない少年がラブラブな様子をみせつけてくる。「みてられねぇ」と思いつつも、新たに構えた拠点の「いかにもさ」に鬼道院は感心をさせられた。それは探偵事務所を装った違法ネットビジネスの拠点でもあったのだ。
置かれているパソコンは3台。さらに3台も同事務所に隠されている。
紫音は警察へ虚偽の報告をしてくれたらしい。完全に創の虜になっている。しかし、それが事もあろうか機能しているのだから世にも奇妙な話である。
「ここの探偵事務所の職員は鬼道院、お前一人が担っているという事にしろ。『虎の子探偵事務所』は仮の名称だ。俺たちはそれをカモフラージュにもっとでかい夢をみる」
「でかい夢だと?」
「ああ」
「それは何だよ?」
「世界征服だ!!」
「やだ! 素敵!」
「惚れてくれた?」
「もちろんよ♡」
創の笑顔は嫌に爽やかでいて、確信に満ち溢れていた――
「俺は0という数字が好きだ。チーム名は零の……零の指弾でいこう!」
それから零の指弾は稼ぎに稼いだ。ハッキングを行い、荒稼ぎする事も多々あった。特に白崎創の動き方は一切の隙が無かった。仕事の延長で他人の命を奪う事も躊躇なくやってみせた。その全ての暗躍に警察である紫音が協力までしてみせるのだから――
彼らはそのまま確信したのかもしれない。
きっと、このまま世界征服もしてしまえるだろうと。
しかし、その確信は半年も経たないうちに崩れ落ちた。
『白崎創、鬼道院魔裟斗、羽藤紫音、零の指弾、直ちに投降しなさい。お前達の罪状の明らかだ!』
世界に1つしかない零の指弾本部は警察車両に囲まれた。
そして未曾有の銃撃戦が始まる。
創は大野会を壊滅においやった超音波マシーンを使ってみせた。その結果、捜査の最前線にいた明神翔は殉職した。しかし続く部隊の狙撃に紫音の頭部が撃ち抜かれた。そしてその時に一体何を想ったのか、創はその場で両手を上げ、降伏する姿勢をみせた。鬼道院も目を丸くするばかりだった。
白崎創はポロポロと涙を溢し続けた。
そして笑っていた。
彼が残した言葉は現場に言わせた誰のも記憶に残る――
「警察のみなさん、カッコいいですね……」
世紀の大悪党の呆気ない終幕だった――
∀・)ここで前編が終了となります。次回から後半になります。