~第1幕~
鬼道院と創は白崎組の大元、大野会本部の屋敷を訪れた。
彼らを呼んだのは会長である大野基文だ。
場合によってはそこで消されてしまうのかもしれない。会長と交渉したのは未成年の創。どうやら大金を持ってこいと言う話を掛けられたらしい。
そもそも事の発端は左之助組長が組織の大金を改竄して隠蔽した事にあった。彼はその疑惑が事実無根であると主張していたが、次々と組の若人が不審死を遂げ、ついには組長も組織の闇に葬られた。
「そもそも大金なんてなかった」
「え?」
「嵌められたのさ。親父も俺達も」
鬼道院は会長が居る部屋の手前で創が彼に話したことを思いだしていた。ここに来たということは別の組への編入を言い渡されるか、最悪はその場で処分されるということ……。
護衛の案内で会長の居座る和室へ入る。
大野は「よくきたな。ブツをだせ。今日はそれで帰らせてやる」と創の顔をみるなり、ニタリ顏で吐く。
創がスーツケースを開ける。そこには数え切れないほどの札束が入っていた。これには会長も傍につく幹部達も丸い目をして唖然とした。
それもその筈。大金なんてそもそも彼には最初からなかったのだから。
「金よりもっとイイものをやるよ」
そう創が言ったような気がした。耳栓をしている鬼道院には聞こえなかったが、彼がそんな何かを言っていたのはひと目で解った。そして彼はスーツケースの中身表面にある札束を払いのけた。露わになったのは異常音波を発する殺人マシーンだ。
事も簡単にその場で大野たちの鼓膜が破れ、彼らは即死した。
耳栓をしているとは言え、鬼道院も痛みを伴う。
「作戦成功だな」
やがて創がフードを外す。鬼道院もそれに合わす。
異常な音が発せられた事に周囲もざわつき始めた。
鬼道院は拳銃を構えて創を護ろうと務めたが、それは大して意味のない事だとすぐに分かった。
彼は襲って来る組員を次々とマシーンを使って殺害していったのだ。
彼は笑う。大声をあげるようにして。
鬼道院は耳栓をしながらもなお、拳銃を手放して耳を塞いだ。
白崎創、零の指弾、彼らのはじまりはまさに地獄のヒーローの誕生だった――
∀・)とんでもない幕開け「零の指弾」でございました。また次号。