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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界は箸とともに

作者: たこ

「ついに明日は洗礼式だね!ティック!」


「そうだな、一体どの属性の魔法が使えるのか楽しみだぜ」


「ティックはわかんないけど、私は髪の色からもう水属性確定してるんだよね〜なんかつまんないな」


おれが転生したこの世界では10歳になると洗礼式で火水土光の4つの属性のうち一つの魔法が授けられることになってるらしい。今おれと話していた少女ノアは髪色が水色なので水属性なのは確定と言われている。


「まあいいじゃねーか水属性は。この田舎村で畑仕事するにはもってこいだ。まあ俺はこんな村出てって冒険者になるつもりだがな」


「まーたそんなこと言って…でもティックが冒険者になるなら私も一緒なんだからね!」


「もちろんだ、その時はよろしく頼むぞ。(ノアは美少女だ、来たるべき我がハーレムのメンバーとして相応しい器よ)」



洗礼式当日。


授かる属性は神殿で光に包まれたあと、手のひらに紋章が現れるのでわかるようになってる。ノアはやはり水属性を授かった。初めてだからかジョウロから水が垂れるレベルだった。だが問題は俺だった。俺の手のひらに現れたのは箸のマークだった。


頑張って魔法を出そうとしても出せない…


「俺は冒険者になれないのか…」


「元気出してティック!まだ魔法が使えないと決まったわけじゃないでしょ?」


ノアの優しい笑顔に癒される。


「ああ、まだ試すべきことはあるからな!諦めるわけにはいかないさ!」



それから俺は紋章に現れていた箸のマークから、箸を使う何かができるのではと考え、箸をもっていろいろ試してみた。


するとなんと…


箸を扱う技術がすごいではないか!


「いや、だからどうするんだよ…」


しばらく落ち込んでいると台所から甘い匂いがしてきた。


「ティックの好きな甘納豆作ったよー!食べてー。キャッ」


ノアが地面の何かに突っかかって転び、ボウルに入っていた大量の甘納豆が空中に舞った次の瞬間、とんでもないことが起きた。


なんと、俺は持っていた箸で空中に散らばった甘納豆を地面に落とすことなく全てキャッチし、ボウルに入れていたのだ。


しかもほぼ反射的に、無意識で…


「これが、俺の魔法…いや、だからこれじゃ冒険者になれんわ…」


「すごいよティック!大道芸人になれるよ!」


「なりたくない…」


「ん、待てよ?掴みに特化してるってことは、魔法攻撃も箸で掴めるんじゃないか?

ノア、試しに水球を俺に打ってくれないか?」


「いいけど濡れても知らないからね!エィ!」


手のひらで水の塊が生成され飛んできて…


俺はそれを端でキャッチしていた!


「やっぱり俺の仮説は当たってたんだ!攻撃をキャッチすることができる俺の魔法は冒険者としてわりかし有能かもしれない!」


おそらく相手が俺以上の魔力を持っていた場合、箸ガードは通用しないだろう。基礎力を鍛える必要があるな…


「よっしゃ!そうと決まったら冒険者として大成してハーレム築いてやるぜ!」




それから数年経ち、俺とノアは中心部に迷宮を構える都市にやってきて、冒険者としてのキャリアをスタートさせた。


敵の攻撃を俺が端でガードし、その隙をノアが水属性の攻撃で倒すという戦法によって安定した攻略を進めることができ、冒険者としての等級はFから始まったのが今ではDランクになっている。


このまま幸せな時間が続けばいいのに、そう思っていた矢先に事件はおこった。


俺とノアが同居していた家に、脅迫状が届いていたのだ。


[お前の母親の身柄はこちらが預かった。返して欲しいならお前の女を連れて西の旧市街の廃工場に来い]


そしてそこには母が死んだ父の形見だと言って大事にしていた耳飾りが置いてあったのだ。


「許せねえ、誰だか知らねえけど母親はぜってえ取り返して一泡吹かせてやる。目的はおそらくノア、お前だろう」


「よくわかんないけど、おばさんを助けにいかなきゃだよね!」


「お前を危険な目に合わせたくないがノアを連れて行かなかったらお袋がどうなるかわかんねぇ、頼む…」


「何言ってるの!いつもティックのそばにいるって約束したじゃない!早くいくよ!」


「ああ…!」



廃工場に着いた。


「開けるぞ!」


ガラガラガラガラー


「束縛樹!」


「きゃぁ!」


「ノア!」


ノアが脅迫状を出しただろう人物に木魔法によって捕まえられてしまった。


「木魔法は水魔法に強いからねえ、ノアちゃん、君から先に捕まえさせてもらったよ。あとでたっぷり可愛がってあげるからね」


「誰だお前!ノアと母さんを解放しろ!お袋をどこにやった!」


「そういえば自己紹介がまだだったね、私はS級冒険者のウッドレイ。ああ、それと、君の母親ならここだよ。」


「何?s級だと!?」


ウッドレイとかいうやつらなにか手に持っていたボタンを押すと、工場の中にあった一つのコンテナが開いた。


ガラガラ


「お袋!生きてるか!」


「ティック…あんたきてくれたのかい。飯が与えられてたからなんとか生きてたよ。あんた早くここから出しておくれ…」


そう言ってバタッとお袋は倒れた、


「お袋!」


ウッドレイとかいうやつはノアの体が目的だろう。お袋はとりあえず置いといてこいつを倒してノアを木の呪縛から解放させてやる!


でもできるのか…こいつはsランク、対して俺はdランクだ。格上にも程がある…けどやるしかない!


「お前を倒す!ウッドレイ!」


「さて、お遊びに付き合ってあげようか。

君のことは調べてある。箸をつかって攻撃をガードする。相手が格上の魔力を保持していた場合それは通用しない、そして自らは攻撃手段を持たない。つまり君は僕に勝てないんだよ。」


「まずは手始めにこれなんてどうかな?」

 

ウッドレイが軽めの魔力で木の実を生成した。そしてそれを爆発させる。すると種子が指向性を持ってこちらに飛んでくる。


俺はそれを箸で全てキャッチした。


「おお!すごい技術だねぇ、まあ一回見れたからもういいや、死んでね」


そういうとウッドレイは地面から巨大な木を生やした。それぞれの枝がしなり、こちらに攻撃を仕掛けてくる。しかも魔力が大量に込められており、箸でガードできない。


当然おれは箸でガードできない攻撃もあると知っていたので対策はしてある。それはひたすら回避技術を上げることだ。しかしこのままではジリ貧だ。どうすれば…


「ははっ逃げ回るネズミを追いかけるのも楽しいなぁ。まあでもそれも飽きたよ。ほんとに次がラストだ。」


そういうとウッドレイは木の枝を全方向に撒き散らす範囲攻撃を仕掛けてきた。


「くそっ、範囲が広い分魔力が下がってるがさすがにこの数は捌けねえ、アアアッ!!」


何十本もの木の枝が体にささり、ティックは地面に倒れた。


「さて、さっさと君にとどめをさしてノアちゃんを可愛がろう。楽しみだねぇ」


そう言ってウッドレイは木できた鋭利な剣を生成し大きく振りかぶった。


ああ、俺、死ぬんだな…もう少し異世界満喫したかった、ハーレムなんて夢のまた夢だった。ノアも守れないなんて…


そして走馬灯がよぎる。



ああ、これは前世の日本だ…



「おばあちゃん、何でごはんに箸刺してるの?」


「それはね、箸を媒介としてあの世にご飯をお供えしてるんだよ…



はっ!!!





瞬間、俺は残った力を振り絞り、持っていた箸をウッドレイに突き刺していた。油断していたからか、箸はウッドレイの鍛えられた腹筋に少しのめり込んでいた。


「ははっ、なんの真似だい?そんなちっぽけな攻撃は私には効かない…ウッ!な、痛い、痛い!何だこれは!ナニヲシタぁ!!!」


「箸を、さした」


「だから箸を刺しただけでどうしてこうなる!痛い、痛い!あれ!私の手足がどんどん薄くなっている!何をしたんだー!」


やがてウッドレイの体は透明になり、そこには何も存在しなくなった。


「これが本当の、橋渡しってね」



俺がしたことは単純だ。ウッドレイとあの世の橋渡しをしたのだ。箸によって。箸に媒介されウッドレイはあの世へ消えていった。ただそれだけ。


どさっ。


振り向くとウッドレイの木魔法から解放されたノアがぐったりして倒れていた。


「大丈夫か!ノア!」


「うん、大事な時に足手纏いになってごめんね。それよりおばさんを…」


「あ、そうだお袋!大丈夫か?」


「ああ、助けれくれてありがとうティック、自慢の息子だよ…」


「よかった!お袋もノアも無事で!…」




この事件の後、対外的にウッドレイは逃亡したことになっている。おそらく存在が消えたことで今まで隠していた罪がバレて、そう解釈されたのだろう。俺たちはというとあいかわらず冒険者業を続けていた。橋渡しの魔法を使えるようになったことでsランクも近いだろう。


「ノア、これからも俺のそばにいろよ」


「もちろん!それなら結婚しようよ!」


「はっ!?(いやいずれハーレムの構成員になるはずだったからいいんだけどねっ)


「なによその反応はー」


じーっと見てくるノア。


「いや急で驚いただけだよ。結婚しようか」


「うん!」


その後ハーレムはできることはなかったが、5人の子宝に恵まれて幸せに暮らした。

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