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ep7

           

俺が席についた瞬間、自分たちの番号が呼ばれたのか、女子たちは入れ違いで席を立った。


「ごめんよ、彼女たちが待ちきれないって言うから先に座ってしまって」


「気にするな。こちらもあいつが騒がしくしてすまない」


 さて、奴はどう出てくるかな?


「あれ?武立くんは何も頼んでないのかい?」


「…そういう平井も何も食べないのか?」


 そう、こいつも食べ物はおろか食券すら持ってない。


「あぁ、今日はちょっと…ね」


「そうか…」


 気まずい雰囲気。たいして仲良くない知り合い以上との会話でよく見られる光景だ。数瞬の沈黙の後、平井が口を開く。


「武立く─「あ、そういえば」


 お前に話をさせるつもりはないぞ。


「平井は休日とか何してるんだ?」


「えっ、あぁ、えっと、勉強とか修行とか、かな?」


「へぇー、例えばどんなことしてんの?」


「えーっと…」


平井が言い淀んでいる内に女子たちが帰ってきた。


「え~?なになに~?メンズトークしてんの~?」


 天野がニヤニヤしながら席に着く…大盛りのカレーを持って。すごいなあれ、あの体であの量って。


「桃崋ちゃん、話の邪魔しちゃだめだよ」


 横で清水がたしなめる。彼女は日替わり定食のAか。無難だな。


「源、説得上手くいってる?」


 おい、直球だな。どれどれ、鹿島のは……パフェ、か。昼食にパフェって、デザートになら分からんでもないがメインでパフェって。


「別に、私はこのチームに彼を入れなくてもよろしいと思いますのだけれど」


「まぁまぁ、そう言わず、我らもお仲間に入れてくださいな」


 "なにか"が嫌味を吐いた直後、後ろから孝直がぼやいた。こいつ帰ってくんの早ぇな。 


「ん?パンにしたのか?お前」


「おうよ。その方が腹膨れるからな」


返事も終わらないうちに、孝雄はパンに囓りついていた。


「うめっ!うめっ!」


 うるせぇなこいつ。いや、しかしだ、この煩わしさも今日この場限りでは俺の味方になりうるはずだ。


「おいおい孝雄ぉ~もうちょっと静かに食えよな~」


 こいつとの食事がうるさいのはいつものこと。


 そしてこのように発言すればさらに騒がしくなる!さらにそのままこいつとの茶番であいつらを置き去りにしてこの昼はやり過ごす!俺の作戦は完璧だ!


「あ、はい、分かりました」


そう言い、孝雄は口をもぐもぐさせながら黙々と食べ始めた。


「はぁ?」


 どういうことだ?おかしい。こんな反応、こいつにはありえな───。まさか、まさかこいつ。驚愕で固まった顔をかろうじて視線だけでも孝雄へ向けると、奴は、笑っていた。

 

 あぁ、そうだ。なぜついさっきのことを忘れていたんだ俺は。こいつは()()()()()()()()()()()()()()


「どうした?虎太郎ちゃま。そんな顔しちゃってさ」


 ついに俺もやきがまわったか。若年性のアルツハイマーかもしれん、一回診てもらうか。それくらいのミスをしでかしたのだ、俺は。

 

 ……いや、まだだ。まだいくらでも方法はある。とりあえず作戦を組み直さないと。


「…いや今日は素直だなぁと思ってな」


「そりゃー年がら年中反抗期もつら─「ねぇ、ちょっと、いい?」


鹿島が割って入ってくる。


「なんで、私たちの誘い、断ったの?」


 ちぃっ!もう本題か!こいつの単刀直入さは正に評価が別れる点だ。今の俺にとってはマイナスだがな!


「さっき言った通りだ。単純に俺の力不足。これ以上の理由があるか?」


「確かに、ありませんわね。」


"なにか"のアシストが入る。  


「実力不足の者を組に入れるとそれだけ負担が大きくなります。そうなりますと彼の身はおろか、私たちの身にまで危険が及びます。ですから前々から言っている通り、私は反対ですわよ、この案」


「まぁまぁ、落ち着いてよ」


平井がいったん場を納める。


「武立君。他の人は騙せても僕は騙されないよ。君の霊力の量、質、共に尋常じゃないものだ。なぜ君が実力を隠してるかは問わない。今回だけでもいいから協力してくれないか?」


 むぅ、こいつが嫌な奴であったら気兼ねなく断ることができるがそうじゃないから厄介なんだよ。


 しかし、ここで受け入れてしまうと()()()()()に支障をきたすかもしれない。リスクは避けるべきだ。特に、こいつの勘の鋭さは異常だ。警戒を怠らないといけないな


「あのさ、熱く語ってるとこ悪いけど俺に才能なんてないよ。平井の勘違いじゃないか?」


「……どうしてもだめかい?」


 なんだその顔は!犬がおやつを懇願するような顔しやがって!


「…だめだ。足手まといは嫌だからな」


「ねぇ~げんげん~。」


カレーをきれいに平らげた天野が口を開く。


「武立君が嫌だって言ってるんだから無理に誘わなくてもいいじゃん。これじゃ武立君かわいそうだよ」


「私もそう思います。」


続いて清水も発言する。


「それにこれ以上議論を続けても平行線をたどるだけです。もう諦めましょう、源君」


 よし!二人とも俺の加入に肯定的じゃないぞ!今がチャンス!


「ま、そういうことだ。諦めな、平井」


 そう言い終えないうちに、俺は席を立つ。


「あっ!待ってよこたっちゃん!俺まだ全部食いきれてないよ!」


「知るかアホ。それにお前は平井たちについていくんだろ?今のうちに親睦でも深めとけよ」


 裏切り者など捨て置くに限る。


「それじゃ皆さん、俺はこの辺で」


そう言って去る俺を平井はもう引き留めはしなかった。















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