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ep2

やぁ。またあったね。実はもうひとつあったんだよ。でも、これが…精一杯の…最後の…書き留めです…受け取ってください…

          ※


「虎太郎様、学園に到着致しました。」


「ん、あんがと、『麻比呂(まひろ)』さん。」


「虎太郎様、学園ではもう少し落ち─「んじゃ、いってくる。」


 また、か。虎太郎様は話を聞いてくれない。私だけでなく御当主であり、虎太郎様の母である『龍美たつみ』様の話でさえだ。旦那様である『志郎(しろう)』様は気が弱く、頼りなく感じられる。期待はできないだろう。そうであれば、もう誰の話にも耳をお貸しにならないと確信している。


 あの日からだ。虎太郎様がおかしくなられたのは。婚約者である柚井様が倒れなさったあの日から、虎太郎様の素行はおかしくなられたのだ。そして、私たち侍従の集まり、呼衆の独自の調査によって原因は()()解明した。



 その原因とは《柚井様が柚井様でないから》だ。



 この結果を見たとき、少々困惑した。柚井様が柚井様でない。その意味を噛み砕けないまま、資料を読み進めると、ある資料に興味深い点があった。それは


《柚井様がご自分の名前を何度も練習している。"自身がお書きになったもの"をお手本として》


だ。そして、私は1つある可能性に気がついた。もしかしたら柚井様には"なにか"───。


 その時だった。虎太郎様が部屋にお入りになったのは。私たちに殺気を向けなさりながら──。


「この学園生活が()か…」


以前、虎太郎様が仰った言葉を反芻しながらお屋敷へと帰る。()()()()()も耐えているのだ。


 従者の私が我慢できなくてどうする。この学園生活に楔を打てばかつての()()()()()が帰ってくるのだ。


そう言い聞かせながら車を走らせていると、いつの間にかお屋敷を通り過ぎていた。

             

           ※


「おおっ!伝説のサボり魔、十天界銘をも恐れぬ虎太郎様が御登校なされたぞ!皆のもの、頭を下げよぉぉぉ!」


「去ねや!虎鉄三連擊!」ドドドッ!


「ぎぼぶべぇぁ!ぐ、ま、まさか、虎王帝戴拳の奥義をっ!」


「サラダバ、友よ。墓は例の工場の空き地に建てとく。」


「おまっ、それ思いっきりグールになるやつじゃん!」


「あらっ、随分と楽しそうにお喋りしていらっしゃるのね、武立さん?」


愉快なやり取りに横槍が入る。


「あぁ、()()か」


「ちょっと、婚約者に対してお前って失礼じゃない!?」


「ふっ…じゃあ、あんたがいいか?それとも─「武立虎太郎、藤原(ふじわら)先生が呼んでる。」


 ん?こいつは確か特待生に引っ付いている。


「鹿島さん!今私は─「四条宮さん、貴女、効率悪い…」


 『鹿島梨佳(かしまりか)』。名門鹿島家の巫女だ。


「な!あなた─」


「わざわざ悪いな鹿島、ありがとう。」


「ん、いいよ。君、源の友達だし。」


 いつの間にか俺も"取り巻き"に追加されてる。


「ちょっと待ちなさい、話しはまだ───」


喚いている"なにか"を放って俺は生徒指導室へ向かった。



         ※


「失礼します。」


 あっ、ノックすんの忘れた。まぁ、いいか。


「おはよう、武立君、なぜここに呼ばれたのか、わかっているのよね?」


口元だけの笑みを浮かべながらそう問うてきたのは我がクラス1-A担任であり学年主任である藤原静枝先生である。


「はい。重々承知しております。この度はこのわたくしめが日道会の第10席の闌さまに対して、無礼極まりな─「よくもそんな口が回るわね。」


部屋の空気が重くなる。物理的に。


「ねぇ、貴方、一体どうしたいの?どうなりたいの?」


「それ、貴女に言う必要あります?」


「私は貴方の担任であり、心の拠り所でもありたいの。分かる?」


「ふーん。随分と立派な趣味をお持ちで。まぁ、解らないですけど。」


「そぅ。じゃあ、精神的にも、肉体的にも解らせてあげようかしら?」


「せんせ、もうすぐ授業なんで教室に帰りますわ。」


「あらぁ、大丈夫よぉ。ちゃんと担当の先生には伝えてるから。貴方の欠席。」


「そうですか。それじゃあせんせ、嘘つきになりますね。じゃっ」


ジャガーのように椅子から跳ね飛び、コンマ数秒で扉へ向かう。


「へぇ、私から逃げられるとでも」


扉に対して結界術が構築されていく。


「マヌケめ!扉はブラフだ!」


そう言いながら、180度ほど回転して窓へ向かう。


「どちらにしろ、よ」


────ヒュッ、キュッ────


何かが足に絡まりつく。


「は?」


────ピシィィィ────


「ぶげぐっ!」ベチン


孝雄みたいな声をあげながら床に叩きつけられる。


「にゃ、なんだこらは?」


「ふふ、"非"普通生徒用の拘束陣による触手よ」


「かぁっ、気持ちわりぃ」


「そう、最高の誉め言葉ね」


「あんた、これで勝ったと思ってんの?」


「えぇ、どうみたって四肢を拘束されてる貴方に勝ち目はないと思うけど?」


「…まぁ、そうですよね。」


「じゃあ、話し合いを再開しましょ。君の抱えてること全部話してもらうから。」


「そうですか。じゃあまず()が抱えてる一番の秘密をお教えします。」


「えぇ、先生素直な子は好きよ。全部吐き出して頂戴ね」


「じゃあ、いきますよ。実は僕…」


「実は何?」


「"西行孝雄"でーした」テヘペロ


「は?」


「だーから言ったじゃないですか~。せんせ、嘘つきになるって~。」


気色の悪い笑みを浮かべ、孝雄は言葉を発する。


「ねぇ、一応聞くけど、武立君は?」


額に青筋を浮かべながら静枝は孝雄に問う。


「わがんね、おら、いきなり変化の術と洗脳の術かけられたからわがんねよ、せんせ。」


「ほんとは?」


彼女の手に霊力が集中する。


「だってよぉ!せんせ、あいつ購買のプレミアムシリーズをさぁ、1ヶ月も奢ってくれるんだぜ!あんな悪魔の言葉になんて勝てるわけないよぉ。」


「そぉ。で!武立君は!」


平静を保つのが難しくなってきたのか、語尾が強まる。


「え?あぁ、普通に授業受けてると思いますよ、多分」


「そう。それじゃあ、彼は後回しにして、まずは君からね」


「え?、は?、何が?」


「"何が"って決まってるじゃない。お・し・お・き。」


「ひぃやぁぁぁぁ!こたっちゃんんんん!絶対プレミアムフルコース奢れよおおおお!」

            

          ※


 済まぬ孝雄、お前の犠牲無駄にはしない。


「でだ、この式を代入するとxが最低値2を取る。つまり──」


この日の虎太郎は久々にしっかりと授業を受けることができた。まぁ、それも午前中だけだが。






内容的にはこのような日常パートを中心的にただ徐々に重たく、シリアスにしていきたいと思います。ここまでご覧にくださり、ありがとうございました!では、また次の機会に!

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