ep27
※
「あは、見た?平井源助のあの顔?」
「……ここからか。」
「ん?どうしたの?そんな真面目な顔して」
「なぜ僕があの二人に任せたのか。君にはわかるかい?」
「若芽は早めに潰しておくためでしょう?他になにかある?」
「それもあるさ。だけど、メインは見極めるためだ」
「見極める?」
「以前、吸血鬼を襲わせただろう?その時に、奴を囲っている女が死にかけた、いや死んだ」
「そんなこともあったわねぇ」
「その後、奴から嫌な"気"を感じたんだ」
「嫌な"気"?」
「そう、あれはまるで──」
※
「柚井…? 梨佳…?」
問いかけるが返事はない。
「嘘…だ」
まただ。また救えなかった。誰も。誰もかも死なせてしまった。
「うあ、あ」
なぜ?そんなこと決まりきってる。僕が弱いから。弱いからだ。
「さぁて!ディーネ、後はメインディッシュだけだよ」
「わぁい!」
「うぅ………」
あぁ、力が!力が欲しい!皆を守れる力が!奴を倒す力が!何者にも負けぬ力が!
力 が !
《ならば、私に捧げなさい》
あぁ!何だって捧げてやる!身体でも!命でも!魂でも!
《あぁ、なんて甘美な言葉なのでしょう……。よろしい、されば授けましょう》
「兄さま、何か嫌だ」
急にディーネが顔を顰めだした。
「どうしたんだ? うっ……」
アポロも顔を歪める。
「これは……」
あぁ、力が、心地よい、な
「必ず、滅す。お前らは、極刑だ……」
※
「来た!」
「どういうことなのかしら」
「やはり読み通りだ!奴は、あのクソッタレの寵愛者だ!」
「まさか…!」
「あぁ!少なくとも新聖教会の女神に見初められている!」
「少なくとも。まだい他にもいるといいたいの……?」
「考えたくはないがね!」
「かなりマズイ状況じゃないの?」
「だからこそ、あの二人に行かせたんだって言ったろ。たとえ、平井源助が神の加護を受けていたとしても、二人が負けることはない!」
「………」
※
「お前は、何なんだ?」
「あぁ」
アポロが源助に問いかけるが答えにもならない返答をする。
「兄さま!」
ディーネが叫ぶのが早いか、アポロの身体は両断されていた。
「あれ?」
「楽に逝けると思うなよ」
瞬の間もなく、源助の一撃が振り下ろされる。
《空怨》
アポロが手を払うと攻撃のダメージが源助へと反転する。
「ぐっ…!」
「それで僕らを殺れるとでも?」
《砕霞》
ディーネが手をうち鳴らすと源助を中心に大爆発が起こった。
「花火か?」
しかし、源助はそれをたやすく振り払う。
「むぅ!」
《壊界》
馬鹿にされたと憤慨したディーネは先ほど2人を肉塊にした技を放つ。
「喝ッッッ!」
だが、源助は気合いのみでそれを弾き飛ばした。
「ひゃあ!」
その余波でディーネは思わず声を上げる。
「こんな子ども騙しで、2人は、皆は死んだのか」
「そりゃあ僕らはまだ子どもだしね。その子ども騙しで死ぬ脆い君たち人間が悪い」
「お前らは人の命をなんだと思っているんだ?」
「そんなこと、聞くまでもないだろ?なぁ?ディーネ」
「うぅ……ぐすっ……」
「ディーネ?」
ディーネは顔をぐちゃぐちゃにしながら涙を流していた。
「ディーネ!……平井源助!お前、ディーネを泣かせたな!」
「なんだ、人並みに愛する気持ちはあるんだね」
源助はハハッと呆れるように笑う。
「ディーネを泣かせるなんて許さないぞ!ディーネ、《習合》だ」
「うん…!」
アポロとディーネが手を繋ぐと二人の身体が融けて合わさっていく。
「ならばなぜ、少しでも他人にそれを与えられないんだ」
《神天身・アリア》
源助の髪が伸び、色も透き通るような金へと。また、瞳は全てを照らす光となり、また悪しきを滅す炎ともなる。かのものが放つ光は救世への導きに他ならない……。
「さぁ、審判の刻は来たれり」
「「そっちも変身かい?かい?あの女の力で?で?」」
融合したエーテル兄妹の声はエコーがかかったように響く。
「次の世は、優しく仲のよい人の兄妹に生まれ変わりたまへ……」
手を合わせ祈るその姿はまるで我が子を想う慈母であった。
「我、汝らのその穢れたる魂を救わん」