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ep26

今回のお話は特に残酷な表現、描写が濃いと思われます。苦手な方はご注意ください。

          ※


「9人だ!平井源助は二人で楽しむとしてその半分は?」


「4人!」


「いい子だ!」


そう言ってディーネの兄、アポロは彼女の頭を撫でる。


「やっていい?」


「まだだ。ルー兄が少し楽しませろって言ってたろ?」


「ブー」


アポロが窘めるとディーネは不機嫌そうに頬をふくらませた。


「さあ、出てきなさい。妖魔ども!」


柚井の声が辺りに響く。


「行くよ、ディーネ!」

「きゃは!」


柚井の声に呼応するように二人は彼女たちの前に躍り出た。


「え」


誰かがすっとんきょうな声をあげた。しかし、アポロはそれに構わず喋り出す。


「やあ!僕の名前はアポロ=エーテル。こっちは妹のディーネ。おめでとう!君たちには僕たちのオモチャになる権利を手にいれたよ。光栄に思っていいよ!」

「いいよ!」


「悪いけど、君たちのオモチャになるつもりはないよ。梨佳、柚井行くよ!他のみんなは後衛でできる限りのことを!」


源助は全体の士気を上げながら戦闘体勢に入る。梨佳も既に詠唱を開始している。他の者も各々身構える。しかし、


「柚井?どうした!?早く戦闘準備を」


「終わりだわ」


「え?」


「もし、こいつらが本当にエーテル兄妹なら私たちは全滅よ」


ハハ、と乾いた笑みをこぼす。柚井の目には既に諦めが見えていた。


「一体どうしたんだ!?二匹だとしても乙種なら─「()()()()()()()に今の私たちじゃどうひっくり返っても勝てない。できることは、そうね、逃げることぐらいかしら。それすらもできやしないだろうけどね」


()()()()()()()?」


その疑問も解けぬ内に、パンッ!という破裂音が耳に入った。その音源に目をやると、何かが飛んできた。源助は思わず、手で()()を防ぐ。生暖かい感触と共に何かが手に入ってきたので源助は反射的に()()を地面に叩きつけた。


()?」


それは何かの目玉であった。……誰の? もう一度音源に目をやるとそこには頭部を失い、首から血を噴水のように吹き出している人間がいた。


「トマトー♪」


ディーネは嬉しそうに手を叩く。


─うわあああああああああ─


その叫びは誰のものでもなく、誰のものでもあった。


友人の、仲間の頭部が破裂したのだ。それこそ、握りつぶされたトマトように。


「はじめぇぇぇ!!!!!」


藻舞津羽が叫ぶ。どうやら破裂したのは茂歩一のようだ。


「もう、ディーネはせっかちだなぁ」


「ほらー、兄さまー、トマトからの噴水!」


ディーネははしゃぎながら茂歩を指差す。


「うんうん。我が妹ながらなんて素晴らしいんだ」


この惨状にある者は叫び、ある者は泣き、ある者は意識を失った。もちろん、源助たちも例外でない。源助はこの一瞬でエーテル兄妹の実力を理解し、戦慄した。背中は冷や汗で雨に降られたようになっている。また、普段は泰然自若としている梨佳も表情を強張らせた。足も微かに震えている気がする。柚井にいたっては、先程から諦めの笑みを浮かべている。


()()()でもうまく行かなかったなぁ…」


「さぁて、次は僕の番だ」


アポロが無邪気な笑顔を浮かべながら手を擦る。


「確かこの国に()()()()()なんてものがあったな」


そう言うと、アポロはどこからか弓を取り出す。


「見てなよ、ディーネ」


アポロが弓の弦を弾くと、空から無数の光の矢が降り注いだ。


「まずい!魂魄─」


 いや、間に合わ─


  ─ズドドドドドドド!─


凄まじい轟音と共に砂埃が視界を遮る。


「な」


源助は理解した。今の攻撃、()()()()()()()()()()()。と


「さて、()()かな?」


アポロがそう呟くと、風が舞い、視界が晴れる。


「お、()()()()だぁ」


そこには、四人の死体が地面に串刺しされていた。



「───ッ」


もはや、声すらも上がらない。皆、理解したのだ。己に待つのは蹂躙と殺戮のみだと。一筋の希望すらない。頭に浮かぶのはこの世への未練か、人生の後悔か、愛するものへの別れか─


「うおおおおおお」


その中で一人、雄叫びを上げながら勇猛にもエーテル兄妹へと立ち向かう者がいた。


茂歩一(あいつ)への、せめてもの手向けだぁぁぁぁ!」


それは先程、親友を目の前で殺された藻舞津羽だった。"気"で携えた剣を握り、ディーネへと斬りかかる。


ディーネは藻舞へと手のひらを向けると、ゆっくりと、何かを握りつぶすように閉じた。


「ギュウウウ……」


「キュピ」


奇妙な音を出しながら藻舞の体が紙屑を丸めたような形になっていく。あらゆるところから体液を出しながら……


「兄さま、どうしよう()()


「捨てておけばいいさ。そんなゴミ。それにディーネ、早くしないと僕ひとりで平井源助を楽しむよ?」


「ダメー!」


ディーネは焦りながら、生き残っている者たちへと手を向ける。


「とっとと死んじゃえ」


無邪気な声であったがそれ以上に底知れぬ冷たさと(いつく)しさを含んでいた。


「あ」


その声は柚井のものであったか、それとも梨佳ものであったか。どちらにしろ今になっては分からない。





壊界(イニエグマ)






源助が振り替えるとそこには肉塊だけが残っていた。

















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