ep24
1ヶ月一話投稿、何とか間に合いました!
今月はこれで許してください!
前回のあらすじ
地獄の班分け
※
「さぁ、もうすぐ、戦闘ですわよ」
源助たちのグループは柚井のナビゲートのおかげか、二時間に及ぶ探索内で一度も妖魔たちに遭遇することはなかった。
しかし、その安息の時も終わりだと柚井は告げた。
「敵の戦力はどのくらいか分かる?」
源助は間髪入れずに柚井に質問する。
「乙種が一体、丙種が二体だけですわ」
「…ゴクリ」
それを聞いて後ろの誰かが生唾を飲み込んだ。その音はその場にいる全員に聞こえるほど大きく深いものだった。
「心配いらないよ。その程度なら僕ら三人でも余裕だ。皆は自分の身を守ることを優先して」
「ほんとに大丈夫かよ…」
「あぁ、任せてくれ茂歩くん」
そう笑いかける源助の顔には万人を納得させるほどの輝きと力強さがあった。
※
「うぁぅぅぅ…死にたぐな゛い゛よ゛ぉ゛」
「そんな泣き言いうな、俺が治してやってるだろ。死にはしねぇよ」
脇腹を抑えながら泣く男子生徒をなだめつつ、沢井は治療術を展開していた。その生徒は確かに傷を負っていたが、致命傷ではない。本来なら、術を施すべきではないが、治さねば彼の放つ泣き言によって全体の士気が下がる。
「ちっ…」
その様子を見て菫は舌打ちをした。
「おい、今てめぇなんで舌打ちした?」
「別に」
「いいか、この子達はまだ本格的な前線に立ったことが無いんだぞ?」
「それで?そんな些細な理由であなたの貴重な力を気安く使ってもいいと?」
「いい加減にしろ!てめぇ子供たちのことを─「止めてください!」
二人の言い争いに一人の女子生徒が割って入る。
「今は私たちで争っている場合ではないはずです。今すべきことを、考えてください!」
「…そうだな。君の言う通りだ。悪かった」
「………」
「泣けるなぁ…!こういうのなんていうんだっけ?青春?違うかぁ?ギャハハハ!」
「!」
突如、沢井たちの目の前に獣人の男が下品な笑い声を挙げながら現れた。
「『招来の儀・焰』」
菫はすかさず"気"を練ってその者がいる方へ術を放つ。
「おいおい、お熱い歓迎だなぁ!」
しかし、男は動じず、笑いながら炎を掻き分けて、彼らの方へ向かって歩く。
「えぇ、でも残念。もうお開きでございます」
まるで残念ではなさそうな態度で、菫は次の印を組んだ。
「『劫火爆燼』」
「馬鹿ッ!なんて技ッ」
沢井が叫び終わるか否かの間で、視界は黄色い光に包まれた。次の瞬間、鼓膜が破れてしまうかと思うほどの爆音が響く。
「これで後ろの雑魚たちも片付いたでしょう」
菫は眉ひとつ動かさずにそう言い放った。
「てめぇ、俺たちまで殺す気かよ…!」
「あら、私は貴方が結界を張ってくれるであろうと信頼してあの術を放ったのでしてよ」
「ほぉ、口が回るようになってきたな。化け物共で憂さ晴らししてご機嫌もよろしくなってきたか」
「さぁ、どうかしらね」
学生たちの視界が晴れた頃には、既に獣人の姿はなく、辺りには点々と灰が積もっており、小さな炎が揺らいでいた。
※
「来るよ、先生」
桃崋はいつものように飄々とした態度で告げる。
「えぇ、大丈夫よ。私に任せなさい」
そう言うと、静枝は後ろにいる生徒たちに微笑みかけた。その笑みのことを後に生徒たち皆口を揃えて聖母のようだったと評した。
「天野さん、援護は頼んだわ」
「まっかせて!」
桃崋がドン と胸を叩くと同時に目の前に3つの影が躍り出た。
「へぇ、ここは当たりだな。女ばっかりだ」
「俺はアイツにするぜ。小さくて柔らかそうだ」
「じゃあ、俺はアイツだな。キュッと引き締まってて旨そうだ」
その正体は三人の男。目は鋭く、奇妙な着物を着て、高下駄を履いていた。
「天狗、ね」
静枝は冷静に男たちを分析している。
「お、おねーさん、俺たちのこと知ってんのかい?」
「そうとも俺らは天狗だ」
「そして、日本最強の天狗、日輪の三黒点とは俺たちのことよ」
「大層な名前だねー」
桃崋が呆れたように言い放つ。
「ほぉ、俺たちを前にしてよくそんな態度が取れるな」
「兄さん。アイツは俺がやるよ。最初に目ぇつけてたしな」
「『芭』兄、そいつは見せしめにしようぜ。存分に辱めてから食うんだ」
「分かってるぜ、『莎』。楽しんでから殺るに決まってんだろ」
「下劣ね…。うちの生徒に対してそんな感情を向けて欲しくないわ」
「まあまあ、おねーさんも後で遊んであげるから待ってなよ」
「遊んであげる?」
桃崋がその言葉に反応を示す。耳がピクピクと動き、口角が上がる。
「遊んであげるのは私たちの方だよ」
「『童神の遊戯箱』」
桃崋がパンと手を鳴らすと四方に可愛らしい結界陣が展開される。
「私と先生がいる場所と他の皆の場所に間があるから皆は安全な方に分けちゃうね」
桃崋は他の生徒の前にもう1枚、結界を展開した。
「なんだここは?」
「こんなことで俺たちを……」
ヘラヘラと笑っていた芭と呼ばれた天狗から笑顔が消えた。
「力が出ない…」
次に口を開いたのは莎と呼ばれた天狗であった。
「ふーん。これが日本最強の天狗かぁ。天狗ってかなりの大妖怪だって習ったんだけど口ほどにもないんだなぁ」
桃崋はつまらなさそうに吐き捨てた。
「な、何をしたァ!?」
芭は理解のできぬ状況に思わず叫んだ。…が、その前に視界が反転して、声を出すことが出来なかった。
それは他の二匹の天狗も同じである。その場にゴロゴロと三つの首が転がった。
「まるで隙だらけ。殺ってくださいと言わんばかり。これじゃ学生の頃の試験とあまり相違ないわね」
いつの間にか静枝の手には霊気で造られた鞭が握られていた。
「先生なにそれー?鞭ー?」
「そうね。鞭であるけど、剣のように斬れるし、槍のように突けるわ」
「へぇー!便利だねー」
後に彼女らと同じグループであった男子生徒は語る。「あまりにも圧倒的だった…!」と。
8/31でのギリギリの投稿。
何とか絶えることなく作品を供給していきたいとはおもってるのですが現実は…。
それでも最低1ヶ月一話投稿。
頑張っていきたいと思います!
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