ep16
前回のあらすじ
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※
そろそろ上着も分厚くなってくる季節。
夜が長くなってくるこの時季は一般的に妖怪が活発化してくると言われる。
「うぅー、寒くなってきたねぇ。おしるこ、飲みたいなぁ」
「そんな目配せしても、奢らんぞ」
「ケチ!」
その日、虎太郎と孝雄は街に出ていた。
「とりあえず日帰りできそうなやつ選ぶぞ」
「ういうぃー」
二人が向かっていた場所は総合人外組合所と呼ばれる施設。
人外による被害や依頼は、今日、溢れまくっている。その全てを政府や公認組織だけでは扱いきれない。
なので依頼の中でもより程度や脅威が低いものがこの総合人外組合所、いわゆる日雇いバイトの案内所、異世界的に言えばギルドのような場所に回されてくる。
「うわぁ。今日も混んでるねぇ」
「そりゃそうだ。中には一般人でも処理できるものもあんだからな」
中は人がごった返し、受付には既に列ができていた。中には学生の姿も見られた。
「普通のバイトより給与良いからねー。ついつい暇だときちゃうよねー」
「だよねー。依頼も簡単だし、こんなの知ったら普通にバイトすんのばからしーよね」
などという会話が聞こえる。
「おっ、こたっちゃん、これとこれとこれ。いいんじゃない?」
虎太郎が依頼書を物色していると孝雄が肩を叩き、それぞれに指を指した。
「なになに、妖怪による畑荒らし、ペット(妖犬)の捜索、除霊、か。まぁ、悪くはない」
「占めて十万、日給にしては悪くないだろぉ?」
「あぁ、山分けでそれぞれ五万か、よし。今日はこれだ」
用紙を記入し、列に並ぶ。
その列もすぐに進み、虎太郎たちの番になった。
「次の方どうぞ~」
「お願いします」
「三枚、ですか?確認致します」
職員は用紙を三枚出されたことに少々困惑し、それらを確認する。
「こちらの二件は期限が手続き日となっておりますがよろしいでしょうか?」
どうやら除霊と畑荒らしの方は手続きした日に解決しないと報酬が払われないらしい。
「構いません。それでお願いします」
「かしこまりました。第3受付にて手続きを完了してください」
「わかりました」
虎太郎と孝雄は第3受付へ向かう。
「それでは、この器具を握り、力を込めてください」
二人は器具を握り、力を送る。
「登録が完了しました。それでは、いってらっしゃい♪」
何とも陽気な挨拶をもらい、虎太郎は会釈、孝雄は「いってきまーす!」と返した。
「まずは、畑から行こっかぁー」
「は?分担しよーぜ。畑はお前が行って、俺が除霊行って、終わり次第ペット捜索。これが効率いいだろ」
「そんなぁー!おら、こたっちゃんと一緒じゃなきゃやだぁ!」
虎太郎が別行動を提案すると孝雄は虎太郎にすがりつきながら泣きわめいた。
「だぁー!うるせぇ!うぜぇ!分かったから!一緒に行くから!」
「最初からそれを言えばよいのだ」
ケロッ と孝雄は泣き止んだ。
「まじで一回殺してやろうかお前」
※
「おめぇたちが今回助けてくれんのか?よく来たよく来た。さぁまずはお茶でも一杯」
畑の依頼人は町はずれの老夫婦。
近くに森があり、どうやらそこの妖獣が畑を荒らしてくるらしい。
「じいちゃん、悪いけどゆっくりしてる暇無いんだ。ちゃちゃと畑見せてくれるか?」
「おお、早速やってくれるか。若いもんにしては感心だぁ。さ、こっちだ」
虎太郎たちは現場に案内される。
「うわぁ。こりゃひどい」
そこにはまるで大きなスプーンで何度もひっくり返されたような畑が広がっていた。
「市販の妖獣避けも効かなんだ。もう、おらたちにもどうしようもねぇからってお役人さんに頼んでも取り合ってもらわんかったし、有名なとこじゃ大金がかかる。それで藁にもすがる気持ちであの組合所に持ち込んだんさ」
「依頼内容は自分達は通れる強力な妖獣避けの結界の展開でしたね?」
「そうだ。できるか?」
「ええ、少し協力してもらえば五分も掛かりませんよ」
「ほんとか!なにすりゃええ?」
「農作業をするのは貴方だけですか?それとも奥さんも?」
「あぁ、大体は二人でやるん。たまに息子たちに手伝ってもらうんけんど」
「わかりました。奥さんにも手伝ってもらいます」
「わかった。おい!お前も手伝わな駄目やと!」
老爺は奥さんのおばあさんに呼び掛ける。
「えぇ!?私そんな難しいこと…」
「やることは簡単よ。ただこの僕と手を繋いで少し力を送るだけでいいよん」
孝雄が説明する。
「力を送るって?」
「簡単に説明しますと、今回の結界は妖獣避けだけでなく、管理者が容認した者以外を弾くものを作ります。その際、管理者として登録するために少し貴方がたの"気"を使います」
虎太郎が詳しく説明する。
「そんなことできるんか!?」
「はい。力を送るというのは手を繋いでもらって数秒間目を閉じて手と眉間に力を入れてもらうだけでいいです。それだけでも少し"気"が放出されますから」
「依頼料は…?」
奥さんが不安そうに尋ねる。
「もちろん据え置きです」
「ほんと、兄ちゃんたちはええ人だぁ!」
「じゃ、早速やりましょか」
孝雄が手をさしだす。
「おう!頑張ってくれぇ!」
爺さんはその手を力強く握る。
「ほら!お前もはよ出さんか!」
奥さんにも囃し立てる。
「じいちゃん焦らない焦らない」
それぞれが手を握り、準備が完了する。並びは老夫婦が虎太郎と繋ぎ、孝雄は虎太郎の肩に手を当てている形だ。
「それでは、僕がいいと言うまで手を離さないでください」
「わかった」
「始めます」
虎太郎がそう言うと夫婦は力を入れる。
そして、次の瞬間、畑全体を囲うような結界が構築され始める。
常人の目には見えない極め細やかな結界であった。
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「終わりました。もういいですよ」
数分後、結界の展開は終了した。
「これ、ほんとに大丈夫なんか?」
どうやら、結界が目に見えずこの老爺は不安らしい。
「では耐久テストしましょう。孝雄」
「ほいほーい」
孝雄は畑を出て、"気"を溜め始める。
「はぁ!」
そして手を天にかざし、大きな気弾を作った。
「お、おおっ!」
その大きさに思わず夫婦は驚いた。
「だ、だ大丈夫なんか?!」
「見ててください」
孝雄はその気弾を思い切り、畑に向かって投げつけた。
「ぎゃっ!」
思わず夫婦は顔を手で覆う。
「ん?」
数秒ほど硬直していたが、身に何ともないことに気づき、辺りを見渡す。
「おお!何ともない!傷一つついとらん!」
「ご理解いただけましたか?畑自体の修復はできませんが結界の強度は保証します」
「ええ!ええ!ほんと、ありがとさん!」
先程と打ってかわって老爺は喜びに満ち溢れた。
孝雄が撃った気弾は見た目ほどの威力はなかったがそれでもここら一帯の人外はこの結界を破ることはできないほどの強度だ。
「それでは依頼完了ということで帰ります。お疲れ様でした」
「兄ちゃんたち!これ!」
老爺は帰りがけの二人に袋を差し出す。
「いえ、追加報酬は…」
「いいから!ほんとはお金やりたいけんど…せめて!これだけは貰ってくんれ!」
「それじゃ、ありがたくもらっちゃいます」
孝雄はその袋を受けとる。
「おお!それじゃ、そっちの兄ちゃんも」
老爺は強引に袋を虎太郎に押し付ける。
「これは…」
「うちで取れた野菜だ!うんめぇぞ!」
「…ありがとうございます」
虎太郎は思わず笑みがこぼれた。
人の暖かみ、それは何人をも笑顔にさせる。
「さようなら。お体気をつけてこれからも元気に頑張ってください」
「おうよ!兄ちゃんたちも元気でやるんやど!」
孝雄は大きく、虎太郎は小さく手を振りながら、老夫婦の家を後にする。
まだ3つ有る内の一つの依頼が終わったに過ぎない。
次の依頼者の元へと二人は歩みを進めた。