ep11
まずは謝罪申し上げます。
私事により執筆、投稿が遅れました。
本当に申し訳ございませんでした。
夕闇に染まる理事長室。この中では藤原静枝、理事長の両者が先日の騒動の処理をしていた。
「こんなこと、我が校創設以来初めての失態だ。人外に襲撃されたあげく、死者まで出すとは…」
「理事長、もはやこれは一学校で処理できる問題ではありません。政府に協力を要請した方が良いかと」
「うむぅ、しかしだな」
「何を迷っているのです!いいですか!あなたの判断でこの状況が変わるのですよ」
「そうだな」
だめだ。この人には意思というものが欠如している。
完全に傀儡として椅子に座っている人間だ。
「では申請の方は私がしておきますから理事長は印だけ押してください」
「うむ…」
※
「すげぇなお前ら!あの吸血鬼を倒すなんてよ!」
「いえ、それほどでもないよ…」
「おいおい謙遜すんなよ。大したもんだぜ。もうそこらの任役より強いじゃないか?」
「皆さん、声が大きいですよ。少し静かに─」
大会後から3日間、騒動により一時休校となっていたが今日、登校許可が降りた。
そのなかで、平井たちは学園のヒーローとなっていた。
「すごい人だかりだね、こたっちゃん」
「あぁ」
虎太郎たちの活躍を知るものはただ1人、平井 源助のみ。
この騒ぎを見る限り、そのことは口外していないようだ。
「あれは完全に予定外だった。無駄な労力を費やした。その埋め合わせ、間に合うかどうか」
「まぁまぁ、そうやって気を張りすぎたらなんかの拍子にミスっちゃうよ。肩の力を抜いて、落ち着きなよ」
「そうだな。そうしないとな。落ち着かないと」
「やぁ、武立くん。おはよう」
コソコソと話している2人に、平井が挨拶をする。
「あぁ、おはよう」
「おはようさん」
「なに話してたんだい?」
「うーんとね。今日の昼なに食べようか、かな?」
「そうなんだ。あ、今日も一緒にお昼を取らないか?」
「いや、俺は遠慮しとくよ。お前らと一緒に食べたいやつ他にいるのに俺が一緒に食うのは申し訳ないんでね」
「僕は構わないけどなぁ」
「俺が嫌なんだ」
「そう、残念だ。じゃあまた今度一緒に食べよう」
「今度もなにも今後一切ねぇよ」
「冷たいなぁ。でも、僕は諦めないよ」
不敵な笑みを浮かべて、平井はいつもの面子のところへ帰っていった。
「相変わらず気味が悪いというか、背筋が生温かくなるというか」
「あーあ、こたっちゃん。今のでさらに孤立が深まっちゃたよ」
孝雄の言う通り、今のやりとりで虎太郎に対する周囲の目は厳しいものとなった。
「おい、あいつ平井君の誘い断ったぜ」
「まじ?ノリ悪!」
「ありえな~い。陰キャの癖に」
「あの人前から感じ悪いよね」
と非難が飛び交う。
だからといって虎太郎が動じることもなく、
「で?」
という感じだ。
「源助くん、なんでそこまで武立くんに構うの?」
「なに言ってんの、杏奈。そりゃげんげんが優しいからに決まってるでしょ」
「わたくしは賛同できませんわね。なんであんな奴に…」
「ふぁぁ。今日も休みがよかった」
さすがに今のは不自然だったかな。だけど、武立くん、いや、虎太郎くんの強さを目の当たりにしたら…。なんとしても、彼に近づきたい!
※
「飛び交うは二色の蝶。片や白、片や黒。螺旋を描き、やがて墜つ。墜ちるのは白か、黒か、それとも…」
「あはれなる童よ。自らの存在すら顧みないとは」
「その努力が無駄だと知らずにもがき続ける。これもまた人の美学というものか」
「あぁ素晴らしきかな人間よ!もっと我らに示しておくれ!おのがらの生き様を!」
※
「政府の要請で、あなたを鵬明の常駐講師として派遣するけど、問題ないわね?」
「はい。この菫、四条宮様の命に異論ありません」
「いいかしら。あなたの目的は教鞭をふるうのではなく、生徒たちの保護。また彼奴らが学園を襲う可能性は高い。あの時はまだ私たちがいたから大事にはならなかったけれど、もし再び同じようなことになればあの学園の職員だけでは対処に困るでしょう。その時はあなたが先頭に立ち、指揮を取りなさい」
「はい。では行って参ります」
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──────
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「そういう訳で私、この学園に派遣されましたので、よろしくお願いしますね」
「なるほど、こちらとしても闌様のお力を借りることができ、ありがたい限りです」
「しーずえさぁーん。お昼一緒に食べ─って、なんですーちゃんがこんなとこに居んだよ」
「あら、二人はお知り合いなのですか?」
「いえ、知りません。あんな小汚ない男」
「ふん。静枝さん、あの女をあまり信用してはいけませんよ。あぁ、見えて結構腹黒いですから」
「あら、少なくともあなたよりは信用に値する自負がありますのけれど。」
この二人のやりとりを見て、静枝はさらに胃が痛くなるなとどんよりした。
「さ、静枝さん。こんなやつほっといて僕とお昼食べましょ」
「藤原さん、こんな男いたらあなたまで汚れてしまうわ。私と食べましょう」
「えぇっと、せっかく誘っていただいて悪いのですが、私まだ業務が残っているので、ごめんなさい~!」
静枝は逃げ出した。
「あーあ、てめぇが圧かけて脅すから静枝さん怖がって逃げちゃったじゃんか」
「あら、あなたの悪臭に堪えられなくてお逃げになったのでは」
静枝がいなくなっても二人の嫌味が止むことはなかった。
「もう、これ以上厄介事を増やさないでよぉ」
連日の疲れからか少々幼児退行気味に呟きながら廊下を歩く静枝。
人の気配を感じ、パッ と顔を上げるとそこには食堂へ向かう虎太郎たちが立っていた。
「今の、聞いた?」
「何を?」
「僕ちんなにもわからなーい」
「ならいいわ」
先ほどの弱音を聞かれていないことを確認し、二人とすれ違おうとする。
しかし、聞いてしまった。聞こえてしまった。
すれ違い様に虎太郎が鼻で笑う音が。
「やっぱり、聞いてたんじゃない!」
「うおっ!なんですかいきなり大声出して」
「せんせ、びびるんでやめてくらさい」
「そうやって私のことバカにして!いっつも陰で笑ってるんでしょ!」
「えぇ…。とりあえず、落ち着いてくださいよ。ほら、周りに迷惑ですよ」
「迷惑ですって!皆散々私に迷惑かけて、私は迷惑かけちゃいけないの!?そんなの理不尽でしょ!そんなの…」
静枝はいつの間にか涙を流していた。
「うぅ…うぇぇぇぇぇん」
そして堪えきれず、大声で泣き出した。
「まじかよ…」
「どうする?放置する?」
「お前結構冷たいな」
「どおしてぇぇあたしばっかりぃぃぃ」
なんだなんだ と生徒たちが集まりだす。
「ほっといてもいいけど、またなんか問題になるとめんどいし、フォローしとくか」
「やさしいねぇ~。こたっちゃんは」
「ほら、先生。泣かないで。孝雄、お前も手伝え」
「はいはい。せんせ、これで涙拭いて。なにか奢りますよ。こたっちゃんが」
「おい。…まぁいいけど」
二人は先生を慰めながら、食堂へ向かう。
「おい、今の静枝ちゃんだよな」
「あぁ、泣いてたぜ。あの静枝先生が」
「許せねぇよ…あのガキども」
「ファンクラブの名において裁きを下す…!」
※
「ありがとう。ごめんなさいね。みっともないとこ、見せちゃった」
落ち着いたのか静枝は普段の性格へと戻りつつあった。
「構わないですよ。原因は多分僕らにもありますし」
「そーそー。せんせは気にせず、美味しいもん食べてくだせぇ」
三人が座っているのはVIP席。
機嫌を取るため、とこの席を選んだ。
「それは悪いわ。生徒にお金を出してもらうなんて」
「いえいえ。日頃から僕ら迷惑かけてますし、そのことも兼ねて」
「なら、秘密にしてること、先生に話して?」
やっぱ駄目か
そう。この媚売りによって例の話から矛先をずらしてもらおうとする算段だったが、現実は甘くなかった。
「…」
「どうしても、話したくないのね?」
「えぇ。どうしてもです。例え貴方がどんなに良い先生であっても、いえ、良い先生であるからこそ、話せません」
「そう……なら、先生はこれ以上詮索するのは止めるわ。でも、もし何かあったらいつでも先生に頼ってちょうだい」
「はい。ありがとうございます」
「ふふ、武立くんって意外と優しいのね。先生、ちょっと見直しちゃた」
「いや、先生が思ってるほど良いやつじゃありませんよ」
「そう自分を卑下しないで。あなたにも良いところはあるのよ」
そう言って、静枝は席を立つ。
「さて、可愛い生徒たちから元気をもらったし、午後からも頑張れるわ」
静枝は力こぶを作るような仕草をする。
「またいつか、先生に教えられるようになったら教えてね」
そう微笑みかけ、先生は食堂を後にした。
「なあ、こたっちゃん。さっきの態度なんだよ。気持ち悪すぎて鳥肌立ちまくりだぜ」
「ばっかだなぁ。いいか?あの手の輩にはこういう態度が一番効果的なのよ。それに、一般的に見てもあの先生は良い先生だと思うぜ。まぁ、俺に取っては面倒なだけだがな」
「それにしてもびびったねぇ。さっきのやつは」
「あぁ、有能でああいう性格だからこそ、溜まりに溜まったもんが発散する間も無く、爆発しちまうんだろうよ」
「やけにせんせの評価が高いねぇ」
「そうか?別に妥当だと思うけど」
いや、他人に関して無関心か嫌悪しかしないこたっちゃんがこんなに評価するなんてありえない。
おそらく、あのときの龍美さんと重ね比べてる。
せんせは確かにしつこいほどこたっちゃんや俺のことを探ろうとしていた。
きっとそれがこたっちゃんの琴線に触れたんだ。
あのひとが母親だったら、と、きっと無意識の内に思っているんだろう。
あのとき負った傷は、こたっちゃんを今も蝕んでる。
「おい、孝雄!」
「あっ、なになに?」
「はぁ~。だから、このままここで食うかって聞いてんだろ?」
「あ、あぁ。でも僕ちん、お金持ってないし」
「約束」
「あっ!そういえば奢る約束してたね!」
「ったく、ここで食うか」
「わーい!ありがとーこたっちゃんすきぃ♥️」
「気色悪い声だすな!しばくぞ」
黙っていれば都合のいいことをこたっちゃんはわざわざ言った。
それは約束だから。
こたっちゃんは約束に対して、異常なほど執着を持つ。
それは、あの娘との…
「さっさと決めろよ。昼休み終わるぞ」
「へいへーい!」
こたっちゃんが何をしようとしているのか。
それを俺は知っている。
その計画が上手くいくように
こたっちゃんが少しでも安らげるように
俺はやるべきことをやる
これからはとりあえず、最低でも月に一話、上げていきたいと思います。




