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第六話 継承

 「はぁ、もう何も言われても突っ込まないわ」


 ナミが弥生に対して言った。当然、皮肉なのだが、弥生は気付かないふりをして、聖也を向く。


 「聖也は何の『権能』を持ったの?」

 「俺?」


 聖也は思わず聞き返す。弥生のように、一段と桁違いの力は持っていなかったからだ。だが、ここは答えておくべきだろうと思い、自分の持つ二つの能力名を言った。


 「『継承権能』と『召喚権能』だよ」

 「『継承権能』か……都合がいいね。私の『権能』とか分けてあげるよ!」


 そう言った瞬間、辺りにブワッと風が吹く。紛れもない絶大な力の奔流だ。


 嵐のような力の胎動に思わず、聖也は目を瞑る。


 「『召喚権能』の使い方がわかったってことは、そこのお爺さんか、女の子に聞いたの?」


 絶大な力の中、力を放出している当の本人は呑気な顔をして、語りかけてくる。


 「わ、しが教えた」


 アギ爺が声を絞りだすようにして言った。まだまだ風は舞う狂う。


 「そう♪ じゃあ、権能の能力とかも教えた?」

 「『召喚権能』は有名じゃ! 貴様が数千、数万の軍勢を召喚したことでな」

 「数千、数万の軍勢? そんなに召喚したっけ」


 弥生は考えこんだが、歴史が湾曲して伝わっているのか、と思い、流した。


 「じゃあ、私が教えてあげる! 『継承権能』は相手から許可が下りた時、相手の能力を継承……つまり貰いうけることができるの」


 おぉ、すごいチートじゃないか、と聖也は思う。


 「ちなみに私は実際、『強制権能』っていう相手に動きを強制させる力を使って、相手の力を奪い取ってたんだけどね!」

 「……」「……」「……」


 三人は平然と放った弥生の言葉に思わず、黙りこくってしまう。あまりにズルすぎたからだ。


 「まさに外道ね」


 ナミが毒を吐く。


 「じゃあ、儂の力をとったのもそれか?」

 「そうだよー……ちなみに倒れこんだのは、『平等権』っていう能力ね。私の状態を相手に押し付けることができるの。身体が傷ついてるところもあったから、そういうダメージ諸々を全部、押し付けたの」


 もはや、どこが『平等』なのか……と三人は思った。


 「まぁ、いいや! 能力の譲渡だったね。基本的なやつでいいよね?」


 確認をとろうとする弥生に頷く。


 「あぁ」

 「じゃあ、聖也は私の後に続いて言って」

 「わかった」


 弥生は大きく息を吸った。


 「力の継承を願う」

 「『力の継承を願う』」


 聖也の言葉は威厳溢れる声となって響く。それはまるで儀式の詠唱のようだった。続けて、弥生が唱える。


 「我、力を願う者也けり、炎、氷、雷、幻の力を求む」

 「『我、力を願う者也けり、炎、氷、雷、幻の力を求む』」


 弥生の周りには、三色の球と一つの無色の球が浮かんだ。それはゆったり動き出し、聖也の周りに纏わりつくようにして、回り始めた。


 その様は幻想的だった。辺りは薄暗くなり、仄かに光る球は、蛍のように辺りを柔らかに照らしていた。


 「継承」

 「『継承』」


 最後の一言により、周囲の球は聖也の身体に吸い込まれるように消えた。


 「はいっ! これで完了!」


 絶大な力の奔流が、まるで嘘のように消え去った。


 「もう何も言わない……もう何も言わない……」


 ナミがなにやら、ブツブツと呟いている。


 「これで四つの『権能』をプレゼントしたよ! やっぱり、聖也も多少・・強くないといけないからね」

 「……多少・・?」

 「うん」


 ナミの小さな突っ込みも滑らかに受け流して、弥生は聖也の手を握った。


 柔らかなその肌の感触に、心臓が跳ねた。


 「『火炎権能』『氷晶権能』『雷轟権能』『幻想権能』が聖也が継承した力ね。オーソドックスなやつが多いけど、まぁ普通のだからこそ、使いやすいと思うよ」


 弥生がそう説明してくれる。


 そうして、そのまま手を握ったまま、聖也の手を動かし、まるで照準を定めるようにして、手を向けさせる。


 そして、弥生は手を離し言った。


 「じゃあ、使ってみて!」


 (この狭い中で!?)


 「いや、流石にこの部屋で『権能』なんて使ったら、家が吹っ飛ぶ!」


 アギ爺が聖也の心の声を代弁するように全力で突っ込んだ。至極当然の答えだ。文字通り、家ごと……正確には巨岩の一部が吹っ飛ぶだろう。


 「じゃあ、そう……外にまた出る?」

 「実験ならそっちの方が数倍マシだね!」


 聖也も大きめの声で言った。


 聖也が心の中で突っ込むと、ナミが身を乗り出した。


 「なら、私と対決して、試してみるのはどう?」


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