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第五話 説明

 赤い荒野の遥か彼方の地平線から太陽が上がった頃、聖也たちは巨岩の中で、椅子に座っていた。


 テーブルを挟んで反対側に、相対するように座ったアギ爺とナミ。聖也の隣には服を着て、より一層可愛くなった弥生が座っている。


 部屋の中は静寂が支配していた。


 衝撃的な告白の後、聖也たちは部屋に通された。


 (だけど、なんで誰も喋らないんだよッ!)


 聖也はもういっそ、この重圧から逃げしたいぐらいである。ナミとアギ爺は無駄に警戒し、それに応ずるように弥生も凄まじい重圧を立てている。


 まるで空気が本来以上の質量を持っているようだ。


 「……それで」


 ナミが静寂を打ち破るように声をあげた。一斉に視線がナミに向かう。


 「あなたたちが異世界から来たっていうのは本当なの?」


 最もな疑問を吐きだしたナミに対して、聖也は答える。


 「あ、あぁ。正直、まだ信じられないけど」

 「それで、そっちの子は? えと、弥生ちゃんだっけ? さっき、自分のことを『王』って言ってたよね? あれはどういうこと?」


 確かにそうだろう、と聖也は思う。


 何故か。


 アギ爺の話にもあった通り、『王』とはおおよそ千年前に、実在した伝説の存在であるからだ。


 (地球で例えたら、「自分はキリストです」ってほざいてる馬鹿だよなぁ)


 聖也はそう思いながら、弥生を見た。


 「私は実際に『王』だった。そうあの時、『神帝』に殺されかけて、封印されたの」


 弥生は懐かしむように言った。


 ナミはそんな弥生を見て、否定の言葉を繰り出す。


 「でも、殺されたって伝わっているわ! どうせハッタリでしょ」

 「でも、彼女は『王権』を持っている……これは単純にハッタリとは決めきれんぞ」


 吐き捨てるように否定したナミにアギ爺は言った。


 「うーん。そうだねー。確かに証拠がないと何も言えないね」


 妙に間延びした声で弥生は応じる。


 「まぁ、強いて言うなら、世界樹の王である『精霊王』の杖でも持っていたら、信じる?」

 「『精霊王の杖』? そんなものあったっけ?」


 ナミが疑問を口に出す。アギ爺の目にも困惑の表情が浮かんでいる。どうやら、二人とも知らないようだ。


 聖也は弥生の方を見た。意外にも冷静なようだ、と思ったが、次の瞬間に驚嘆に目を剥いた。


 ――空間に暗黒の穴が空いていた。


 「なッ!?」

 「魔法ッ!?」


 弥生がその穴に躊躇なく、手を突っ込んだ。


 「これが、それ」


 彼女は暗黒から手を引いた。彼女が引くと同時に穴はスゥゥゥと虚空に消えた。


 弥生の手に握られていたのは、一本の立派な杖だった。白めな木材に、七つの宝玉が嵌っている。いや、埋め込められている。


 強大なパワーに見せつけるようして、黄緑色のオーラのようなものを不可思議にを放出している杖は、まるで生き物だ。


 (す、げぇ)


 聖也は思わず感動した。まるで生命が胎動するかのように、オーラは胎動している。ドクンッドクンッと心臓が早鐘を打つ。胸が苦しくなる。聖也は思わず、胸を抑える。


 視界の端に写った二人を見た。二人も同じようにしている。


 「あっ! ちょ、オーラ切ってなかった。ごめん」


 胎動する波動が消えた。


 「今のは『精霊の胎動』って言って、周囲の精霊を狂わせるの。狂わせるというか、まぁ、うん。狂わせるの」

 「それが、杖?」


 ナミが未だ心臓を抑えながら、声を上げた。


 聖也も質問の答えを聞くために心臓を落ちつかせる。


 「そう。『精霊王の杖』。『精霊王』のみ触ることを許された『精霊樹』の中でも最古と言われている『世界樹』の枝で作られた逸品よ」


 そう言って自慢するように杖を回した。


 ブンブンッと振りまわせる度に、風切り音が響く。


 「ふぅ。さっきのも魔法だろうけど、もう突っ込まないわ。確かに異次元の存在だわ」


 ナミが言った。


 「うーん? でもちょっとこの時代の方が文明力が退化しているような感じがする。私がいたころは誰でもこのレベルの魔法なら使えたし」


 弥生が言ったことにより、二人はまたまた目を剥く。


 「はぁ!? 世界屈指の魔術師と同じようなことが誰でもできる!?」

 「歴史書はまちがっていたということか」


 二人はそう言って、驚いたが、話を続けようとした。


 まだまだ、話は続く。



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