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第二話 権能

 「では、少し昔話をしよう。千年以上も前の文献に残っている範囲の話だがな……」


 そう言って、アギ爺は少し話を始めた。


 古き時代、およそ千年前だろうか。


 一人の人間が現れた。

 その人間の片方の眼は夜空のような漆黒で、もう片方は空のような透き通るような青色だった。『異色眼』という言葉の由来はここだ。『権能』を持つ者は、『眼』の色が変わると言われている。


 人間は幾つもの『権能』という特殊な能力を持ち、世界征服に乗り出した。その時代、『権能』は未知の概念で、その人間しか所有していなかった。


 十の天才、万の軍勢、億の魔物。幾つもの戦いがその人間を殺そうとしたが、一つとしてその人間が傷つくことはなかった。そして、その強大な力によって、世界は簡単に支配されてしまった。


 その期間、僅か三年。そんな微かな時間で、世界は未知の存在に支配されてしまった。


 何時しか、その人間に二つ名がついていた。曰く、『名無しの神』――『王』と……。『王』は大陸全土を掌握した後、別の大陸や空中都市など、様々な場所を支配した。全世界を支配するのに、かかったのは、『王』が現れてから、たったの五年。五年程度で、世界は一人の人間に掌握されることになったのである。


 ここからが『絶対王政』の時代である。


 地の果てから空の果てまで、完全に統治した『王』は満足しなかった。


 五年の間、完全で完璧な統治により、『王』は崇拝され、神のように崇められた。だが、それでも……満足することはなかった。


 なんと、神々の世界に支配をふっかけたのだ。いや、支配といういい方は剣呑だろうか。『王』は喧嘩しようとしたのだ。それまで静観していた神々も、流石に不味いと思ったらしい。『王』は神如き力を持っていた、実質的な現人神のような存在だったのだ。


 神々は悩んだらしい。ある巫女が受けた神託によると、『王』を殺すことになるかもしれない……どうすればいい、という人間のような悩みを吐露していたらしい。だが、『王』を消滅させた。


 『王』が消えたことにより、世界中に『王』が持っていた『権能』が散らばった。中でも強力な『平等権』『自由権』『社会権』の三つは『王権《レガシー》』と呼ばれ、中々、人に宿ることは無かった。というか、『王権《レガシー》』が宿ることはなかった。一回もだ。

 そのことから、中には『王』はまだ生きていると主張する人もいる。


 兎も角、人に宿ることもあれば、物に宿ることもあった『権能』。一人に力が集中しなくなったせいで、世界に平和が訪れた。

 なぜか、性質的に二つ以上が一つの物に宿ることが少ないのだ。


 「……そんな訳で、『権能』を二つ持つ者は珍しい。というか複数の『権能』が一人の人物に宿ること自体、滅多に聞かないぞ。いや、二人いるのか」


 アギ爺はそう言って、目を瞑り、記憶を照らし合わせるようにして考えこんだ。


 「勿論、一人目は『王』。幾つもの『権能』を持った異常の存在。『王』を崇拝する宗教も存在するぐらいだ」


 先ほどの話の主人公。聖也は畏敬の念を持ちながら、話の続きを聞いた。


 「二人目は……『魔皇』。強力な吸血鬼《ヴァンパイア》だ。彼女も強力な『権能』を持っていた。確か、坊主と一緒で二つだった気がするのぉ」


 思い出話というよりかは、畏怖が混じったようなアギ爺は語った。


 (『魔皇』という名前からして強そうだな……その数倍強いのが『王』と考えればいいのか)


 聖也はそう思いつつ、疑問を投げかける。


 「『王』は幾つの『権能』を持っていたんだ? 結局、強いというのはわかったが……」


 アギ爺は唸り声を上げる。


 「そこはきちんと明確なことがわかっていない。『解析板』が開発されたのが、そもそも十年ほど前だし、『権能』についてわかってきたのも、ここ数十年だ。それまでは『技能』と同一視されていた節もあるからのぉ」

 「『技能』?」


 聖也は新しくできたわからない言葉を反復する。


 「あぁ。『技能』ね。私も持ってるわ。希少性で多少ランク付けされているの。便利なものもあるし、戦闘用のもあるわ」


 その後、ナミが地面に表を書いて教えてくれた。


 『Ⅰ』は生活などで軽く使える程度で、とても小規模。『技能』を持っていない普通の人間でも、実行できる。ちょっと便利という程度。

 『Ⅱ』は魔法とかでギリギリ再現できる程度。

 『Ⅲ』は完全に『技能』でしか行えない。

 『Ⅳ』は『技能』の中でも超上位の能力。ここら辺の能力を持っている人物は、有名人になれる。剣に関する『技能』なら『剣聖』と呼ばれる人物が、このランクの『技能』を持っているらしい。

 『Ⅴ』は『技能』の中で最上位。世界の中でも両手で数えるほどしかない、本当に特別な能力。


 『権能』は更に上位の能力だ。

 最低でも『Ⅳ』より強く、普通のものなら、『Ⅴ』よりよほど強い。多くのものは事象を操るものだ。アギ爺の持つ『幻想権能』はこれに入り、幻という事象を操る『権能』らしい。『火炎権能』なら、炎という事象を操る。それにより、下位の能力である炎に関する『魔法』も使える。


 『王権《レガシー》』はそれよりも上位の能力。

 『技能』や『権能』とは比べ物にならないほど強く、持っているだけで大国でも破滅させることが可能だとさえ言われているらしい。


 そんな話を聞きながら、聖也は若干、ドン引きしていた。


 (もう、その『王』ってやつ、おかしいよ。色んな意味で……)


 全ての『王権』と『権能』を所持していた『王』。確かに世界を掌握するのに相応しい人物と言えるだろう。学術的な文献にはそう書かれているらしい。


 「さて……」と一息おいて、アギ爺は言った。


 「では、坊主の『権能』を使ってみるか。ふむ。坊主は確か、『召喚権能』と『継承権能』か。『継承権能』は伝承にも聞いたことがないから、まずは聞いたことのある『召喚権能』からじゃの」


 アギ爺がそう言うと、ナミも賛同した。


 「そうだね。『王』は『召喚権能』で万を超える強力な精霊や悪魔や天使などの高い存在を呼んだらしいからね! ちょっと楽しみ」


 楽しそうな声を聞いて期待されていると知った聖也は胃が痛むのを感じた。


 (万を超える!? 何だ、その出鱈目! チートにも程があるだろっ! あっ、今持ってるの俺だったわ)


 「なら、ちょっと開けた場所がいいですかね? ここだと狭すぎる気が」


 聖也の言うとおり、ここは狭い。巨大な岩の中にあるのだから、もしかしたら奥の奥に続いているのかもしれないが、今、彼らが居る場所は家具なども多少置かれていて、狭さに磨きがかかっている。


 「心配ない。どうせ、『王』の劣化版にすぎん。『強化権能』で自身の力を増幅させておったからな」


 (もうチート過ぎて、草も生えない……)


 「まぁ、確かにここだと、大きな生物が出た時に危険かもしれないね。一応外に出よっか!」


 ナミが明るく言って、聖也たち三人は外に出ることにした。

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