8.仮の体と名前
2000文字達成!!
村に着いた。
「おい、通行許可証を出せ。それか、冒険者のカードでも良いぞ。」
おおっと。やっぱ必要か…しかし、もうこうなることは想定していた。
「すみません。どちらも持っていないんですよ。だから、冒険者カードをこの村で発行したいと思います。」
流石、ムイ。俺が事前に用意した台詞通りだ!
「わかった。じゃあ、仮手形を渡すから、2日以内に冒険者登録しろよ。じゃねーと、捕まるからな!」
「OK〜。」
っておい!ラスは出てくんな!お前みたいな天然に任せたくない!
***
とりあえず、俺達は無事に門を通過した。俺達は、次の目的として宿屋を探している。
「いらっしーゃい。」
選んだのは、人の良さそうな女将がいる宿屋。
「何泊だい。」
女将が尋ねる。
「とりあえず、1泊で。お金は寝る前に支払います。」
「わかったよ。今、金が無いんだろう。まぁ、良いってことよ。…で、ちゃんと払えるのかい。」
「この村に、冒険者登録をしに来ました。私達は以外と腕が立つと思うので、そのお金で払います。」
「わかったよ。焦って、死ぬんじゃないよ。」
そう言って、部屋に案内された。部屋は、3人部屋でベッドは2つだ。ふうぅ。やっと4人だけになれた。
「よし、これから俺の体を動かしてみる!」
そうなのだ。俺が最初に、冒険者登録をする前に宿屋へ行ったのは、このためだ。ラスが、ご主人様に良い体あるよー。と言われたので、先に宿屋へ行った。
「出してくれ、ラス!」
「OK〜。」
ドサッ。
そこにあったのは、この世界では少し高いと思われる衣服を羽織り、顔は正気の色が無くなった真っ白の……
死体だった。人間の。所々傷が付いているが、ムイが治癒魔法で治す。
「おいまさか、お前が殺したんじゃないだろうな。」
「ううん、違うよ。そこら辺の路地裏にあつたの。」
おいおい、それを俺に使えと言うのか…。こいつ何されて裏路地で死んでいるんだ…
「ご主人様、配下を1から作る時、たくさん魔力使うでしょ。だけど、この死体をベースにすればあんまり魔力使わなくて良いかなぁって、思ったの。」
おお!なるほど。確かにそうだ!試してみる価値はありそうだ。よーく見ると、この死体もイケメンっぽいし、これでいいか。
***
出来た。目に俺が入るから、目をパッチリしたくらいで、後は、容姿は弄ってない。しかも、ステータスを弄ったのでほぼ最強だ。この体は!(俺は弱いけど)だが、まだ問題がある。
「 俺の名前って何だっけ?」
「え?主様、自分の名前がわからなのですか?」
「ああ、転生した時に忘れたみたいだ。」
思い返せば、ムイはマスターと、ラスはご主人様とカーサスは主様と呼んでいたからあまり気付かなかった。
「何とまぁ、我が主様は頭のネジが一、ニ本飛んでいらっしゃいますなぁ。頭は有りませんが。」
「いや、確かに上手いけどさぁ、真剣に考えてよ。」
「すみませんでした。どうか、お許しを頂きたく」
「良いよ、これぐらいの事。というか、どうしようかなぁ、名前が無いと色々困るんだよなぁ。」
「ラスねー、この体の名前知ってるよー。」
「え!教えてくれ!」
「んっーと、多分クルークだったと思うよー。大きな男の人にそう呼ばれてたー。」
「おお!それにしよう。俺が名前を思い出すまでの仮の名前だ!さあ、冒険者ギルドへ行こう!!」
「「「はい!」」」
***
冒険者ギルド。それは、この村の唯一の誇りである。王都に年々人口が集中し、田舎の若者がどんどん減っていく一方で、この村は、冒険者ギルドに人が集まる為、人口減少の兆しは無い。
ただ、この村の冒険者ギルドにとんでもない化け物が迫っている事は誰も知らない。
カランカラン
入口のベルが鳴る。真っ直ぐ進み、受け付けの子へ用件を伝える。
「冒険者登録をしたいのですが、良いですか?」
「はい、分かりました。あ、後ろの方もですか?」
「はい。」
「それでは、この紙に名前と、職業、スキルなどを書いて下さい。」
良かった〜。名前決めておいて。ムイ達には、小声で使えそうなスキルは隠しておけって言っておくか。って俺、スキルならほぼ全て習得してるんだよねー。(体が!)じゃあ、たくさんっと。
「書きましたよ。」
「たくさんというのは…何ですか?」
「ああ、俺スキルたくさん持っているから。」
「困ります、全部書かないと。で、何のスキルを持っているんですか?」
「うーん、何万個もあるんだけど…」
「ブヒャヒャヒャ。スキルが何万個もあるだと?笑わせんな、一流冒険者でも、6個位だぞ」
声が聞こえてきたと思ったら、後ろの厳つい顔の冒険者だった。…って、テンプレか!
「いや、本当に持っているから」
「ああん、まだ言うか?おい、コイツを地下の訓練室に、連れて行け!」
「クアンダさん!新人相手に、恫喝は!」
「お前も、いいだろう?決闘だ!」
「ああ、大丈夫だ。」
「ほら、了承済みだ。」
受け付けの子が、ううと口を噤む。お互い了承済みの決闘は口を出せないらしい。
「マスター。」
「大丈夫だ、最近動いていなかったから、いい運動になるよ。」
心配そうに見てくる3人を残し、俺はクアンダとか言う奴と一緒に訓練室へ向かう。そういえば、本格的な戦闘はこれが初めてだなぁ。なんて思いながら、地下へと降りる。
訓練室はギルドの1階からも充分見えるので多くの人が集まって俺達を見ている。その中には、あの受け付けの子もいる。
「逃げなかったことだけは褒めてやる、だがここがお前の墓場だ。精々手でも合わせておくんだな」
おおう。相手は、完全に殺しに来てるね。まぁ、それならこっちも遠慮しなくていいや。
ジャーン
訓練室に始まりの鐘が鳴り響いた。
次は、3000文字…?