3.初心者向けダンジョンの闇
ここで死んだら異世界転生なのか異世界転移なのか…
「ゴブリンだ!」
「やっちまえ!」
こんな会話が何度も続いた。
結論から言うと、俺は戦闘をしなかった。というか、敵が来ても今の様に一瞬で終わるため、俺の出番がなかった。まぁ、Lv1の俺にはいいことだが。
「最深部に到着しました!」
「やった!」
こんな感じで、いつの間にか倒したボスの剥ぎ取りを今している。俺も混ざろうと思ったが俺は何もしていないのに素材だけ貰うのも悪いだろうと思い、やめた。
と、その時、
ガラガラガラ
「なんだ?」
「このダンジョン崩れてないか?」
ふむ。これが罠か…って結構ヤバイ。俺達は今最深部。つまり、このダンジョンが崩落するならこの階層で逃げても無意味。安全を確保するにはダンジョンの外に出るか最低でも一階へは辿り着きたい。しかし、1年生全員の人数は120人はいる。
無事全員が逃げる為にはこの大勢をまとめ上げるリーダーなど指示する人が必要だ。だが、今日は入学初日。そんな人は居ない。
つまり。上へ昇る階段に集結して、混み合う。まるで、朝のニュースでよく見る首都圏の電車状態になる。
「どけぇ!」「邪魔だ!」「そこで寝てろ!」
何人かが階段で衝突しているようだ。
しかも、遅れて仕舞えば死んでしまうかもしれないという不安から暴力を使い、何が何でもこのダンジョンを出るという輩まで現れた。そんな奴が1人でも出ると他の人もそれに釣られて暴力を使って自分だけの道を作ろうとする。
「ウガッ!」「オフッ!」
負けた者は容赦なく床へと叩きつけられる。
するとこのダンジョンは戦場と化し、より強い者だけが助かり弱い者は強い者の攻撃で動けない者も出てくる。
と…俺は試験の日に一緒にテストを受けた、火渡朱音とかいう人を見つける。
俺はステータスが低い為、階段のラッシュに巻き込まれた瞬間吹き飛ばされたため、最下層で強い者の『道作り』に巻き混まれずに済んだ為、ほぼ無傷である。(多分)
流石に相手は俺の事知ってるかわからない為、素通りしようとする。
「た……す…けて」
こう言われては仕方がない。俺はその女の子を負ぶる。
「よいしょ」
そして俺達はゆっくり階段の上へと進んだ。
1つ上の6階層はに上がる。そこには激しい争いの跡があり中には死んでいるような人もいた。
「酷いな」「そうだね」
そんな会話が6階層に響く。この階層に息があるのは多分半数も居ないだろう。辛うじて生きている者も目が虚ろであったり、足がおかしな方向に曲がっている者までいる。
その横を俺達は通り過ぎる。
続いて5階層。数は減ったものの、その惨劇は凄まじかった。剣で一閃、槍で1突き。完全に殺そうとして殺した様にしか見えない。
余りの惨状に火渡さんは目を伏せる。
「見ない方がいいようだな」「うん」
屍の横を通り過ぎる。
4階層。ここまで来ると、流石に数が減ったせいか争いの痕跡が見られない。
しかし、僅かながらだが階段の手すりと柵の間に身体が挟まり圧死している者がいた。
上に上がる。
しかし3階層にはまたもや争いの跡が見られた。
「おかしい…」
「何が?」
「なぜまた争いが起きている?」
「それはまた階段の所で争ったんじゃないか?」
そこで思考を巡らす。
「いや……………まさか!!敵は1年生の中にいる!?」
「ほう…よく見抜きましたね」
一年の声とは思えない、渋い声がする。
「誰だ!」
そこには全身黒を纏った男がいた。
「おい、先に行け!」「うん」
背中に負ぶっていた女の子を下ろす。
そして、先制攻撃。俺は支給された剣を振り下ろすも、かわされる。
「時間が無いので、速やかに殺しますよ」
そう言って男は、俺の胴体へナイフを刺した。
「っっっ!!」
声にならない叫びが込み上げる。ステータスで見ると俺の体力は1になっていた。
意識が無くなる。…と思ったがこのままコイツに行かせると俺が負ぶっていた女の子まで殺されてしまう。
そう思い、最後の力で男の足を掴む。
「なっ!クソ!ウザいなっ!」
俺を振り落とそうと足で俺の顔を蹴る。しかし俺は離れない。
ガラガラガラ
2度目の崩落は、おそらく5.6.最下層で起きた。下で音が聞こえたからだ。
「クソっ!」
男はそう言って、俺の手首を切る。
「がぁぁぁぁっっっ!」
意識は朦朧としたが最後に男の足を噛んだ。
「グァァァア!」
男の悲鳴。一矢報いてやったぜ……。…意識が……なく……なる…
ガラガラガラ
「まさか!?もう…
男の絶望した声が聞こえる。
一瞬。
俺とその男は、ダンジョンの崩落に巻き込まれて、死んだ。
早く転生させたい