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町です。宿を目指します

 この世界のお金は面白い作りをしている。


 関所で入町税を払う順番待ちをしている時に後ろから人をみていて知ったのだが、この世界の銀貨や金貨はクッキーみたいに半分に割ることができるみたいだ。

 半分に割った貨幣はそのまま元の貨幣の半分の価値になるらしく、半分に割った銀貨は半銀貨と呼ばれていた。

 更に、半銀貨を2枚持って引っ付けると、割れ目が見えないくらい綺麗にくっついて元の銀貨に戻った。ううむ。ファンタジー。貨幣の柄が線対称になってて裏表が同じ柄なのも多分この為だろう。


 貨幣の一つをとってもファンタジーな世界にわくわくしつつ、ついに順番が来たので関所のお金を払う。


「はい、お待たせしたね。入町税は銀貨一枚だよ」


 兵士っぽい人に銀貨を渡す。

 前の人が払うのを見ていたとはいえ、自分が持っているのが銀貨だと言う確証がないので若干そわそわした。


「……はい、確かに。持ち物もないみたいだね。通っていいよ」


 よし、心の中でガッツポーズ。後ろにも人が並んでいたので早足で関所をくぐる。



「おぉ……」


 初めて入った町の光景を見て思わず感嘆の声を漏らしてしまった。


 そこには漫画やアニメの光景そのままみたいな異世界の町が広がっていた。


 石畳の地面。レンガや木製の家。町を歩く人々も様々な髪の色をしていて、中には犬耳や猫耳を持った人も見かけた。これぞファンタジー。

 日本だと即銃刀法違反で捕まるような武器を持ち歩いてる人もたくさんいるし、ここが異世界なのだと改めて認識させられた感じだ。


 獣耳や武器を持ち歩いてる人自体は町に入る前にもいるにはいたのだが、ファンタジーな街並みを歩く姿はとても絵になってて印象的だった。


 …っと。ずっとここにいたら邪魔か。行き交う人をじろじろと眺めるのも余り褒められた行為じゃないだろう。


 目的地も決めずに歩きはじめる。すれ違う人や街並みに目を奪われながら。


 お店っぽい屋台の看板を見て、文字が読めないことに気が付いた。幸いほとんどのお店は文字の横に何のお店か分かるように絵が描かれたりしているが。いつか練習しなきゃな。



「……おっ」


 しばらく歩いていると一つのお店が目についた。あれは……宿じゃないか? 看板にベットのマークが書かれている。今晩泊る宿が必要だし、ちょっと寄ってみよう。


 がらんがらんと扉についたベルを鳴らしながら入る。


「いらっしゃいませ」


 声の方へ視線を向けると銀色のポニーテールをした女の子がいた。年齢はかなり若く中学生くらいに見える。


「すいません。ちょっと聞いてもいいですか?」


「構いませんよ。何でしょう?」


「えーとまずここは宿でしょうか?」

 

「はい、宿ですね。一人部屋なら一泊が半銀貨1枚になります」


 聞き取りやすい声で理解しやすい好印象な接客だ。若いのにしっかりしているなと年寄りみたいなことを考えた。


「えーとじゃあ一人部屋をー……とりあえず3泊ほどお願いします」


「かしこまりました。では半銀貨3枚になります」


 お財布袋から銀貨一枚と半銀貨一枚を出す。


「……はい、ありがとうございます。お部屋は2階の7号室になります」


 7と書かれた鍵を受け取り、二階への階段を上る。結構年季の入った建物みたいで段を上がるごとにギシギシと音がしたが不安な感じではなかった。


二階に上がってからまっすぐ進むとすぐに部屋は見つかった。


マイルーム。わくわくする響きだ。家を買ったりはそう簡単にできないだろうから、これから長い付き合いになるかもしれないお部屋だ。


 期待に胸を膨らませながら部屋の扉を開けた。


「おおお」


 中々に広い部屋だった。綺麗に整頓されたベッドが目につく。お金の価値がイマイチ分かっていないので高いのか安いのか分からないが、これは恐らくアタリだろう。


 靴を脱いで部屋に上がり、布団の上に財布袋を置いてから部屋の探索を開始する。新しい自分の部屋って何だかわくわくする。



 それから10分ほど窓から外を見下ろしてみたり、お風呂の部屋にある魔道具に首を傾げたり、意味もなくベッドに飛び込んだりして過ごした。満喫。


「……ふう。堪能した。そろそろ落ち着くか」


 子供のようにはしゃいでしまった。誰かに見られたら恥ずかしい。まあ俺だけの部屋だから見られる心配もないんですがね!


 ベットから起き上がって深呼吸。心を落ち着けているとコンコン、と扉がノックされる音がした。


 はーい、と返事しながら扉を開けるとさっきの受付にいた銀髪の女の子がいた。


「お風呂の使い方を説明しに来ました」


 お、説明してくれるのか。ありがたい。この世界の常識みたいなもので自分から聞きにいかないといけないかと思っていた。




 お風呂の魔道具の扱いはかなり簡単で、すぐ理解できた。


「ふぅ~」


 お風呂から出て、教えてもらった衣服を綺麗にしてくれるという魔道具を使う。うむ、便利。


「でもやっぱ服は買わないとな。綺麗にできるとはいえずっと同じ服ってのも嫌だし」


 ぼふっとベットに飛び込む。


 今日は色々ありすぎた。一日の疲れが布団に横になると洗い流されているような気分になる。


 やっぱり自分の場所、と言うのが一つあるだけで全然気分が違った。安心感がある。異世界には知り合いも一人もいないわけで。能力があれば大概のことは大丈夫ではあるんだけど、それでも大きな不安があった。


 明日からこの世界で何をしようか? 金はまあまああるけど仕事とかも探さないとなー。あ、冒険者とかあるんだろうか?


 頭の中でぐるぐると思考が巡るが、次第に瞼が落ちて行った。

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