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町につきました。が、入れません



 能力を発動させてから約一時間。ようやく人類の文明を感じさせる道についた。


 これは恐らく馬車が通ったりする道ではなかろうか。道の両端に草の生えてない二本の線が出来ている。


 きっと町はもうすぐだ。期待に胸が高まってきた。


 異世界の町はどんなところなのだろう。魔法があるって言ってたから住人は箒で空飛んだりしてるのだろうか。町に入ったら皆箒で飛んでたらどうしよう。飛んでない俺だけ浮いてしまう。いや浮けないんだけど。浮けないから浮いちゃうんだけどやっぱり浮けない(?)。


 脳のカロリーを無駄に消費しながら歩いているとざわざわとした人の声が聞こえてきた。遂に目的地到着のようだ。ふっと能力が解除される。


「うわ、人多いな」


 目的地に到着して思わずそう呟いた。


 ざわざわとした喧噪。人の群れ。町の入口っていつもこんなに人がいるものなのだろうか。


 町に入るための木でできた大きな門。そこで兵士っぽい人が二人で通る人を調べている。荷物の検査もするみたいで意外と時間がかかるみたいだ。町に入りたい人は思ったより沢山いるみたいで長い列になっている。馬車も何台か並んでるあたりファンタジーだった。



「はいはーい。並んで並んでー! 町に入りたい人は順番に並んで入町税を準備してくださーい! 冒険者ギルドカードや商人ギルドカードがある人は免除されますのでそちらの提示をお願いしまーす!」


 兵士っぽい人の一人がそんなことを言った。並んでる人の一人が「もうずっと並んでるよっ早くしろっ」と野次を飛ばしている。


 今順番が来ているのはかなり大きな馬車の人で、荷物の確認に手間取っているようだ。……なるほど。これは確かに時間がかかりそうだ。もっと人手増やせばいいのに。


 いや問題はそこではなく、


「入町税……だと?」


 呆然と呟く。


 そう、俺はお金を持っていない。つまり町に入ることができないのだ。


「予想外だ……。町に入るのにお金がいるのかこの世界は。うおぉ。どうしよ」


 ズボンのポケットを探ってみる。勿論何も入っていない。


「うーむ」


 町を囲む壁を見てみる。二階建ての家くらいの高さがずっと続いている石の壁。よじ登って侵入するのは難しそうだ。というかそもそも選択肢に入れてはいけないな。


「不法入町も却下……うーん……ん?」


 門の列を少し離れたところに一人の少女がヴァイオリンっぽい楽器を持って立っている。


 少女は並んでいる列の人に向けてよく通る声でこう言った。


「これから私が演奏をします! 良かったら聞いてください」


 周りの注目が集まっていく。皆ずっと並んでいて暇だったんだろう。「おっいいぞー!」とか「やれやれー!」とか声援がおくられている。


 なるほど。人が多いとああやって出し物をする人もいるんだな。観客は良い暇つぶしになるし、芸を見せた人はお返しにお金を貰うというウィンウィン。日本では余りないことなので少しワクワクする。


 しばらくして、列にいるほとんどの人の注目が集まった。少女は顎に当てるようにゆっくりと楽器を構えた。金色の髪が風に揺れて目を瞑って集中している姿は絵になっている。これは期待できそうだ。


 ざわざわが収まってしん、とした瞬間に少女は弾きはじめた。……弾きはじめてしまった。


 ギ……ギギギィ……と楽器が悲鳴を上げ始める。例えるなら黒板を爪で引っ掻いたような音だ。もしあの楽器が言葉を話せるなら『死……死ぬぅ……』とか言ってそうな感じ。さっきまで声援をおくっていた観客も今は皆顔をしかめて耐えている。


 ギ、ギィッギギィギギィ……! 


 あ、今のは『い、痛ッ痛い痛い……!』って感じに聞こえた。言葉が聞こえてくるような演奏と言えば聞こえはいいが、正直聞くに堪えない。


 本人はいたって気持ちよさそうに演奏している。音痴は自覚できないというがきっとそういうことなのだろう。


 その内一人のおっさんが「もうやめろ! 耳が痛いわ!!」と怒鳴るまで悪夢の演奏は続いた。演奏が止まってほっとしている観客の皆様。中には少女に向かって「やめちまえ!」とか罵声浴びせてる人や石を投げてる人までいる。


 罵声や投げられる物から楽器を庇うようにして耐えている少女。「こ、こんなはずでは~~!」とか言っている。いやむしろなんであの演奏でいけると思った。




 しばらくしてようやく皆が少女から関心を無くした頃、俺はちょっとした思いつきで少女の前に移動してみた。楽器と頭を手で隠して小動物みたいにビクビク怯えてる。さっき近くまで来て「ド下手がっやめちまえ!」とか怒鳴ってたおっさんもいたし俺にも文句言われると思っているのだろう。軽く咳払いをしてから声をかける。


「……それ、なんて楽器なの?」


「…………え?」


 少女が俯いていた顔をあげる。


「楽器の名前だよ。気になって」


「あ、え、えっと……ヴァイアランと言う名前の楽器です、一応。はい」


 普通に話しかけられるのは予想外だったみたいでかなり動揺してる。ていうか楽器名もヴァイオリンに似てるな。


「へー初めて見る楽器だ。……ちょっと見ていい?」


「え? あ、はい。ど、どうぞ……?」


 おずおずと差し出してくる少女。色々と混乱して言われるがままになってるな。ありがたい。


「じゃ、ちょっと借りるよ」


 楽器を受け取って、少し見て楽しむ。ふーむ。素人目にはヴァイオリンとの違いが分からないな。世界は違えど楽器の形は似るんだなと感心した。


 ある程度見て楽しんだ後で、俺は能力を発動した。


「(よし全自動行動、何か適当に弾いてくれ。出来れば観客からお金貰えそうなのを)」


 ドクン、この世界に来てから三回目の能力が発動する。町までの移動でこの感覚には少し慣れた。


 身体が勝手に振り返り、列の人達の方を向く。そしてすっと綺麗な所作で楽器を構えた。


 後ろで少女が「え、え?」と状況がつかめていないような声を上げているのを背に、俺の自動演奏が始まった


4話で町の中まで入る予定が文字数が多くなったので2話に分けて投稿することにしました

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