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逝きました。異世界へ行きます

 人生終わりはあっさりしたものだな。


 白い霧に包まれた明るい空間に浮かびながら考える。


 いつも通りの朝でいつも通りの通学路だった。

 もう二年も通った高校への道のりで、まさか車に撥ねられるとは思わなかった。白線を越えてものすごい勢いで突っ込んで来たトラックに俺が出来たことはただポカンと口を開けて見ることだけだった。

 痛いと感じることすらなく即死。車がぶつかる直前で記憶が切れているから多分そうだろう。痛みを感じず死ぬことが出来たのはある意味羨ましがる人もいるのだろうな、とか馬鹿なこと考えた。


 さて、これからどうしたものか。


 今俺は恐らく天国、もしくは地獄と呼ばれる場所にいるのだろう。明るい雲の中にいるイメージ。印象的には天国だ。


 身体は透けていて、アニメとかにでてきそうな感じに幽霊化している。動こうと思えば勝手に霊体が動いてくれるありがたい仕様なのだが、行けど戻れどずっと雲の中だった。


「悩み事かい? どれお姉さんに話してみな」


「はい……。実はトラックで幽霊で雲の中なんです」


「おやおや、それは困ったね……」


 ……ん?


「と言うか誰ですか?」


「それを聞いちゃうかい。野暮だねえ」


「野暮と言うか必然と言うか」


 気が付けば近くに一人の女の人がいた。普通に会話していたが、一体誰だろうか。


「では自己紹介と行こうか。私はラ=ムー、君達が言うところの神様だよ」


 でん、と自慢するように言った。


「はは。冗談面白いですね」


「君愛想笑い下手だな。真顔じゃないか」


「そんな褒めないでくださいよ」


「何をどう解釈したのかちょっと分からない」


「よく言われます」


「よく言われちゃうのか……」


 結構ノリのいい人だった。思わず頬が緩む。初対面の距離感が少しだけ和らいだ気がした。


「それで神様さんは俺に何の用事ですか?」


「様とさんを一緒につけるとややこしいな。用事、用事か。そうだね…」


 神様さんは何故か凄く嬉しそうだった。わざとらしく咳払いをしてから話始める。


「君に一つ提案があるんだ。異世界に行ってみたくはないかい?」


 そんなことを言われた。イセカイ。胃世界。異世界。


「今一瞬なんか変な世界が混ざらなかった?」


 地の文を読まれていた。読心術ができるらしい。


「詳しくお願いします」


「あいよ。本来死んだ魂はね、こんな場所に来ることなく即天国か地獄へ飛ばされるんだ。そして前世の行いに応じて規定の時間を過ごした後再び地球へ転生する」


「はい」


「だけど君はちょっと事情が特殊でね。そのどちらにも飛ばすことができないんだ」


「特殊……ですか?」


「うん……説明はしにくいんだけどね。と言うか面倒」


 神様さんは正直だった。


「ちなみに異世界に行く上で君には少しだけ優遇してあげようと考えてる」


 これは内緒の話なんだけどね? と語尾につきそうな感じで言われた。


「異世界は地球より危険が多いんだ。魔物って言う人間に襲い掛かる生き物もいる。そんな中に平和そのものの現代日本で育った君が行くと、まず死んじゃう。秒で死んじゃう」


「秒ですか……」


「秒です」


 言い切られた。異世界怖すぎだろ。


「あ、欲しい能力とかある?」


「何故か異世界行く前提で話進んでません?」


「え? 断るの?」


「いやそういう訳ではないですが……」


「じゃあいいじゃん」


「あ、うん……」


 強引な神様だった。ちょっと引く。


「それで欲しい能力は?」


 地の文は読めているだろうに何事もなかったように話を進めてきた。


 能力、能力かぁ。


「ちなみにどんな能力があるんですか?」


「そだね。やろうとすれば何でもできるけど職業:勇者とか面白いよ」


「ん? 今なんでもって言ったよね?」


「言ったけどその口調やめて。何か嫌」


「勇者かぁ。何か大変そうだな」


「大変と言えば大変かな。世界中の人類から魔王を倒してください勇者様! とか言われちゃうかも」


「うわ却下」


 凄く面倒臭そうだった。と言うか職業勇者って能力なのか。


「他には、腕を十字の形にするとビームが出せる能力とか」


「ウルト○マンか!」


「目からビームが出せるようになる能力とか」


「目から出す意味あるんですかそれ!?」


「口からビーム出せるようになる能力とか」


「そのビームへのこだわりはなに?」


「腕を十字にすると目が飛び出る能力とか」


「混ざった!? でも何の役にも立たないじゃないですか」


「不満ばかりですね……」


「何でちょっとこっちが我がまま言ってるみたいな空気になってんですか。もっとマトモなの考えてくださいよ」


「いえ、ビームが出せないんでしたら私にこれ以上のインスピレーションは働きません」


「そ、そう……」


 神様さんはやれやれって感じで首を振ってる。ちょっとムカつく。

 この人(神)に敬語使う必要はないな。もうタメ口で話そう。


 神様さんはこれ以上能力を考えてくれないようだし俺が自分で考えるしかないようだ。

 そうだな……。面倒臭いのは嫌だな。職業:勇者とか何か義務が発生しそうなのは却下だ。俺は楽をしたいのだ。学校とかでも何度、誰か俺の代わりに行ってくれって思ったことか。せっかくの異世界なんだからのんびりと過ごしたい。


 小一時間悩んだ後、一つの能力を思いついたので口にしてみる。


「身体をさ。自動操作にすることはできないかな?」


「自動操作?」


「そう。トラックが突っ込んでくるような緊急事態の時に勝手に避けてくれたり、命令を出したらその通りに動いてくれたりするの」


「ふむふむ。貴方の身体を貴方の意思ではなく勝手に動くようにして欲しいってことね?」


「そんな感じ。身体が自動で動いてる時、俺の意識が寝ることができるようになれば完璧だ」


「なるほどなるほど。分かった。えーと……あるね、そういう能力」


「おっ」


「……はい、これだね。能力名【全自動行動】。命令に準じた行動を自動でしてくれる能力。あらかじめ発動条件をつけておくことも出来るから便利だね」


「我ながら良くサボれる良い能力だと思う。能力発動中に意識は残る?」


「任意で選べるみたいだよ。後あらかじめ発動条件設定しとくこともできるみたいだから、緊急事態への対応もバッチリ」


「……最高じゃないか」


「はは。良いのがあってよかったね。これで決める?」


「勿論」


 返事をすると、頭の中にポーン! と言う音がした。

 目の前に薄い青色の文字で『【固有能力:全自動行動】を手に入れた!!』と言うメッセージが表示されている。


「何かゲームみたいだ」


「これから君が行く世界もそうだよ。剣と魔法のファンタジーって感じかな」


「へぇ」


 少し異世界が楽しみになっている自分がいた。

 危険が一杯らしいので油断はいけないが、この能力があれば当面問題ないだろう。

 ゲームみたいなファンタジーの世界にいってレベルを上げたり出来るのなら、それはとても楽しいのではなかろうか。少なくとも面倒臭い学校に通う毎日よりはマシなはずだ。


「じゃあ、お別れの時間だ」


 神様さんがそう言った。


「何かあっという間だったけど、君との時間は楽しかったよ。異世界でも楽しんでおいで」


「ありがとう。俺も楽しかったよ」


「じゃあね。きっとまた会うこともあるんじゃないかな」


 会えるといいな。と返事しようとしたところで俺の意識は遠のいていく。


 白い光と雲に囲まれた場所から暗い底に落ちていくような感覚は少し不安だったが、神様さんのやることならきっと間違いはないだろう。


 こうして俺の異世界生活が始まった。

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