魔王vs勇者
勇者:覚悟だ、魔王!!
魔王:よく来たな、勇者よ。そしてその仲間たちよ。
振り返れば苦節1年と9ヶ月。
勇者:えっちょっ何語り出してんの。
魔王:聖剣に選ばれ、旅立った貴様はあまりにも脆弱で。
レベル1のモンスターにすらも転ばされて泣いていたな。
勇者:泣いてねえよ!!木の枝に引っかかったんだよあれは!!
僧侶:転んだ理由がどちらにしても情けなくないですか、それ。
魔王:王宮に呼び出され王との面会には
いつ粗相をするのではないか気が気ではなかった。
勇者:魔王なのに何人間のマナーとかきにしてんの!?
盗賊:あーほら、勇者がさつだもんなぁ。
勇者:違うからね!?
魔王:からくも王に打ち首にならず王宮を出た貴様は
次は町の酒場で仲間を捜し求めた。
僧侶:その口の汚さと言動でよく乗り切りましたね。
盗賊:ある意味勇者だよな!ははっ!
勇者:オレだってやる時はやるんだからね!?
魔王:それから続く屈辱の日々。
弱い、あまちゃん、葱かも、それら全ての
名称があの頃の貴様にはあてはまった。
侍:勇者…かわいそう…。
勇者:やめて!!笑われるより心が痛いから!!
魔王:ちんぴらに絡まれふるぼっこにされては泣き、
勇者:だから泣いてねえよ!!あれは汗が目から流れたんだよ!
魔王:こじきのふりをしたぼっちゃんの演技に絆されて
有り金を全て与えてやり、
勇者:えっあれそうだったの!?
なんか靴がオレのより新しそうだなとは思ったけど…。
魔王:そしてそれを見ていた詐欺師には
翌日王から貰った金で幸せになる壷を買わされた。
盗賊:ああ、あの僧侶の薬草いれになってるやつだろ。
僧侶:幸せの壷だったんですね…。
勇者:鎧一式の金額で幸せになれるんだから買うだろ!?
魔王:勇者よ、幾らなんでも壷一つで幸せになれるものなら
この世に悲しみなぞ存在しないぞ。
勇者:確かにいいいい!あの後馬糞踏みつけるわ
バナナの皮踏みつけてすっころぶわ散々だった!
侍:…ある意味凄い壷…?
魔王:けれど貴様はめげなかった!
ねばりにねばり、
レベル3のモンスターも余裕で倒せるようになり
そうして初めての仲間ができた。
僧侶:私のことですかね。
勇者:そうじゃね?
魔王:そう、今も貴様の傍らで控えているウルフドッグだ。
勇者:マックスのことかよ!!!
魔王:もうレベル105か、勇者より強くなったな、偉いぞ。
勇者:しかもマックスいつの間にレベルあがったの!?
オレきいてないよ!?ねぇ!?
盗賊:僧侶が自分のレベルあげに連れまわしてたぞ。
僧侶:スカウトの役も果たして前衛にもなるんですよ?
魔王:そしてウルフドッグに釣られるように
ちゃんと人間の仲間も加わり、
勇者:すんごい心当たりあるぞ、これ。
魔王:こらそこの僧侶よ、
ウルフドッグをもふもふするのはやめてあげなさい。
僧侶:てへぺろ☆
盗賊:うっわきも!
魔王:そこのむっつりの侍も羨ましそうに凝視するのは
ウルフドッグのストレスになるから我慢しなさい。
侍:…じゃあ、やめる…。
勇者:どこのお父さんだよ!?
魔王:そう、最強の猛者共が仲間になってからの
レベル上げのはやさは目を見張るものであった。
僧侶:まぁ勇者もそこまで弱くはなかったですよね?
魔王:初めて倒したガーゴイル、
時に右手の骨は大丈夫か?
あれは素手で殴って良いものではないぞ?
盗賊:アホだけどな。
勇者:あれは剣がすっぽ抜けたんだよ!!
魔王:初めて倒したミミック、
初のダンジョンで初のお宝箱だったからな
飛びつくのも無理はないが
盗賊の阻止もきかずに飛びつくのは
危険きわまりないぞ?
盗賊:あはは!あれは覚えてるぜ!
そのまま突っ込んでってぱくって上半身食われてやんの!
勇者:忘れろおおおお!!!
魔王:初めての水竜との戦い、
山頂での戦いであったにも関わらず
凄いいきおいで海にまで流されていったのには
さすがにおどろいて手を貸してしまうところだった。
はっはっは
僧侶:あの時は大変でしたね…。
勇者と聖剣なしで水竜を倒さねばならず
全員が大怪我をして完治するまで動けませんでした。
盗賊:そっからの勇者探しだもんなぁ。
まさか港町まで川をくだるはめになるとはな。
勇者:だって迷子になったら動くなってばっちゃんが!
魔王:初めての四天王との戦い、
そう言えば第二形態だの第三形態だの叫んでいたが
あれはれっきとした四天王であるそ?
四つ子である為に確かに見分けがつき難いが。
勇者:嘘だろ!?第二形態になったんじゃなかったのか!?
僧侶:だから言ったじゃないですか
魔力の質が違いすぎるからそれはない、と。
盗賊:あーむりむり。勇者ほら、チューニ病こじらせてっから。
勇者:うわぁああああああああ!!
魔王:そしてようやく我のもとに辿り着いた!
長い道のりであったな、勇者よ、そしてその仲間たちよ!
勇者:長いよ!!まず魔王の前口上が長いよ!!!
魔王:さあ!どこからでもかかってくるが良い!
どのように勇者が見栄えよく勝てるか
しっかり配慮して倒されてやろう!!
だから安心してかかってくるがいい!!
勇者:それのどこが安心できるんだあああああああ!!!
侍:…バカばっか…。