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兄弟券バイク・ロスしたー そのじゅう

「ウガアァァァ!」

「ごんどるぅぅ!」

「兄弟さん! ミャアさん! 悪い奴らをやっつけるのです!」

「ふしゃぁぁぁぁ!」


 敵味方が入り乱れての、凄まじい乱闘が繰り広げられている。

 ロドリゲス兄弟の兄スカイ・ロドリゲスが、戦闘員をブレーンバスターで投げる。弟のグラン・ロドリゲスは、オクラホマ・スタンピートで戦闘員を吹っ飛ばしていく。

 一方ミャアは、接近してくる戦闘員たちをフラッシュピストン猫パンチ――一秒間に猫パンチを十六連射するという超必殺技である――で片っ端からKOしていく……。

 シェーラがその周囲をくるくる動き回り、ダウンした戦闘員の両手を縛り上げる。もっとも、ケーンだけは完全に高見の見物態勢であるが。

 そんな中、ザックは姿勢を低くし、奥へと進んでいく。周囲の戦闘員たちは、ロドリゲス兄弟とミャアの暴れっぷりに圧倒され、ザックの存在には気づいてすらいない。ザックは奥にある扉を開け、さらに進んで行った。


 一本道の通路を進んで行くと、またしても扉があった。何やら怪しげなデザインだ。七本頭のハブと、白く赤い目の巨大なマングースが睨み合っている、奇怪な絵が描かれている。伝説の転生芸術家であるヤカモト・タローのデザインだろうか……ザックは扉を開け、中に入って行った。


「な、何じゃお前は!」

 中に入ると同時に、いきなり怒鳴り付けられたザック……見ると、奇妙な格好をした老人と二人の若い女が、こちらを睨みつけている。

 そして、部屋の奥には祭壇のような物があった。けばけばしいデザインだ……これも、天才転生芸術家であるヤカモト・タロー氏のデザインに似ている。

 そして、大きな像が飾られていた。人型ではあるが、大きな単眼が特徴的だ。一つ目の巨人である、サイクロプスをモチーフとしているのだろうか。ただし、大口が開いているのがマヌケだが。大きさは成人男性と同じくらいか。あれなら、担いで持っていけるだろう。

 ザックはつかつかと近づき、ひょいと担ぎ上げた。すると、老人たちが血相を変えてわめきだす。

「なんじゃ貴様! 魔王ゴルゴンゾーラ様をどうする気じゃ!」

 その言葉と同時に、若い女がザックの前に立ち塞がり、そして身構える。

 だが、ザックは平然としていた。

「この像、私がもらい受ける……邪魔をするなら、猛進撃滅円斬趙雲魔法奥義、ハーレムボンバーを食らわすぞ」

 その言葉を聞いたとたん、女たちの動きが止まった……そして表情が変わる。


「ハ、ハーレムボンバーですって!?」

「あの幻の秘技!? 全ての女をハーレム要員化してしまうという!?」


 やたらと説明的な言葉を吐いた後、女二人は顔を見合わせた。

 そして次の瞬間――


「あたし、あんな不細工いやあぁぁぁぁ!」

「あんな服のセンスが滅茶苦茶な男のハーレム要員になるくらいなら、死んだ方がマシ!」 叫びながら、女たちは血相を変えて部屋を飛び出していく。

 残された老人は、ザックをじっと見つめた。その顔には、様々な感情が浮かんで消える。

 だが、次の瞬間――

「嫌じゃあぁぁぁぁ! ハーレム要員は嫌じゃあぁぁぁ! 儂は、亡くなった爺さん一筋なんじゃあぁぁぁぁ!」

 叫びながら、老人とは思えぬ速さで逃げて行ってしまった……。

「あいつは、女だったのか……歳をとると、見ただけでは男か女か分かりづらくなるな」

 そう言うと、魔王ゴルゴンゾーラ像を担いで部屋を出て行こうとするザック。しかし、何やら叫び声が聞こえてきている。ロドリゲス兄弟とミャア、そしてシェーラの声だ。どうやら、この部屋に接近して来ているらしい……。

 ザックは思わず舌打ちした。この像を、もしシェーラに見られたら……彼女は間違いなく、破壊しろと言うであろう。そして、ロドリゲス兄弟とミャアが跡形もなく破壊してしまう。

 だが、それはもったいない話だ。巨万の富を生み出す可能性を秘めている、魔王ゴルゴンゾーラ像……これを破壊するのは重大な損失である。この像さえあれば、ザックは働かなくていい。この先、ロドリゲス兄弟と一緒に営業に回らなくて済むのだ。かねてより欲しかった、魔法のバイク型ゴーレムも買える。魔法で作られ最近発売された『転人ザボンガー』だ。バイクの形から人型ゴーレムに変形する、世界に一体しかないモデルなのだ。

 それに、ロドリゲス兄弟が欲しがっていた券も手に入る。『筋肉少年少女隊』のコンサートの入場券を買ってやれるのだ。なかなか手に入らないが、ダフ屋に金を積めば――

「あれなのです! あの像を破壊するのです……ザックさん?」

 シェーラの声を聞き、我に返るザック……妄想に浸っている間に、シェーラたちが来てしまったらしい。

「ザックさん! その像を置いて下さい! 兄弟さん、ミャアさん、あの像を破壊するのです!」

 その声と同時に、突進して来るロドリゲス兄弟……ザックは像をひったくられた。

 そして――

「むきー!」

「もきー!」

「にゃー!」


 奇怪な叫び声を上げながら、像をメタクソに破壊する三人……シェーラは勝ち誇った表情でそれを見ながら、うんうん頷いている。

 しかしザックは、その場に崩れ落ちた……。

「バイクが……チケットがぁ……」






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