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兄弟券バイク・ロスしたー そのはち

 ザックは、そっと地下道を降りて行った。ダゴンの街の地下には長く広い下水道が設置されている。それに伴い地下通路も、様々な方向に枝分かれしていたりする。その地下通路たるや、下手なダンジョンよりも広く危険なのだ。得体の知れない生物や、人々の前に姿を現せられない者などが地下に潜み、生活しているのである。


 静かに地下道を進んで行くザック。しかし――

「いやあ、ここの匂いはたまらんな。さすがの俺も、この匂いには負けるぜ。この匂いは……ここいらじゃあ一番だ」

 ぶつぶつ言いながら、後ろから付いて来るケーン……ザックは苦々しい表情を浮かべる。この男が付いて来ると、確実にろくなことにならないだろう。

「なあケーン……もう少し静かに歩いてくれんか。デストロイに気付かれる」

 ザックが小さな声で言う……すると、ケーンは顔をしかめた。

「何だ何だ、肝っ玉が小さいな。お前さん、チキンぶりでは……ここいらじゃあ一番だ」

「このバカ者が……」

 ギリギリと歯ぎしりするザック……ケーンは空気を読まないという部分に関しては、間違いなくここいらで一番だろう。いっそのこと、この地下道で迷子になってくれればありがたいのだが……。


「にゃー!」

 ザックとケーンを案内するため、尻尾をピンと立てて先導していた野良猫のニャンゴロウが、いきなり立ち止まった。そして鳴きながら振り向く。ザックが行って見ると、下の階に通じる梯子があった。ニャンゴロウは何か言いたげな様子で、じっとザックの顔を見ている。

「降りろ、ということか……よくやったぞニャンゴロウ。ミャアにご褒美をもらうのだ。気をつけて戻るのだぞ」

 そう言って、ニャンゴロウの喉を撫でるザック。ニャンゴロウは、ゴロゴロと喉を鳴らしながらザックに顔を擦り付けた後、とことこと去って行った。

 ザックはニャンゴロウの後ろ姿を見送ると、梯子を降りていった。


 下の階は、さらに不気味な雰囲気が漂っている。明らかに、人の出入りしている気配があるのだ。ザックは慎重に進む。しかし――

「おいおい、こいつは間違いないな……ここがデストロイのアジトだよ。さて、ぶっ潰しに行こうか」

 地下道に響き渡るようなでかい声を上げながら、ずかずか進んで行くケーン。さすがのザックも慌てた。この男を放っておいては、地下道に崩落事故が起きかねない。

「こ、こらケーン! お前はもう少し、静かに行動できんのか!」

「んな必要ないだろうよ……乗り込んで行ってぶっ潰せばいいんだからな」

 そう答えるケーンの顔には、不気味な笑みが浮かんでいる……ザックは恐ろしくなってきた。こいつは本当に、何をしでかすかわからん男だ。

「いや……そんなことをされては私が困るのだ! いいか、くれぐれも慎重に行動してくれ……万が一、子供たちを巻き込んだりすると困る」

 そうなのだ。万が一、自分の計画に気づかれでもしたら……非常に困る。

 仕方ない。このケーンに暴れさせ、自分は漁夫の利を狙うとしよう。


 先を歩いていたケーンが、不意に立ち止まった。

「おいおい……あれは何なんだ? もろに悪の組織の秘密基地って感じだぜ、ザック」

 ザックはケーンの隣に行き、下を覗きこむ……ケーンの言う通りだった。目の前には、下の階に続く大きな階段がある。

 そして下の階は……異常に広く、手入れが行き届いている。魔法による明かりが灯り、床や壁はきちんと整備されていた。上の階のように、ネズミやコウモリが蠢いているわけではない。まるで王公貴族の住む城のようだ……。

 そして、怪しげな男たちが行き交っている。


「おいおいザック……お前さんの屋敷よりは居心地よさそうだな……さて、行ってぶっ飛ばして来るか」

 そう言うと、ケーンはすたすたと降りて行く……ザックは慌てた。

「おいケーン! バカな真似はやめろ! まずは慎重に様子見だ!」

 だが、その言葉を無視し……ケーンは下の階に降り立った。

 そして――


「俺は魔法探偵、ケーン・カザミだ。お前らデストロイの野望は、俺が潰してやるぜ」

 ケーンは勝ち誇った表情で、そう宣言した。

 呆気に取られた表情になる、デストロイの戦闘員たち……。

 一方、ザックは決心した。こうなっては仕方ない。まず、このケーンを暴れさせるのだ。その隙に、自分はゴルゴンゾーラ像のある場所を探し出すのだ。


 ザックの目論見の通りになった。デストロイの戦闘員たちは、一斉に動き……ケーンに襲いかかっていった。

 しかし、全員ブッ飛ばされていく。ケーンの強さは半端なものではないのだ。さわやかな笑みを浮かべ、戦闘員たちを片っ端から薙ぎ倒していく……。

 だが――

「雑魚はどいてろ! 俺の出番だ!」

 奥から、ガラの悪い声が聞こえてきた。そして次の瞬間、奇妙な出で立ちの男が現れる。腹には毛糸の腹巻き、頭には白いハチマキ、さらに奇妙なデザインの青い上着を着ている。右手には大きな木のハンマーを持ち、じっとケーンを睨んでいた。

 そして、おもむろに怒鳴り付ける。

「やいやいやいやい! どこの馬の骨か知らねえが、俺が相手になってやるぜ! かかって来い!」






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