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兄弟券バイク・ロスしたー そのろく

 ザックは、帰って来たシェーラの顔を見つめる。その時ふと、一抹の不安を覚えた。果たして、シェーラとハックの関係はどうなっているのだろう。二人はどこまで進んでいるのだろうか……。

「な、何ですかザックさん……さ、先ほどのことを気にしているのですか? 私は全然、気にしてないのです……も、もし許して欲しいと仰るのでしたら、許してあげないこともないのです……」

 そのシェーラはザックから目を逸らし、ぶつぶつ言っている。足元では、パグ犬のデュークが不安そうにじっと見上げていた。

「なあシェーラ……お前に一つ聞きたい。お前は、宿無しハックのことが好きなのか?」

 ザックがそう言ったとたん、シェーラの表情が一変した。顔が一気に赤くなり、明らかにうろたえた様子でザックを見る……。

「な、何を言っているのです! わ、私とハックは友だちなのです! それ以上ではないのです!」

「何を動揺しているのだ、お前は……いいか、結婚するなら相手を選ぶのだぞ――」

「け、結婚!? な、何を馬鹿なことを言っているのです! 私とハックは、そのような関係ではないのです!」

 顔を真っ赤にし、両手を大きく降りながら否定するシェーラ。すると、ヒロコがつかつか歩いて来た。

「ザックさん、大事なお話があります。ちょっとお部屋まで行きましょう」

 そう言うと、ヒロコはザックの腕を掴んだ。

 そして強引に引っ張って行く。

「ちょ、ちょっと待て! ヒロコ、ここでは駄目なのか――」

「駄目です! 部屋に来てください!」

 ヒロコはおっかない表情で怒鳴りつける……ビビったザックは、仕方なく部屋まで付いて行った。


「ザックさん……シェーラちゃんにもプライバシーはあります――」

「プライバシー? 何だそれは? 秘密の魔術の呪文か何かか?」

 真顔でそう尋ねるザック……ヒロコの目が、怒りに燃える。

「とにかく! シェーラちゃんも女の子なんです! 女の子はデリケートなんですから……その点を考えて、少しは良識ある行動をとってください!」

 ヒロコに怒鳴られ、ザックは頭を掻いた。良識ある行動とは何であろうか……理解不能だ。しかし、そんなことを言うとごちゃごちゃ揉めるだけである。ザックは仕方なく答えた。

「ああ、わかった……良識ある行動を取るとしよう」


 ザックとヒロコがリビングに戻ると、シェーラとロドリゲス兄弟は魔法の水晶板を観ていた。すると、一人の男が大きな肖像画を指差している。

(ほら、こんな所に心霊が写ってます!)

 すると、周りにいる若い女たちが叫んだ。

(きゃあ! 怖い!)


「兄ちゃん、しんれいって何だ?」

 ロドリゲス兄弟の弟であるグラン・ロドリゲスが、兄のスカイ・ロドリゲスに尋ねる。すると、スカイは胸を張って答えた。

「心霊か? 心霊とはな……あちこちに顔を出す出たがりのお化けのことだ」

「おおお……さすが兄ちゃん、賢いな」

 言いながら、兄の大胸筋をぺちぺち叩く弟。一方、満足げな表情で胸を張る兄……。

「あの……肖像画に心霊が見えたとしたら、それは描いた人があえて入れたのではないかと思うのです……お化けはぜんぜん関係ない気がするのです……」

 シェーラが小声で至極もっともな意見を述べたが、上機嫌なロドリゲス兄弟には聞こえていないようだった。

 そんなロドリゲス兄弟の愚かなやり取りを横目で見つつ、ザックは考える。果たして、デストロイなるアホの集団が何処にいるのか……。

 まあ、この場合……一番手っ取り早いのは、本拠地に乗り込んでゴルゴンゾーラ像とやらをぶっ壊すことだろう。連中の目的は、ゴルゴンゾーラ像の吐き出すダイナストーンとかいう宝石が目的なのだから。

 ザックはいろいろ考えを巡らせながら、ミャアの持ってきたにゃんころもちに手を伸ばす。だが、その時――


 待てよ。

 その、ゴルゴンゾーラ像さえ手に入れれば……。

 そして、像にダイナストーンを吐き出し続けさせれば……。

 ダイナストーンで、私は大儲けできるではないか!


「うおおお! 大儲けではないか!」

 いきなり立ち上がって庭まで走り、大声で吠えるザック……そう、ゴルゴンゾーラ像さえあれば大儲けなのだ。ダイナストーンは、高級な物だと一粒で小さな国が買えてしまうという話だ……小さな国がいくらで買えるのかは知らないが。

 まずはデストロイの本拠地に乗り込み、構成員を全滅させ、ゴルゴンゾーラ像を屋敷に持ち込む。次に子供たちを集めて、物凄く悲しい話を聞かせる。すると子供たちは泣き出し、像はいくらでもダイナストーンを吐き出す……。

 我ながら、完璧な計画ではないか!


「ザ、ザックさん……頭は大丈夫ですか?」

 庭で一人、高笑いをするザックを見て不安になったヒロコが声をかける。

 しかし、ザックはお構い無しだ。そのままリビングに戻って行った。

 そして、テーブルに置かれているにゃんころもちをパクつきながら、ヒロコに言う。

「私は出かけるからな! ヒロコ、後のことは頼んだぞ!」






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