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兄弟券バイク・ロスしたー そのご

 ザックは考えに考えた挙げ句、警察署に行ってみることにした。デストロイなるアホの集団に関する情報……魔法刑事のジャン・ギャバンなら知っているかもしれない。ついでにバカ話でもしよう……などと思いながら、ザックは歩いて行った。


「な、何だよザック……何の用だ……」

 警察署の門のそばにいたまだ若い新米警官は、震えながらザックに尋ねる。

「魔法刑事ジャン・ギャバンに会いに来たのだが……いるのか?」

「い、いや……今は外を回ってる」

「何だと……奴め、いて欲しい時にはいてくれないのだな……」

 ザックはため息をつく。恐らくジャンは仕事をサボり、愛馬サイバリアンを乗り回しているか……あるいは、どこかの店で時間を潰しているのか……。

 いずれにしても、ジャンがいないのでは話にならない。腹も減ったことだし、ひとまず帰るとしよう。

ザックはくるりと向きを変え、その場を立ち去って行った。

 後に残された警官は、ザックの姿が見えなくなると同時に、その場に崩れ落ちる。

「ああ……助かったあ……怖かったよ……ザック怖いよお……凄え怖いよ……」




 仕方ないので、ザックはひとまず屋敷に戻った。まずは、屋敷で一休みしてジャンが戻るまで待つ。情報収集はそれから……と考えた。

 しかし、この時のザックは何も知らなかったのだ……屋敷の中で今、とんでもない出来事が起きていることを……。


 ザックが屋敷に戻ると、庭で大変な騒ぎになっていた。

 たくさんの野良猫が、屋敷の庭に集まっているのだ……皆でぐるりと輪になっている。

 輪の中心にいるのは、ミャアだった。

「にゃはははは! お前ら、一列に並ぶにゃ! 今日は煮干しを三匹ずつ渡すにゃ! 次は三日後だにゃ! 忘れるにゃよ! さあ、お行儀よく並ぶにゃ!」

 ミャアがそう言うと、野良猫たちはぞろぞろと一列に並んだ。そして、ミャアの手から煮干し三匹を受け取っていく。

 煮干しを受け取った後の猫たちの反応は様々だ。庭で美味しそうに煮干しを食べる猫がいるかと思うと、嬉しそうにくわえて持ち帰る猫もいる。

 中には自分の分の煮干しを食べ終わった後、素知らぬ顔でもう一度ならぶ猫もいる。だが、ミャアは目ざとく発見して怒鳴りつけるのだ。

「にゃ! お前にはさっきあげたにゃ! 一匹一回だにゃ!」


 その様子を、ザックは唖然とした表情で見ていた……だが気を取り直し、ヒロコに尋ねる。

「おいヒロコ……うちはいつから、野良猫への餌やりをおこなうようになったのだ?」

「いや……ただの思いつき、みたいなんですけど……まあ、いいんじゃないですか。猫は可愛いし――」

「可愛いし、ではない! こんなに大勢の猫が訪れるようになったら、私はどうしたらいいのだ! それに、増えすぎた野良猫は生態系を乱すのだぞ!」

 怒鳴りつけるザック……その声に驚いた猫たちが、一斉にこちらを向いた。つられて、ミャアもこちらを向く。

「何デカイ声だしてるにゃ……猫たちが怖がるにゃ。もっと静かにするにゃよ……」

 ミャアは、惚けた口調で言葉を返す。ザックは、ミャアのことも怒鳴りつけようとしたが……。

 その時、ある考えが頭に浮かんだ。


「おいミャア……お前は、こいつらの言葉がわかるのか?」

「にゃにゃ? もちろん、わかるにゃよ」

 ミャアが答えると、ザックの顔に笑みが浮かぶ……いかにも邪悪そうな、笑みが。

「ならば、ミャア……野良猫たちに聞いてみてくれ。近ごろ、子供たちを殴って泣かしてまわるアホの集団がいるらしい。そいつらに関する情報を知らないかどうか、を」

 ザックがそう言うと、ミャアは面倒くさそうにあくびをした。

「えー……面倒くさいにゃよ……そんなの、大した事件じゃないにゃ」

「シェーラが殴られて、そして泣かされてしまってもいいのか?」

「にゃ、にゃんとお! それだけは許せないにゃ! そんなことをする奴がいたら、ミャアがぶっ殺してやるにゃ!」

 ミャアは憤怒の形相を浮かべて立ち上がる。と同時に、野良猫の群れに向かい叫んだ。

「お前ら! 大人のくせに子供を殴って泣かせてる、変な奴らがいるらしいにゃ! 見かけたら、すぐにミャアに知らせに来るにゃ! 重要な情報を知らせてくれた猫には、するめジャーキーを三本あげるにゃ! わかったかにゃ!?」

「にゃー!」

 野良猫たちは、一斉に返事をする。ミャアは満足そうに頷いた。

「そうかにゃ……ミャアは嬉しいにゃ。では、お前たち! 行ってこいにゃ!」

「にゃー!」

 野良猫たちは、一声鳴くと同時に散って行った。

 そして……ミャアはうんうんと一人で頷きながら、庭で腕を組み仁王立ちしている……ザックはふと、これで良かったのだろうか? 野良猫の群れに任せてしまって良いのだろうか? という思いに襲われたが、面倒くさいので放っておくことにした。多分、大丈夫だろう。都合が悪くなったら、とりあえず暴れて責任の所在をうやむやにしてしまえばいい。


「ただいまーなのです!」

 その時、元気な声とともにシェーラが帰って来た。続いて、ロドリゲス兄弟も……さらにその後から、パグ犬のデュークが尻尾を振りながら入って来た。







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