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兄弟券バイク、ロスしたー そのに

「ザックさん大変だー」

「大変だー」

「大変ですー!」

 三人は叫びながら走り、ザックの前まで来ると立ち止まった。ロドリゲス兄弟は汗だくである。兄のスカイ・ロドリゲスはその汗だくの体でシェーラを背負っている。しかし、シェーラは気にしていないようだ。

「何事だ兄弟……それにシェーラまで」

 ザックが尋ねると、シェーラは兄の背中からぴょん、と降り立った。

「大変なのです! ええと……ハックが知らないおじさんに、いきなり殴られたのです!」

「……知るか。下らん」

 ザックは冷たく言い放った。ハックなる少年がどうなろうが、自分の知ったことではないのだ。そもそも、この街には子供を殴るおっさんは大勢いる。悪さをした子供が殴られるなど、日常茶飯事である。

 しかし、ザックの言葉を聞いたシェーラの表情は変わった……あたかも「籠城するなら金をくれ」と叫んだ伝説の子役のごとき形相でザックに抗議する。

「ザックさん酷いのです! ハックは宿無しですが、凄くいい子なのです! 殴られるようなことをする子ではないのです!」

「知るか! だいたい、私は慈善事業をしているのではない! それとも、お前に私を雇えるだけの金を用意できるのか!?」

 ザックに怒鳴られ、シェーラの表情がさらに変わっていく。顔を真っ赤にし、怒りでぷくーっと頬をふくらませながら、シェーラは怒鳴りつけた。

「もういいのです! ザックさんのようなドケチの腰抜け野郎には頼まないのです! 兄弟さん、行くのです!」

 シェーラは漫画ならばぷんぷん! という擬音の出ているであろう表情を浮かべ、大股で憤然と去って行く。慌てて後を追うロドリゲス兄弟。

 やがて、三人の姿は見えなくなっていった……。


「なあザック。お前さん、今の態度は……ここいらじゃあ二番目だ。あ、ケツから数えて、の話だが」

 不意に訳知り顔でささやくケーン。ザックは憮然とした表情でケーンを見る。

「じゃあ一番は誰だ……いや、そんなことはどうでもいい。今の態度の何が悪いと言うのだ、お前は?」

「あの娘の父親代わりとしちゃあ、あんまり誉められた態度じゃないぜ。それにだ……」

 そう言うと、ケーンは辺りを見渡した。盗み聞きする者がいないか確認する。

「いいかザック……そのハックとかいう小僧を殴ったのは、今話したデストロイの戦闘員かもしれないんだよ」

「デストロイだと? 馬鹿馬鹿しい! 悪の秘密結社が宿無しの子供を殴ってどうしようというのだ?」

「それが……やりかねないんだよな」

 ケーンは大げさな表情で首を振ると、声をひそめて語り出した。


 デストロイとは……魔王ゴルゴンゾーラを崇める悪の秘密結社である。彼らの施設に造られた地下神殿には、ゴルゴンゾーラ像なる奇怪な形をした魔像が設置されているのだ。

 このゴルゴンゾーラ像、子供の泣き声を聞かせると……口からダイナストーンなる宝石を吐き出すらしいのだ。ダイナストーンはとても珍しく、希少価値のある宝石なのだ。高級な物になると、一粒で小さな国が買えてしまうらしい。小さな国の具体的な値段が、果たして幾らかなのかは知らないが……。


「では、そのデストロイというアホの集団は、ダイナストーンなる宝石欲しさに子供を泣かしているというわけか……だったら組織の総力を結集させて、巨大な託児所でも造ればよいだろうが。泣く子供には事欠かないだろうに……何故、わざわざ宿無しハックをぶん殴ったりするのだ?」

 ザックが呆れた表情で尋ねると、ケーンは気障ったらしい大げさな動きで肩をすくめる。

「ああ、それな……よくわからんのだが、お約束みたいなんだよ」

「お約束?」

「そう、何というか……トクサツ大魔神の決めたことと言うか……シチョウシャ神の大半が子供だから、という噂だ」

「何だそれは!? 意味がわからん!」

 そう言いながらも、ザックは不安になった。そうなると、今度はシェーラが殴られるのではないだろうか……ザックはふと、シェーラが見知らぬ男たちに殴られ、号泣している場面を想像した。奇怪な戦闘員風の男たちに周りを囲まれ、泣いているシェーラ。それを魔具で録音している戦闘員たち……さらに、地下の神殿でその泣き声に反応し、宝石を吐き出す魔王ゴルゴンゾーラの像……想像すると、かなり不快な光景だ。もっともザックは、魔王ゴルゴンゾーラがどんな形をしているのかは知らないが。

 いずれにしても、シェーラが殴られるかもしれない……というのならば、見過ごすことは出来ない。ロドリゲス兄弟やミャアが付いているから大丈夫、だとは思うが……万が一、ということもある。


「やれやれ仕方ない……まあ、私も最近は暇だ。調べてみるとするか。場合によっては、そのデストロイとやらをぶっ潰してやろうではないか」






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