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侍ウォーリアーズ バンバとジュリエット その10

「あーあ……やりてえなあ。ボール遊び超やりてえなあー」

「……知らん。おとなしく座ってろ」

「あーちくしょお……ボール遊びしてえなあボール遊びをよお」

「ええい、しつこいぞ貴様は! これからお前に会いに客人が来るんだ! その客人との話し合いが終わったら好きにして構わん! 一人で好きなだけ球投げしてろ!」

 たまりかねて、怒鳴りつけるザック。バンバは先ほどからずっと「ボール遊びしてえなあ」と言い続けているのだ……どうやら、ミャアとシェーラのボール遊びが、バンバの心の中の何かを刺激したらしい。


「だからあ、一人じゃつまらねえんだよ! お前ら、ベースボール知ってるかベースボール!」

 駄々をこねる子供のようにわめきちらすバンバ……ザックはブチ切れそうになりながらも、どうにかこらえている……すると――

「ザックさん……仕方ないから、ボール遊びさせてあげたらどうです? お客様が来たら、私が知らせに行きますから……どうせ、ミャアとシェーラは近所の空き地で遊んでるんでしょうし」

 ヒロコが横から口を挟んだ。そのとたん、バンバの目の色が変わる。満面の笑みを浮かべて、素早く立ち上がった。

「おお! それいい! そうしようそうしよう!」

 騒ぎ出すバンバ……すると、今度はジャンが口を開いた。

「ザック……こりゃ言っても聞かないタイプだぜ。仕方ないから、ジュリエットが来るまでボール遊びさせとこうや……」




「にゃにゃ! シェーラ、投げるにゃ!」

「はいなのです!」

 空き地で楽しそうにキャッチボールをする、シェーラとミャア。二人とも、革の鍋つかみのようなグローブを両手にはめている。そしてキャッキャッ言いながらボールを投げ合っているのだ……。

 その横では、パグ犬のデュークがうろちょろしている。どちらかがボールをキャッチし損ねると、犬の本能を剥き出しにして、恐ろしいスピードで追いかけ拾いあげる。そして二人の所に運ぶのだ。

 さらにその横では、ロドリゲス兄弟が二人でレスリングをしていた。分厚い筋肉に覆われた上半身裸の大男二人が取っ組み合い、バックを取り合う姿はかなり異様だ。通行人はその光景から目を逸らし、足早に通り過ぎる。しかし、熱い視線を向ける男たちもいたが……。


 そんな、のどかでありながら混沌としているという奇妙な空間に乱入して行ったのは、他ならぬバンバ・バンダムであった。

「おいお前ら! ベースボールやろうぜ! ベースボール知ってんだろ!?」

「にゃんとお! またお前かにゃ! 何しに来たんだにゃ!」

 バンバを睨みつけるミャア。だが、バンバには怯む気配がない。

「まあまあ、そう言うなよ猫娘! 一緒にベースボールやろうぜ!」

「べ、べえすぼおる!? そんなの知らないにゃ!? シェーラは知ってるかにゃ?」

 ミャアは振り向き、シェーラに尋ねる。だが、シェーラもすまなそうに首を振った。

「べえすぼおる、ですか……知らないのです……」

 申し訳なさそうな顔で答えるシェーラ。すると、バンバのテンションが一気に上がり――

「何だお前ら! ベースボール知らんのか! じゃあ、俺が教えてやるよ!」

 そう言うと、バンバは太く長い角材を拾い上げる。そして、ぶんぶん振り回し始めた。

「よーし猫娘、投げてこいよ!」

「にゃにゃ!? 何ワケわからんこと言ってるにゃ! バカは相手にしてられないにゃ。シェーラ、あっち行こうにゃ――」

「おいおい猫娘! 本当は打たれるのが怖いんじゃないか!? お前はキャットウーマンではなく、本当はチキンガールなんじゃないのかい?」

 呆れたような表情で挑発するバンバ……すると、ミャアの表情が一変する。

「にゃ、にゃんとお!? ミャアをバカにしているのかにゃ!? じゃあ投げてやるにゃ!」

 ミャアは舐められたと感じたらしい。烈火のごとく怒り、そしてボールを力任せにブン投げた。

 バンバの顔面めがけて。

「う、うおおお!?」

 バンバが叫んだ直後、凄まじいスピードで投げられたボールが彼の顔面に炸裂――

 バンバは気絶した。




 しばらくして、バンバが意識を取り戻した。

「う、うう痛え……おい猫娘、今のはデッドボールじゃねえか――」

「バ、バンバ様!? 気が付いたのじゃな! 大丈夫なのじゃろうな!?」

 頭上から聞こえてきた、けたたましい声……バンバが上を見ると、ポワポワヘアーの若く可愛らしい女がこちらを見ている。

 しかも、バンバの頭はその女の膝の上に乗せられているのだ……バンバは慌てた。

「あ、ああ! だ、大丈夫だ! 誰か知らねえが、すまねえな! 今すぐ起きるから!」

「ダメなのじゃ! 頭を打ったのだから、しばらくは安静にしてないといけないのじゃ!」

 女の剣幕にバンバはたじたじとなり、頬を紅く染めながら膝の上に頭を乗せていた。


 その様子を、遠くから見守る男たちがいた。

「いやあ、青春ていいもんだなあザック! 若さっていったい何だ!? それは――」

「わかったから黙れ……怒られるぞ」

 ザックとジャンは、少し離れた場所から二人を見ていた。バンバはジュリエットに膝枕された状態で、何やら話しかけているようだ……。

「まあ、あとは二人次第だな。私に出来るのはここまでだ」






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