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侍ウォーリアーズ バンバとジュリエット その9

 次の日。


「ヘイヘイヘイ! いったい何の用なんだ! あんたらに呼び出されたせいで、マッコウクジラを仕留め損ねちまったじゃねえか! 俺は威張った奴は嫌いなんだぜ!」

 ザック邸のリビングにてソファーに座り、不機嫌そうな表情で吠えまくっている、金髪の鼻がでかい白人……この男こそ、バンバ・バンダムである。身長はさほど高くないが、鍛え抜かれた体であることは、服の上からでも見てとれる。被っている黒い帽子は、室内でも取らないらしい。額の部分には、何やら象形文字のような奇妙な紋章が付いている……。


「まあまあ、そう言うなよ……これはお前にとっても悪い話じゃないから」

 そして、いきり立っているバンバの隣に座っているのは……魔法刑事のジャン・ギャバンだ。ジャンはテーブルの上に出されたお菓子をもぐもぐ食べながら、ニコニコ笑っている。

 そして、口の中に菓子を詰め込んだ状態でジャンをなだめている……。


「だいたい、何なんだよ事件って! わざわざ俺を呼び戻すようなことなのか!? 俺はな、ダイヤモンドをつんざけるんだぞ!」

 再び吠えるバンバ……その言葉を聞き、ザックは首をかしげた。

「ダイヤモンドをつんざける、だと……どういう意味だ?」

 ザックが尋ねると、バンバは胸を張り――

「んな事もわかんねえのか……フィーリングだよ、フィーリング! ついでに、白い稲妻おっぱしるんだぜ! 試してみるかいザック・シモンズ! 聞いた話じゃ、お前ずいぶんと強いらしいじゃねえか!」

 言うと同時に、立ち上がるバンバ。

 と同時に身構える……しかし、ジャンが立ち上がった。そして二人の間に割って入る。

「おいおい、やめないか……いい加減にしないと逮捕しちまうぞ、バンバ」

「逮捕だあ! 上等じゃねえか――」

「止めないか、バンバ……私は貴様の直属の主人であるヒューマンガスと懇意にしているのだぞ。私に刃向かうということは、ヒューマンガスに刃向かうも同じことなのだぞ……わかっているのか?」

 ザックがそう言うと、バンバは不満そうな顔をしながらも引き下がった。ソファーに座り、体のあちこちを動かす。恐ろしく落ち着きのない男である。

 ザックは思わずため息をついた。どうやら、このバンバという男は……見た目の通り、かなりの愚か者であるらしい。ヒューマンガス率いるウォーリアーズによくいる、脳が筋肉で出来ているタイプの男なのだろう。

 こんな男のどんな部分にジュリエットは惹きつけられたのだろうか……ああいった箱入り娘の考えることは、ザックには理解不能である。いや……お嬢様にありがちな、ワイルドな男に憧れてしまう習性なのかもしれない。

 そして……ザックはこれからしなくてはならないことについて考えた。あと一時間もしたら、ジュリエットがやって来る。脳筋のケンカ屋と箱入りバカ娘の間を取り持たねばならないのだ……これは、事前の想像を遥かに超える難しさである。ザックにとっては、小国を武力で制圧する方がよっぽど簡単だ。


「シェーラ! 外でボール遊びしようにゃ!」

 いきなり聞こえてきた能天気な声……ザックがそちらを向くと、ミャアがボールを片手にニコニコしながら、玄関に向かい歩いている。客が来るから部屋でおとなしくしていろ、と言い聞かせておいたのだが……どうやら退屈してしまったらしい。

「ミャアさん! 部屋でおとなしくしていろと言われたのです! ザックさんに怒られるのです!」

 慌てた表情で追いかけて行くのはシェーラだ……しかし、ミャアは止まらない。むしろ、追いすがって来たシェーラの手を握りしめた。そして強引に連れて行く。

「ミ、ミャアさん! ザックさんに怒られるのです――」

「構わないよ。外で遊んで来い」

 ザックは口を挟んだ。むしろ、これから起きるであろう面倒事を考えると……この二人には、外で遊んでいてもらった方が好都合かもしれない。

 だが、その考えは甘かった……。


「なにい! ボール遊びだとお!? ボール遊びは俺に任せろ! 俺はな、ボールを投げさせたらダゴンでも一番だ!」


 そう言いながら、バンバは勢いよく立ち上がった……すると、ニコニコしていたミャアの表情が一気に険しくなる。

「にゃ、にゃんとお! お前なんか知らないにゃ! お呼びでないにゃ!」

 怒鳴りつけるミャア。だが、バンバは怯まない。

「そう言うなよ……俺のボールの唸りは凄いぜ。地獄が見えるかもしれねえぞ――」

「何わけわからん事言ってるにゃ!」

 ミャアは怒鳴りつけ、猫パンチの構えを見せる。慌てて止めに入ろうとする、ザックとジャン……。

 だが、その前にシェーラが動いた。素早くミャアの腕を掴む――

「ミャアさん! 駄目なのです! ケンカはいけないのです! 二人で仲良く遊ぶのです!」

 今にも泣きそうな顔で、懇願するシェーラ……すると、ミャアは振り上げた手を引っ込めた。その表情も、優しいものに変わる。

「わ、わかったにゃ……シェーラ! 庭で一緒にボール投げしようにゃ!」

 シェーラを伴い、外に出ていったミャア。その後を、パグ犬のデュークが追いかけていく。さらに、騒ぎを聞きつけたロドリゲス兄弟もまた、嬉しそうに付いて行った。

 そしてリビングには……悲しげな表情のバンバと、困惑した様子のザックと菓子を食べるジャンの三人が残された。






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