侍ウォーリアーズ バンバとジュリエット 3
ウォーリアーズのアジトを出た後、ザックは立ち止まり思案した。バンバがいないのでは仕方あるまい。とりあえずは、ジュリエットという娘に会ってみるとしよう。何と言っても、ジュリエットはシアトル騎士団のリーダーであるラウル将軍の一人娘である。顔を合わせておいて損はあるまい。ザックは一人、歩き始めた。
「よお、ザック! お前、何やってんだ?」
通りを歩いていたザックであるが、不意に声をかけられて立ち止まった。振り向くと……。
そこに立っていたのは、魔法刑事のジャン・ギャバンだった。相変わらず、やる気のなさそうな力の抜けた表情で歩いている。だが、甘く見てはいけない。このジャンは、ザックも一目置いているほどの実力者なのだ。
ザックは立ち止まり、言葉を返そうとした時……ふと思いついた。
魔法刑事であるジャンに、情報の提供を求めれば良いではないか。
「何だそりゃ……バンバ・バンダム? それにジュリエット? そりゃまた面倒な奴らだな……」
ジャンは大げさに首を振り、渋い表情をする……その様子を見て、ザックは首をかしげた。
「ところでジャン、お前に一つ聞きたい。ウォーリアーズとシアトル騎士団だが……奴らは何故に仲が悪いのだ?」
「ああ、それな。話すと長くなるんだが……要は、性格の不一致だ」
「何だそれは……馬鹿馬鹿しい」
「いや、それが現実なんだよ……例えるなら、奴らは水と油だ。ヒューマンガスはキノコで、ラウル将軍はタケノコ。ヒューマンガスはジャイアントで、ラウル将軍はタイガー。ヒューマンガスはブルース・リーで、ラウル将軍はジャッキー・チェン――」
「意味がわからん!」
「まあ、とにかくだ……奴らの仲の悪さは、昨日今日に作られたものじゃない。下手に間に入ると、ろくな事にならないぞ」
言いながら、訳知り顔で頷くジャン。そのすっとぼけた表情を見て、ザックはだんだんアホらしくなってきた。
「そうか……わかった。あと……もう一つ聞きたいことがある。ラウル将軍の娘のジュリエットだが……どんな奴だ?」
「ジュリエット? うーん……あの娘を一言で言うとな、わがままジュリエットだ」
「……前から言おうと思っていたのだがな、お前の言う事は理解不能だ」
そしてザックは、ラウル将軍の屋敷を訪ねた。屋敷は悪趣味な調度品で飾りたてられており、どこぞのB級映画の悪役の家そのものである。ザックはちょっと嫌な気分になった。
さらに――
「じい、この野獣のような顔の男は誰なのじゃ?」
ギャリソンの案内で、ジュリエットの部屋を訪れたザック――ラウル将軍が留守なのは調査済みである――であったが、ジュリエットから投げつけられた言葉はあまりにも無礼なものだった……そばにいるギャリソンの顔がひきつる。
「お、お嬢様……こちらは――」
「私はザック……ザック・シモンズだ」
無表情で答えるザック。すると、ジュリエットはしかめ面をした。
「知らんわ……そのようなバカ者の名前など。それにしても……何なのじゃ、お前は。服装もメチャメチャなら顔もメチャメチャ。わらわはな、お前に用などないのじゃ」
吐き捨てるように言って、プイと顔を背けるジュリエット。ザックの顔は無表情のままだった。しかし、彼の指先が白く発光し始める……。
そしてザックは指先をジュリエットに向け――
「お待ちください! お待ちくださいザック様!」
ギャリソンが慌てふためき、止めに入る。ザックは冷酷な目でギャリソン見つめた。
「私はな、こんな不快な物言いをされて黙っていられるような人格者ではない。この仕事は降りる。邪魔したな」
ザックは向きを変え、立ち去りかけたが――
「そうだ……ギャリソン、お前に一応は報告しておこう。バンバ・バンダムは海へ鯨を捕りに行った。二、三日は戻らん――」
「ち、ちょっと待て! お、お前はバンバ様を知っておるのか!」
ジュリエットの態度が一変した。彼女は血相を変え、ザックの腕を掴む。
「お前! わらわの部屋に来るのじゃ! じい、何をしておる! 早く、お茶をお出しするのじゃ!」




