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アーリア  作者: 猿蟹月仙
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第13話『あなただあれ?』

 土煙を上げてもんどりうった猪の巨体は、二転三転してようやく止まった。

 一瞬の沈黙は認識に必要な時間。

 ただ、大地は風をまとい、唸りをあげた。


「や・・・やったぜ・・・」

 天をあおぐ様に硬直した四肢。それがパタリと下りた。

「やったぜぇーっ!!」

「ひゃっはぁっ!!」

「うおおおおおおおっ!!!」

「ざまぁっ!!」

「お、俺の矢、俺の矢、当たった・・・」

 叫びながら弾ける様に駈けだした小人達は、小山の様に大きな獲物に押し寄せた。

 まだ、びくびくと最後の生を匂わす獣の野生に、先陣切って駆け込んだ者が慌てて立ち止まるが、後ろから飛び込んで来る肉弾に突き飛ばされ、血まみれの肉塊に押し付けられる。その上を、仲間を踏み台によじ登り、高らかに勝どきを上げた。


 ぶもおおおおおおおっ!!!


 木っ端の如く吹っ飛ぶ小人達。

 最初の一声をあげようかと同時に、全身を激しく揺さぶって猪が立ち上がった。

 が、その頭に、正確無比の連射をかます小人がいた。


 右の眼球に至近距離から3発。

 しなやかなその手さばきは、ほんの一呼吸のそれであった。


「ふう・・・」

 軽く息を漏らし、茶褐色の額を伝い落ちる汗をぬぐう。

 若い丘小人のホークは、まだ荒い呼吸に肩を揺らしながら、ぬぐった手の甲についた返り血を舐め、つばを吐いた。

 度肝を抜かれた小人達が沈黙する中、険しい表情のホークの肩をぽんと叩く者がいた。

「ご苦労・・・」

「ボス・・・」

 パイプと酒で焼けた渋い声。ボスと呼ばれた壮年の小人は、肩にクロスボウを担ぎ、ゆっくりと猪に歩み寄り、その頭を蹴り飛ばした。

 ぐったりとした反応に、ようやく小人達は呪縛を解かれ、始めはおそるおそる、そして熱狂的に叫び、跳ね、踊り回って歓喜のほとばしりに身を任せた。


 気が付いたら、どのタイミングか自分でも忘れてしまったが、アーリアもその熱気の渦に飛び込んで、絶叫し、手に手を取り合って踊りまくった。

 そして、その熱気が徐々に冷めた頃には、まったく見知らぬ小人達の真っ只中に、ぽつんと一人。

「え・・・え~っと・・・」

 手をつないでいた相手からも変な目で見られ、そっと手を引っ込めた。


「あんた・・・誰?」


 さあ、誰でしょう?


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