死刑宣告
君が俺に告げた言葉。
頬を赤く染めた君。
いつもは俺たちに優しい音楽室だって…
その全てが、今の俺にとっては死刑宣告同然だ。
死刑宣告 side定
嘘だろ…?
その言葉を理解する為には、永遠に思える程の時間を必要とするから…。
「へぇ。」
だから、曖昧で、安っぽい、ありきたりな言葉しか出て来なかったんだ。
「あれ?定君ならもっと驚くと思ったのに…。私だって、自分の事なのにビックリしちゃったんだから。」
はにかみながら言う雪。
そんな彼女も…ただ愛しい。
『実は私ね…実君と付き合う事になったんだ。』
君が照れながら俺に告げた死刑宣告。
大げさなんかじゃなく、本当に『死ね』と言われたかのような、胸を貫く痛み。
まだ、自分の気持ちを…好きだと伝えてさえもいないのに。
「いや…あの…ビックリしすぎて。そっか…。」
この気持ちを伝えたらどうなるだろうか?
雪は…どんな顔をするだろう…?
「まさかOKだなんて思ってもみなかったけど…勇気だして伝えて本当に良かった。」
いつもより饒舌な雪。
この嬉しそうな表情を一瞬だけ憎らしく思う。
今ならこの表情を…困った顔にだって、泣き顔にだって出来るのに、これ以上幸せな表情を作る方法を俺は知らない。
「雪…。あのさ…俺…俺さ…。」
「ん?」
俺にそんな事、出来るはずもないけど…。
「俺、そろそろ部活行くわ。」
「あっ、うん。なんか…ごめんね。私、自分の事ばっかり話しちゃって。」
「別に…。」
どうせ俺はヘタレで、女子の間で密かに行われている投票では『いい人止まり部門』でダントツの1番だ。
「また、音楽室に遊びに来てね。」
「おぅ。」
「…定…君?」
名前を呼ばれた弾みで、つい『好きだ』と言う言葉が出そうになる。
まだ伝えていないのに…。
他の奴のものになるなんて…最悪だ。
「あのさ…おめでとう…だな。仲良くやれよ。」
あぁ…本当に最悪だ。
笑顔の雪に背を向けて、廊下に飛び出し、勢いで階段を駆け降りた。
「はぁ…。」
2階程降りた階段の踊り場で足を止めた。
諦める準備なんて…まだ出来ていないのに…。
もう、音楽室は見えないのに、俺はもと来た方を振り返った。
君の事になると、好きだと伝える勇気も、
きっぱり諦める潔さも無くなって…。
今は臆病な自分が情けないだけ。もう、伝える事は無いだろうけど…
ずっと、雪の事が大好きだったんだ。




