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love storys  作者: 皐月 誘
9/9

死刑宣告

君が俺に告げた言葉。

頬を赤く染めた君。

いつもは俺たちに優しい音楽室だって…

その全てが、今の俺にとっては死刑宣告同然だ。



死刑宣告 side定



嘘だろ…?

その言葉を理解する為には、永遠に思える程の時間を必要とするから…。

「へぇ。」

だから、曖昧で、安っぽい、ありきたりな言葉しか出て来なかったんだ。

「あれ?定君ならもっと驚くと思ったのに…。私だって、自分の事なのにビックリしちゃったんだから。」

はにかみながら言う雪。

そんな彼女も…ただ愛しい。



『実は私ね…実君と付き合う事になったんだ。』

君が照れながら俺に告げた死刑宣告。

大げさなんかじゃなく、本当に『死ね』と言われたかのような、胸を貫く痛み。

まだ、自分の気持ちを…好きだと伝えてさえもいないのに。



「いや…あの…ビックリしすぎて。そっか…。」

この気持ちを伝えたらどうなるだろうか?

雪は…どんな顔をするだろう…?

「まさかOKだなんて思ってもみなかったけど…勇気だして伝えて本当に良かった。」

いつもより饒舌な雪。

この嬉しそうな表情を一瞬だけ憎らしく思う。

今ならこの表情を…困った顔にだって、泣き顔にだって出来るのに、これ以上幸せな表情を作る方法を俺は知らない。

「雪…。あのさ…俺…俺さ…。」

「ん?」

俺にそんな事、出来るはずもないけど…。

「俺、そろそろ部活行くわ。」

「あっ、うん。なんか…ごめんね。私、自分の事ばっかり話しちゃって。」

「別に…。」

どうせ俺はヘタレで、女子の間で密かに行われている投票では『いい人止まり部門』でダントツの1番だ。

「また、音楽室に遊びに来てね。」

「おぅ。」

「…定…君?」

名前を呼ばれた弾みで、つい『好きだ』と言う言葉が出そうになる。

まだ伝えていないのに…。

他の奴のものになるなんて…最悪だ。

「あのさ…おめでとう…だな。仲良くやれよ。」

あぁ…本当に最悪だ。

笑顔の雪に背を向けて、廊下に飛び出し、勢いで階段を駆け降りた。

「はぁ…。」

2階程降りた階段の踊り場で足を止めた。

諦める準備なんて…まだ出来ていないのに…。

もう、音楽室は見えないのに、俺はもと来た方を振り返った。



君の事になると、好きだと伝える勇気も、

きっぱり諦める潔さも無くなって…。

今は臆病な自分が情けないだけ。もう、伝える事は無いだろうけど…

ずっと、雪の事が大好きだったんだ。

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