夏の日のこと
今回の主役は冬岡伊織。
あとは朝穂定が登場します。
時期的には1年生の8月のお話です。
意地っ張りって、損する事多いですよね…。
私から言い出した事なのに。
私から言い出した強がりなのに。
夏の日のこと side伊織
あ…暑い。
夏休みも中盤。
高校生になったって言うのに、相変わらず部活に明け暮れる私。
にしても…暑すぎる。
「先輩…、ちょっと水飲んで来ます。」
休憩までは時間があるけど、こっちは生命がかかるってくらいに喉が渇いている。
フラフラと体育館を抜け、炎天下の日差しを横切って浄水器のもとへ向かう。
なんで、この学校は飲み水が一ヶ所にしか設置されてないんだろう…。
こんな暑い日は毎日そんなことを考えてる気がする。
ふと、眩しいのを我慢して視線を上げる。
そこにはユニフォームを来た少年が一人居るだけで…。
よかったぁ。他の部活の休憩時間とかぶってなくて…と思ったのはたったの一瞬で、
「あっ…伊織…。」
そう呟く気まずそうな少年―朝穂定を見た瞬間に喉の乾きなど忘れた。
彼は同じクラスで、1年にしてサッカー部のレギュラーで…昔、付き合っていた人だった。
昔と言うのは、中学時代の事で、まさか彼と同じ高校になることも、同じクラスになることも想像していなかった。
長い沈黙…。
「サッカー部も毎日大変そうだね。どうなの、調子は?」
私が話し出さないと、ヘタレな定が話せるわけない。なんだか…相変わらずだな。
「うん。まぁまぁだよ。夏の大会もなんとか勝ち残ってるし。そっちは?」
「うん。普通かな?」
なるべく自然に。
「普通って何だよ。お前って相変わらずだな。」
定がやっと笑った。
人見知りな彼の笑顔を知っている人は私を入れて何人いるのだろう?
「朝穂こそ…相変わらずだよ。相変わらず、ヘタレ。」
コレを言うと定がムキになる事を私は良く知っていた。
しかし、定は意地悪く笑う私を見据えて言ったのだった。
「あの時は悪かったよ。でも…別に名字で呼ばなくてもいいだろ?」
今更…そんな事…。
「何言ってるの?私がフッたんだよ。それに名字で呼ぶのはただのケジメ。私…今は泉君が好きだし。」
半分本当。半分は…わからない。
「泉…か。そっか、あいついい奴だしな。」
少しショックそうな定に、私は変な心境を感じている…。
ヤキモチを妬いて欲しい…?
そんなハズない。
私は確かに種月泉君が好きなのだから。
「そういう事。だから朝穂も私の事、冬岡って呼ばないとダメだよ。」
「でも伊織…。」
「ふ・ゆ・お・かだってば。」
定の反論にわざと重ねる。
今なら自分の気持ちがわかる。
私は否定して欲しいんだ。
私がどれだけワガママを言っても定には
「伊織」って呼んで欲しい。
なんで私は、こんなにも素直になれないだろう…。
「わかったよ。冬岡って呼べばいいんだろ?じゃあ、俺そろそろ戻るから。部活頑張れよ。」
定が私の本当の気持ちに気付けるような器用な奴じゃないのは知っていたのに。
「じゃあね…定。」
だいぶ遠く、小さくなった背中に言う。
朝穂の背中は夏の陽炎と、私の涙で滲んでいる。
いつならやり直せただろうか?
いつなら素直になれただろうか?
今はもうただの後悔。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
なんだか恋愛色が強い話が続きますが、友情の話も書きますよ!
次は…まだまともに出てきていない実の話にしたいです。
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