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love storys  作者: 皐月 誘
3/9

階段

今回の主役は朝穂定アサホ サダカです。

舞台は音楽室。

サッカーでケガをした定と、雪が将来について語ります。

階段を登る事は、しんどい。

階段を降る事は、むなしい。

じゃあ、登りもせず、降りもせずにその場に座りこんでしまうのは…?



階段 side定



「足、ケガしたんだって?」

山野雪がケースからフルートを取り出しながらたずねた。

「あぁ。治るまでクラブも出れないんだよ。あっ、ここに居ると練習の邪魔か?」

音楽室の机に突っ伏していた俺はゆっくりと身体を起こす。その時に振り返った雪と目が会って、自分でも真っ赤になるのがわかる。

「邪魔じゃないよ。人に聞いて貰うのっていい刺激になるし…定君とは約束もしたし。」

約束をしたのは、初めて会った時。

俺の一目惚れだった。でも、まだこの気持ちを伝える事なんて出来ない。


雪の奏でる音楽は、雪そのものの様に優しく優しく流れる。

「雪は…プロになるのか?」

休憩に窓を開ける雪の背中に向かって問いかける。

雪のフルートが上手かどうかは、音楽に真剣に取り組んだ事の無い俺にはわからない。けど、俺にとって雪の奏でる音楽ほど心安らぐものも無かった。

「プロなんて…。でも将来大人になってもフルートに関わっていたいと思う。それが仕事になったら…幸せだなぁ。」

謙虚な、けれどもしっかりとした意思表示。

雪らしい。雪と言う女の子について、そんなに詳しくは知らないが…それでも、雪はこういう子なのだろうと、愛しいと思う。

「なれるよ!雪ならなれると思う。俺は音楽は詳しくないけど…雪の音楽は好きだよ。」

こんなセリフを言うにも真っ赤になってしまう。

言われた雪は、クスクスと小さく笑った。

「ありがとう。そんなこと言われたの初めて。ところで定君は?」

「…え?」

予想外の質問だった。

「クラスの子が定君は1年なのにサッカー部のレギュラーなんだよって騒いでたよ。」

「プロには…なりたい。でも、俺くらいの奴はいっぱいいるし。上に行くほどさ…俺は大したことないって思い知らさるみたいで…。」

実際に今回のケガだって、伸び悩む自分の成績に焦ってのオーバートレーニングが原因だ。

「階段を登り続けるのってしんどいよね。でも降るのは、今までの練習が無駄になるみたいでむなしいし…。でも、その場に立ち止まるのはカッコ悪いと思わない?」

雪は窓の外を見ながら言う。その視線の先ではサッカー部が練習をしていた。

「カッコ悪い…かぁ。」

「それにね、見てみたいでしょ?登りきったら、そこに何があるのか。高ければ高い程、辛ければ辛い程、きっとキレイな景色が広がってるハズだよ。」

そう言った振り返った雪の笑顔が胸に響く。

「俺も…見てみたい。だって、まだまだ頑張れるしさ。」

俺が言い終わるのを聞いて、雪は再びフルートを奏で始めた。

その音色は、思わず涙が出そうなほど優しく、

「ありがとう」

と言う俺の呟きをゆっくりと溶かしていく。

彼女はいつから気付いていたのだろう?

俺が悩んでいた事を。

彼女の音楽に答えを求めていた事を。



階段を登る事は、しんどい。

階段を降る事は、むなしい。

階段を登りも降りもせずに立ち止まる事は、カッコ悪い。

さぁ、休憩を終えたらまた歩きだそう。

1歩づつでいいから、ただ高みを目指して。

シリーズの2作目でした。

定は真っ直ぐな少年で、雪は定よりは大人な女の子…に書けてたら嬉しいです。

感想・リクエストなどなど大募集なのでお願いいたします。

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