フェンスの向こう
今回のお話は永峰椎歌sideです。
種月泉と秋山実が出て来ます。
1年生9月のお話です。
屋上のフェンスの向こうにいるあんたは、なんだかチャラチャラしてて、すごく腹が立ったの。
フェンスの向こう side椎歌
「なぁ、そろそろ帰ろうよ」
種月泉にそう声をかけられて、私は足を止めた。
泉は同じクラブで、私の走り方をキレイと誉めてくれた人。
「もう少しだけ。」
と、短く返すと
「わかった。早くストップウォッチ貸せよ。タイムとるんだろ?」
泉は部室へ向かうのを止めた。
頼んでもないのにいつも待っていてくれる…それが嫌味じゃなく出来る人。
走りながら、考えた。 なんで…今日はこんなにイライラするんだろ?
そして、あるシーンを思い出す。
同じクラスの秋山実。彼はいつも私をデートに誘ってくる。
私だけじゃない。クラス…いや、学年の女の子みんなじゃないかと思う。
そんな実が今日、昼休みに屋上で数人の女の子に囲まれて、嬉しそうにしていた。
引き返そうとした私を追い掛けて、実は言った。
「妬いてんの?でも、俺は本気で椎歌ちゃんだけが好きだから。」
妬いてる訳じゃない。あんないい加減なやつは恋愛対象でもない…。
「椎歌。もぅ帰ろう。そんなんじゃタイムも伸びないし。」
泉の言葉に我にかえる。
「うん。ごめん…。」
なんで実の為に私がイライラしないといけないのか、なんだかバカらしくなってきた。
先を歩く泉の後を追う私は、人工的な明かりに気づき、再び足を止めた。
「あれ?ねぇ、泉あそこって…」
「あぁ、バスケコートだろ?まだ誰か練習してるんだな。」
それがどうかした?とでも付け足しそうな物言いの泉は足を止める事も無く、部室へ向かう。
私は反対にその場から動けなくなる。それは純粋にライトと月明かりのスポットライトを浴びて、必死に練習してる実の姿が素敵だと思ったから。
いつもは、俺は練習しなくても上手いからいいんだよ。なんて言ってるくせに…。
あんなに必死に練習してるなんて反則だよ。少し笑えた。
「椎歌?」
そんな私を泉が不思議そうに振り返る。
「なんでもない。」
すぐに泉に並んで歩きだすと、さっきまで実を照らしてた月が、私達を照らしている気がした。
屋上のフェンスの向こうにいるあんたは、なんだか腹が立つけど、バスケコートのフェンスの向こうのあんたはなかなかカッコイイよ。
伝えてもしょうがないから、私の中に閉まっておくけどね。
【フェンスの向こう】を読んで下さってありがとうございます。
今回は椎歌が主人公でした。
次回は朝穂定の話を書く予定です。
感想やお題をくれると、泣いて喜ぶのでお願いします。




