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自宅警備兵  作者: SIN
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LEVEL0

 いつもならオバサン型戦闘機を注意しながら開けていた玄関の扉を、俺は外の確認もせずに開けていた。

 回避用のヘッドフォンをしているからじゃなく、そこには重大な理由が存在している。

 いつもなら近所のスーパーまで足早に通り過ぎていた道すら、今日は悠々と歩ける程に心は憔悴しきり、今日までの日々を思い返していた。

 不意に込み上げてきた熱い想いに立ち止まり、眩し過ぎる空を見上げてやり過ごし、ヘッドフォンのボリュームを少しだけ上げた。

 いつも聞いていたお気に入り曲、少しでも気分ガ晴れればと言う期待をもって聞いていたのだが、今だけはただの雑音に過ぎず止むを得ず止めた。

 ゆっくりと歩き出しながら、また今までの生活を想う。

 セールス電話の無視の仕方、テレビの受信料催促の断り方、変な宗教勧誘から逃れる術。初めからこうしよう、あぁしよう、こうするべきだ、などの攻略法なんか存在せず、試行錯誤しながら守ってきた自宅と言う城。

 そんな城から出て、俺は今買い物に行く訳でも、銀行や市役所に行く訳でもなく歩いている。

自宅警備兵と言う立派な肩書きを、2代目へ譲り渡す事になったからだ。

 緊急会議が開かれた訳でもなければ、肩書きを譲ってくださいと頼み込まれた訳でもなく、気付いた時にはそう言う事にされていた。

 しかし、簡単に剥奪された事への怒りすら出ない流れがそこにはあった。

 親父が、再婚した。

 新しい母親が2代目自宅警備兵となり、俺は近所のスーパーの近所にある定食屋で朝の10時から夕方の5時までのバイトを始める事になった。

 フリーターへの降格初日が、今日と言う訳だ。


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