21 th BREAK
土曜日には外泊をする決まりが出来てから凡そ2ヶ月。
10月31日は土曜日で、ハロウィン。
何日も前からハロウィンに行っても良いか?と友達と1代目に確認をして、当日家に向かったのは7時を過ぎてから。
手土産の菓子類はいちいち手作りにすると言う謎の暇人アピールをしつつ、袖で隠した手首には少々気合の入った傷口メイク!
ピンポーン♪
呼び鈴を押した後は覗き穴を指で押さえてみた。
特に何事もなくカシャンと鍵の開く音と、大きく開け放たれるドア。訪問者の確認はしないらしい。
こうして招き入れられ、テーブルの上に持参した菓子類を置き、ハロウィンパーティーの始まり始まり~。
とは言っても1代目は未成年なので、3人で紅茶を飲むと言う無駄に優雅な事になった。
他愛ない話で盛り上がりながらも、いつ傷口メイクを見せて驚かせようか?と考えるが、何をどう考えてもそんなのは部屋に入ってくる瞬間の出オチとしてササッと披露すべき事である。
今更見せた所で驚かれるだろうか?それに、水性マーカーで描いたのだから微妙に色落ちも気になる。
仕方ない、今回は諦めよう。
それに、驚かせる事より重大な話があるじゃないか。
土曜日に泊まらせて欲しい…そう頼まなければならない。しかし、どう切り出せば良いのだろう?
出来る限り妊活の事も、肋骨負傷の事も言いたくない。なら単純に土曜に遊びに来ていい?と軽い感じで頼んだ方が良いのか?いや、それは物を頼んでいる態度ではない。
「あの……」
声をかけると2人の視線が俺に集まった。
「どした?」
「あー……えっと、1ヶ月に1回位は、遊びに来て良い?その、お泊り有りで」
言った後、酷く気まずくなって俯く。
なんて図々しい願いだろう?
遊びには来るけど、お泊りはなし。ネットカフェにいる時間を少しでも減らして代金の節約が出来るだけで有難いではないか。
それに、ここに泊まらせてもらった所で眠る事は出来ないだろう。起きているのなら、どこにいたって同じだ。
なら、折角のハロウィンパーティーを楽しまなければ!それに1代目に会うのは引越しの手伝いをした日以来なのだから、結構久しぶりだ。
気分を変えるためにチューハイの缶を開けた所で、突然腕に圧力がかかった。何が起きたも何も、友達が俺の腕を掴んだだけ。しかしその視線は傷口メイクに向いている。
「なにこれ」
なにこれって、結構気合入れて傷を作ってきたのに、そんな言い方はないんじゃなかろうか?
「ハロウィンやし」
「は?意味分からん」
何故!?そして何故怒る!?
あ、もしかして?
「コレ、傷口メイクやからな?」
本物の傷だと思ったらしい友達は、えぇ~とか言いながらペシンと額を叩いてきた。どうやら相当ビックリしたようだ。
フフッ、ミッションコンプリート!
夜中の1時を少し過ぎた辺りで1代目が自室に戻って眠り、友達もそろそろお開きにしようとテーブルの上を片付け始めた。
「ベッドか布団かどっちがええ?」
片付けが一通り終わり、帰ろうとした所でそんな事を言われた。
「えぇよ。寝られへんと思うし、帰るわ」
「じゃあ布団な。1時間経っても寝れんかったら帰り」
何と言う強引さ!
1時間布団の中でジッとしていても、慣れない場所で寝る事なんか無理だ。そして1時間経って眠れなかった場合、どうやって帰れと?鍵は開けっ放しで良いとでも言うのか?
その後、何度か帰ると言ったのだが友達の引止めは続き、だったら1時間布団の中で過ごしてやろうと決めた。
眠れなかったぞ。と、友達を叩き起こしてやろうじゃないか!
そう息巻いて布団の中に入って、電気が消えて、DVDデッキの時計で時間確認した所までは、覚えているんだ…。
至って普通に眠ってしまった俺は、昼過ぎまで居座ったのだった。
そんな土曜を過ごし家に戻ると、一足先に弟が帰っていて、携帯で喋りながらダイニングをウロウロしていた。
邪魔にならないよう静かに通り抜けようとして手渡される携帯。
誰なのかってヒントもないのか?
「はい…」
変な電話だったらどうしよう?と緊張しながら出てみると、とんでもない人物の声が聞こえてきた。
「久しぶり~~~」
妙にカン高い声の主は、旧母親だった。
何故弟と電話をしていた?
何故俺は今こうして旧母親の声を聞いている!?
「来週はお前も泊まりにおいでーや」
来週は泊まりに?何を言ってんだ?そんな、だって、可笑しいだろ!
「泊まりに行ってたん?」
俺は携帯を指差しながら小声で尋ねてみた。すると弟は頷き、
「タダやし」
と、一言。
それはそうだろうけど!
「たまには顔見せにおいでーや」
電話の向こうからそんな声が聞こえてきて、俺は返事をした。
「暇なら行きます」
これぞまさしく社交辞令。
「お前なんもしてへんねんから暇やろ」
何故それを!?くそ…追加攻撃の威力が高過ぎる!




