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自宅警備兵  作者: SIN


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44/50

LEVEL-17

 ロッカー室から出ると、そこにグシャッと丸まった1枚のテーブルナプキンが落ちていた。

 こんな所に捨てるな、と思いながら拾い上げてみると、なにやら文字がビッシリと書き込まれていた。

 「ばはいひとほおほわはりひげひえへせへんいひこほうふ」

 こんな感じでズラズラと。

 筆跡からして2人の人間が交互に文章を書いている。

 こういうのを残しておけば後々思い出になるのに、と思うとゴミ箱に入れる事が出来なくなり、元の場所に戻しておいた。

 昼のラッシュ時が終わり、店内から客がいなくなると昼食の時間が来る。

 前はチーフがパパッと作っていたのだが、最近ではラッシュ時間が終わる頃にチーフは休憩に入るようになっていたので、賄い食は店長か俺が作っていた。と言っても、店長は少し焦げてしまったカツを取っておき、焦げた部分をカットした物を賄い食として出したりしていたので、冷えている上に美味しくはない。

 今日は特に失敗作はなかったので、多分俺が作る事になるだろう。と、後ろで警察犬と高校生バイトの声が聞こえて来る。

 「きひばはさはんかはなは?」

 「かはつふどほんたはべへたはいひ」

 スラスラと喋る2人の頭の回転はかなり速いのだろう。

 「木場、飯作ってやってくれ」

 オーダーミスがあった鰻丼を既に頬張っている店長が厨房の中から声をかけてくると、後ろにいる警察犬と高校生バイト2人があからさまに嬉しそうにした。

 店長の態度は改善してもらいたいと思う反面、こんなにも嬉しそうにされると、かなり嬉しい。非常に嬉しい。

 「カツ丼にします。ご飯用意してください」

 厨房に立ち、賄い用の小さな豚ロースを揚げ、油切りをしながら出汁に火をかけ、溶き卵をゆっくりと回し入れて半熟の状態で火を止める。用意されたご飯の上にカットしたカツを並べ、上からザッと半熟をかけて最後に三つ葉をちょこん。

 完璧。

 カツ丼を食べる警察犬と高校生バイトは、とてもじゃないが日本語に聞こえない言葉で会話しており、それを聞きながら悩む。

 朝、ロッカー室前に落ちていたあのテーブルナプキンの文字を見た時から、俺にはこの2人が何を喋っているのかが分かっていた。今日カツ丼にしたのだって、

 「かはつふどほんたはべへたはいひ」(かつどんたべたい)

 と聞いたからだ。

 このままではまるで盗み聞きしているようで気分は良くない。だからと言って「意味分かってるぜ☆」とかドン引きされるに違いない。

 「その言葉は使わないようにしてください」

 強めの口調で注意すると、はいと返事をしつつも2人は俺に対する不満を非常にニコニコした顔で言う。

 「そほこほまはでへのほこほとほ?」(そこまでのこと?)

 「ほほんまはやはでへ」(ほんまやで)

 よしここだ!

 「そこまでの事、です」

 フッ、決まった。


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