13 th BREAK
水曜日の午後、バイトが休みなのでノンビリ過ごしていると電話が鳴った。
「はいもしもしー」
新母親が電話に出たらしく、2階から声が聞こえて来る。
平日のこの時間にかかってくる電話にはロクなモノがないのだが、新母親は自宅警備兵2代目として立派に成長しているので心配はない。
「はーい、ちょっと待って下さいねー」
ん?
トントンと階段を下りてくる音と部屋のドアをノックする音。ドアを開けると受話器を持った新母親が立っていた。
誰からなのか全く心当たりがないのだが、何のヒントもなく差し出される受話器。
出来る事ならこのまま切ってしまいたいが、相手は家の電話番号を知っているだけではなく、俺を電話に出せと催促した。下手な真似をすれば後々面倒な事になるかも知れない。
「はい?」
電話に出ると親しげに話しかけてくる1人の女性。
誰なのかが分からないまま話し続けられてはいるが、全くの他人ではないらしく同級生だと言った。
誰だ?
そもそも女子とそんな仲良くなかったぞ?
同窓会のお知らせか何か?だったらそう言ってくれれば的確に行かない事だけを告げて切る事が出来るのだが、相手は延々と世間話を続けている。
そして、満を持してかけられた言葉。
「木場君今なにしてるん?」
今?
そうか、平日の昼間に家にいるのは確かに変……平日の昼間、自宅に電話して来たのは何処の誰だ!
正直に話す事は何もない。
「今ですか?家事手伝いですよ」
「え?あ、じゃあ…携帯、番号交換しようや」
何が「じゃあ」なのだろう。
友達でもなんでもなかった筈なのに、急に電話してきて何を訳の分からない事を言ってるんだ?それに俺は携帯など持っていない。
「持ってません」
「え…っと」
それから、とんでもなく長い沈黙が続いた。
「聞こえてますか?切りますよ?」
あまりにも無言なので声をかけると、受話器の向こうでボソボソと話す第三者の声が聞こえた。
他に誰かいる?
「あ、っと。あんな、今私メイクの勉強してて、そんで今度良かったら一緒に遊びたいなーって」
シドロモドロと喋る女子の声は、始めに世間話と言う銃弾をぶっ放していた時の勢いが微塵もない。しかもメイクの勉強をしている事と一緒に遊ぶ事がどう結び付くのかが分からない。それにさっき聞こえた第三者の声。
知り合いを装った、ではなく、知り合いからのハニートラップがあろうとは。
そうと分かれば取るべき行動はたったひとつ。
「メイクの勉強頑張ってください。同窓会があればその時にでも会いましょう。では」
プッ プープープー。
会話、強制終了。




