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自宅警備兵  作者: SIN


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30/50

10 th BREAK

 無事にバイトを終え、ロッカーで着替え、後は買い物をして帰るだけ。

 今日はチューハイにするか、それとも日本酒にするか。そんな晩酌の事を考えながらロッカー前の通路に出ると、丁度女子高校生バイトがやってきたので、一旦ロッカー室に戻って道を譲った。

 「すいません」

 と頭を下げて通り過ぎる女子高校生バイト。

 お疲れ様と声をかけた方が良いのだろうか?いや、変に立ち話なんかして、着替えを覗こうとしている、と勘違いされても厄介だ。しかし黙って帰るのも違う。

 ロッカー室で待機して、女子高校生が着替えて出てくるタイミングを見計らって声をかけ……不審人物極まりない!

 「お疲れ様です」

 結局、背を向けた形で声をかけた。

 さぁ、出口に向かって一直線!あのドアの向こうには昼寝と晩酌が待っている!

 「木場さん、怪我中々治りませんね」

 ん?

 怪我?

 不思議さに足が止まり振り返ると、女子高校生バイトが真正面から俺を見ていた。

 可笑しい。

 肋骨の事は店長にも言ってないし、最近では差し込むような痛みもなく普通に動けていると思うのだが、何故知っている!?

 待て、誰も何も肋骨の事だとは言ってないじゃないか。

 「怪我ですか?」

 「胸の所、ですよね?」

 女子高校生バイトはそう言って俺の左胸を指差している。

 超能力者か!?なに、なに?そんな凝視されると怖いんですけど!

 いやいや、落ち着くんだ。

 セット中に体を捻ったりした時、無意識に胸を押さえているだけなのかも知れない。それに、そうだ。かなり痛い時は痛み止めを飲んでいるではないか。それを見られていたとしたらなんの不思議もない。

 こんな年下にまで心配をかけてしまうとは、情けない。

 大分治っている事を教えて、少しでも安心してもらおう。

 「治っ…」

 治ってきていますよ、と言おうとして途中で言葉が止まり、後ろに避ける事すら出来ず、斜め下にある顔を見る事しか出来ない。

 女子高校生バイトは、俺の左胸に顔を近付けて来て、クンクンと臭いを嗅ぎ…。

 「ほらぁ~、湿布の臭いしてますもん」

 なっ!しっぷ?湿布!?

 病院で貰った湿布は、市販されているようなメンソール的な臭いが少ない。多少するその臭いだって湿布をダイレクトに嗅いでみて分かる程度のものだ。なのに、服の上から、しかも揚げ物用の油臭漂う厨房でそれを感じ取っていたと言うのか?

 「鼻が良いんですね」

 俺は女子高校生バイトの事を「警察犬」と命名しながら、警察犬の中での俺が「おじいさん」にならない事を祈ったのだった。


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