9 th BREAK
1パック98円のミックスサイズの卵を買って帰ると、新母親もそれを買っていた。
冷蔵庫の卵を入れる場所に入り切らない。パックごと冷蔵庫に入れても、他の食材が入らない。
と言う訳で卵料理を作り置く。
木場家では、食事時に家族で食卓を囲む。と言う習慣がなく、冷蔵庫の中に入っているものを個々が温めて食べる。なので作り置いておけば誰かが食べてくれるのだ。
こうして卵サラダを作った後、1番大きな卵を使って目玉焼きを作る事にした。
フライパンを熱し、コンコン、パカッ。
「おっ」
双子だった。
誰かに見せたいが、これだけの為に2階でくつろいでいる新母親を呼びに行くのはどうだろう。しかし、誰かに見せたい。
落ち着け、この歳にもなって卵の双子を見た位でなにをはしゃいでいるんだ。ここは自分の心に刻み込み、大人しく食べようではないか。
食パンをトーストし、バターを塗って、その上に目玉焼きを乗せ、ラテを淹れ。食べようとした所で弟が帰ってきた。
「おぅ」
「ん」
短いやり取りを終えた後、何気なく食パンを見せる。
無反応。
見えていないのだろうかと指を差してみるが、フーンと言った風で何の反応もない。
「太郎と、三郎」
終に俺は双子の紹介をした。
「次郎どこいった!?」
そうじゃない!
見るのだ、こいつらは双子なのだぞ!
次郎ツッコミを終えた弟は、仕事は終わったと言わんばかりに階段を上がって行ってしまった。
俺が思うほど卵の双子は珍しくないのだろうか?いや、バイト中卵を割りまくっているが、双子は本当に滅多にお目にかかれない。だとすると、卵の双子に対する注目度は、それほど高くないという事なのか?
まぁ、良い。一応弟に見せたんだから俺の「誰かに見せたい」と言う欲求は満たされた。なら、大人しく食うとしよう。
いただきます、と手を合わせ、時間を置き過ぎた為に少々デロンとなったトーストを持ち上げて1口、2口。半熟が好きなので齧ると黄身がトロトロっと溢れて出てくる。
さぁ、次の1口、と思った矢先の出来事、トーストを持ったままラテを1口飲んだ直後の事だった。
ボトッ。
卵が、床に落ちた。
「さぶろぉー!」
まさか、声が出るとは。




