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自宅警備兵  作者: SIN


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LEVEL-11

 ゴールデンウィーク中はパートの面々がいないので、数少ないバイト全員毎日出勤する事になっていたのだが。やはり出るわ出るわの無断欠勤者。そうなると必然的に長時間残業になる。

 まぁ、それだけならゴールデンウィーク中に大分稼いだZE☆で終わらせる事が出来たのだが、当然、それだけで終わった訳がない。

 月曜から水曜日までの3日間、親父と新母親は夫婦水入らずで旅行に出かけたものの、弟の休みは日曜日のみだったので、それはそれは普段と何の代わりもない日常を送れるはずだった。

 月曜日の午後、睡魔と言う強敵と戦いながら客足の途切れた厨房の中で台を拭いたり、床磨きをしたりしていると、キンコーンと来客を告げるアラームが鳴った。

 こんな時間に珍しいなと思いながら茶を持ってホールに出ると、そこには黒で統一されたコーディネートのラスボスが1体現れていた。

 エスケープと言うコマンドがあるなら連打をしたい程の不意打ち攻撃に、一旦厨房に緊急避難した程だ。

 しかし甥や姪の姿はなく、姉が1人で来店している光景に違和感を覚える。

 どこかに行って、その帰りに立ち寄っただけとか?

 「…いらっしゃいませ」

 緊張しながら茶を出すと、姉はメニューさえ手に取らずにオーダーした。

 「生頂戴」

 昼から飲むのか!?

 いや、休日なのだから別に可笑しくはないか。

 姉がやる事の全てが可笑しいように思えてしまうこの現象はなんだろう。

 この日もバイトの1人が休んでいたので店長は忙しい筈で、本当なら俺も長時間残業する予定だったのだが、身内が来たと言うので定時に上げらされてしまった。

 姉と2人肩を並べて歩く帰り道、何故着いて来るのだろう?それに、妙にデカイその鞄はなんなんだ?

 いや、まさかな。甥も姪もいないと言う事はちょっと顔見せに来ただけだろう。親父も新母親もいないと知ればスグに帰るに違いない。

 「はぁー重かった」

 ゴトッと鞄を下ろすなり中身を取り出す姉。

 最初に出てきたのはタオル、続いてタバコが入っているポーチ、化粧道具と、缶ビール6本。

 缶ビール6本!?糖質80%カット?知るかっ!

 落ち着け、持参品を飲みきれば帰るだろう。なら先に伝えるべき事がある。

 「親父ら今旅行でおらんし、明日は俺もケンも仕事やからな」

 遠回しではなく、かなり直接的な「泊まらないでくれ」アピールだ、しかし姉は、

 「うん、知ってる」

 と、華麗に俺の先制攻撃をかわした。しかも知ってて来たという強烈なカウンター。くそ、負けてたまるかっ!今日こそは姉に勝たなければ!

 よし、ここはつまみでも作って、ビールをさっさと飲み切らせてしまおう作戦で行こう。

 2日物の燻製チーズと、鳥肉を解凍して一口大に切って焼き、梅昆布茶をふりかけただけの物、何故か1束だけ余っていた水菜のお浸し。

 物凄いスピードで飲食を開始させる姉、かなり良いペースでビールは空になっていく。

 もう一押し!

 じゃがいもとウィンナーをオリーブオイルで炒め、乾燥バジルをパラパラっとしただけの簡単ジャーマンポテトでどうだ!

 「あー、ビールなくなったわ。買出しいこか」

 空になった缶を潰しながら姉はそう言って立ち上がる。

 そのパターンがあったとは!

 姉と2人でやって来た近所のスーパー。洋菓子コーナーの前にはこどもの日、と書かれたポスターと、かなり安売りされているケーキが売っていた。

 そうか、明日は子供の日なのか。

 俺は確信した、子供を連れて来ていないのだから姉は今日中に帰るのだろうと。そう分かってしまえば気分はかなり楽になった。

 甥と姪がチーズ好きとの新情報を聞いていたので、こどもの日の贈り物として燻製チーズを土産にしようとか考え付く余裕が出た程だ。

 弟が帰って来ると兄弟3人での飲み会がスタートした。

 開始する前、弟は朝が早いからお開きは11時頃と宣言した訳だが、それを守るような姉ではなく、11時を過ぎてもまだ楽しげに喋りながら飲んでいる。弟も酒を飲むと多弁になるので、2人はかなり盛り上がっていて一向に終わる気配がない。

 どうすればお開きになるのか?と考え、多少強引な手法を思いついた。

 姉はビールならいくらでも飲めるが、焼酎や日本酒はコップ1杯飲むだけでダウンする。それを利用するしかないと思ったのだ。

 焼酎を炭酸で割り、くし切りにしたレモンを入れて弟に出すと、姉がソレに興味を示す。そこでとどめに、

 「市販のは甘いから、自分で割った方がウマイよな」

 と、弟に言う。

 「あー、前のジントニックは確かにウマかった」

 弟が言うと姉は俺の前にコップを出し、

 「作って」

 勝利を確信し、かなり薄めにレモンチューハイを作って出すと、止めれば良いのに姉は豪快に飲み干し、数分後、静かになった。

 その時点で11時半、終電にはまだ間に合う時間だが…しまったな。弟を寝かせる事だけを考えたばっかりに、姉を帰らせると言う大事な所を完全に忘れていた。

 仕方ない、明日バイトが始まる前に帰ってもらおう。

 弟が自室に戻り眠る頃、俺は食器の片付けを終えたダイニングで泥酔して大の字になって眠る姉を前にどうしようかと考えていた。

 流石にダイニングで寝かせておくのは非道過ぎるのだが、この重量感たっぷりなボディを抱き上げて2階に運ぶだけの力は俺にはない。その上肋骨の回復は思いのほか難航しているので激しく動く事は医者から止められている。本当は禁酒だとも言われているのだが、それは守れそうにないと医者にも言っているので、まぁ、なんとも。

 一旦起こして、自分の足で布団に入ってもらうしかなさそうだ。

 「ここで寝るな、起きろー」

 トントンと肩を叩くが無反応、ユッサユッサと肩を揺さぶると「う~」と唸り声が聞こえた。

 相当酔ったのか、これじゃあ起こせたとしても階段を上がるという行為は少々危険かもしれない。なら、ダイニングに布団を敷いて寝かせるか。

 テーブルを隅に寄せ、厚めの毛布を押入れから出して敷いて、再び姉の肩を揺さぶる。

 「うぅー!」

 ドゴッ!

 鬱陶しそうに少し暴れた姉は、ゴロンと寝返りを打つ序に肘で俺の胸の辺りを攻撃して来た。

 クリティカルヒットをまともに食らってしまった俺は、肋骨に9999のダメージを受けた。

 誰か!誰か体力回復剤をっ!

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