二人の距離
それから俺は学校が終わると家に帰らず病院に向かった。
海香が目が覚ましてからは毎日話し相手をしている。
病室には海香のほかに入院患者はいない。
なので少しでも海香の話に相手になれればと思っている。
それに正直にいえば、俺はまた海香の声が聞けるかと思うと心がウキウキしてしまう。
「でさ、昴の奴が何をしたと思う?」
「えぇ~~、まったく想像つかないなぁ~」
「それが、3年生の女を口説いたんだよ。しかも彼氏がいるにもかかわらずに」
「まぁ、とても面白い人だね。その後どうなったの?」
「それが、面白いことに口説いてる最中に女の彼氏が出てきて、周りが一瞬凍りついて俺たちはすぐに逃げたよ」
「それで昴君は大丈夫だったの?」
「ああ、彼氏の方は俺たちのことを知らないし、顔も見られてないからばれる心配ないよ、ある意味危機一髪って感じ」
二人そろって笑いあう
これほど楽しい日々は何ヶ月振りだろう。
いままでは志乃舞に復讐するために家やスポーツジムで体を鍛えていた。
それまで笑うという行為は学校の中でしかなかったが、心の底から笑えたのはやはり海香と一緒にいる時間だ。
やっぱ俺は海香のことが好きだ。
だが、志乃舞のことも好きだった。
中学で別れるときに俺の優柔不断さにあきれてしまったのだろうか、俺が志乃舞に告白して振られたけど、志乃舞が言った最後の言葉が何を表しているのかが全く分からなかった。
それからおれは自分の心の弱さである優柔不断を克服するために頑張って、努力して、なくすことに成功した。
それによって、中学の友達から「変わったね」の言葉を多く貰った。
優柔不断をなくした俺は今度志乃舞に会うことがあればもう一度告白しようと思った矢先があの事故だ。
あの事故で俺の心は海香の方に行ってしまった。
そして、今日海香に告白する。
なぜか胸がドキドキして、口の中が乾燥する。それほど俺は緊張している。
志乃舞に告白するときでさえ緊張したが、その比ではない。
しかしここで言わないといけないような気がする。
俺は勇気を振り絞った。
「海香、ちょっと話を聞いてくれないか?」
「ん、どうしたの?」
その顔、俺に向けられる不思議そうに首をかしげるポーズ。
俺の鼓動がさらに早くなっていく。
「海香は俺のことどう思っている?」
「えっ、そ……そんなこと…急に言われても」
海香の頬が微妙に赤くなっていた。
俺はそこを見逃さなかった。
「海香、俺はお前のことが好きだ。彼女になってくれませんか?」
言った。言ってしまったもう後戻りすることができない。
この静かな時間がとてもきつい。
海香は返答に悩んでいるみたい。
(やっぱりダメか)
そう思った時海香の口が開いた。
「こんな私でよかったらいいですよ」
恥ずかしそうに言っているけど確実にOKサインをもらった。
こんなうれしいことはない。
俺は海香に抱きついた。
「俺もうれしいよ、海香」
と言って、二人は見つめているうちに唇同士が重なり合った。
ここで二人の恋が成就することになります。
最後は皆さんの想像にお任せします。
次からは復襲編に入る予定です。
できるだけグロテクスな表現をしないように頑張っていこうかと思います。