復讐の準備①
明日
海香は意識不明の状態が続いているが、山場を越えて命を取り留めることができた。俺は海香が生きていることに感謝して、俺は右手の義手自在に操れるようにリハビリを続けた。
体に後遺症がなかったが、右手の義手が思うように動かすことができなかった。はじめは、右手を切断した後そのままにするか、義手を着けるかの選択肢があった。それを、海香の両親たちが義手を着けさせる方を選んだ。(しかも無断で!!)
はじめ、怒りが込み上がってきた。俺の許可もなく義手を着けることに。正直、右手がない状態でもよかった。
しかし、次第に義手があってもいいなぁと感じるようになった。おじさんたちも右手のないまま生活させるのはかわいそうと思ったのだろう。俺は右手を自由自在に動かせるように頑張った。最初は、腕を上下左右に動かすことだった。それが以外と難しかった。
まず、動かすという動作。これが一番の難関である。右手は切断してから義手をはめているから神経が人工物であるという点。これのせいで人工の神経を自分のものにするために時間をかけてしまった。だが、人工神経を支配することに成功すれば、他の動作を自由自在に動かすことができるようになる。
そして、あっという間に5か月のリハビリを続けて、ようやく神経を支配することに成功した。それからは、どんな動作も可能になり、俺の退院が決定した。
退院の日
「今日で退院かぁ」
「それで、きみはどうするつもりかね?」
退院当日俺の迎えに海香のおじさんが来てくれた。
「俺は、海香をあのようにした奴を復讐する」
「……やはり君は…」
おじさんは悲しい目でこっちを見ていた。
(何故おじさんは俺の考えに賛同しようとしないのか?)
俺は疑問と言う二文字で頭がいっぱいだった。
「そうだ、私たちの家に来ないか?」
おじさんはいきなり俺に訪ねてきた。
俺はこれから志乃舞に復讐するために体を鍛えないといけない。
しかし、おじさんは俺の考えを無視して、強引に俺を連れておじさんの家に向かっていった。
「今日からこの家で暮らすといい。それから、君の部屋は今まで使っていないけどこの部屋をつかってくれ」
この部屋は、海香の部屋の隣にあったが、意外にきれいな部屋であった。そこには机とベットと必要最低限の物が置いてあった。
「おじさん、何もそこまでしなくても、それに俺には家があるから」
「それでは、駄目なんだ。ここは海香の双子の兄に充てた部屋なんだが君に使って欲しいんだ」
机の上には写真があり、家族全員が映っていた。おじさん、おばさん、そして、赤ん坊が2人の写真。
その写真を見たとき、俺の頭の中に何かがよぎった。なぜか写真の風景に見覚えがあるような感じがした。
「おじさん、この写真は?」
「それは、はじめて家族全員で撮った写真なんだ」
今更こんなことを詮索しても意味がないから、この話は軽く流した。
「おじさん、親切にしてくれてうれしいけど、俺は奴に復讐するために3年間鍛えたいんだ」
「そんなことしないでくれ。そんなことしても海香が喜ぶことなんてないよ」
それはわかっていた。海香は他人を不幸にすることを一番に嫌っていた。だが、それでも俺はしなくてはいけない。
相手がもう一人の幼馴染の志乃舞だから。
「おじさん、俺は心の中で決めていたんだ。海香をあのようにしたのは俺だということを。あの日俺が海香を外に出したせいでこんなことになってしまったことを。だから、罪を償えることと言えば、奴を殺した後、自殺する」
(俺に悔いはない。心残りがあるとすれば、海香と一緒にいたかったが、それも無理なことだろう。俺は殺人者と言うレッテルを貼られることになるから)
そう考えていると、おじさんが泣き始めた。
「本当に君は人を殺すんだね。ならこのことだけは知っていてほしい」
そして、おじさんの言葉に俺は衝撃の事実を知ることになる。
なんだかんだでやっているが完結するように頑張ろうと思う