デートそして再開
「私、幸せかも」
そんなことを言っている愛空さん。
幸せ。確かに、愛空さんにとっては幸せかも知れない。昨日出会って、そのままホテルで一日泊まっただけで、俺のことが好きになって、半ば強引のように告白してくる。俺にはこんなことできない。ここまでな積極的行動は普通に考えることはできない。いや、愛空さんだからこそできた芸当なのだろう。けど、俺には彼女がいるのに、何故か楽しい。たぶん、海香とこんな風にデートしたことがなかったせいかもしれない。いつかは、海香と外に出て、映画やショッピング、遊園地など楽しいスポットに連れて行かせたい。
「すべてが終わったら、会いに行くよ」
「ちょっと、何言ってるの?」
おっと、今の言葉がただ漏れしてしまった。愛空さんが不思議?ちょっと怒っているような顔で俺を見ていた。だが、その顔が妙にかわいい顔していた。
「いったい誰のこと。もしかして、もう一人の彼女?」
「まぁ…そんなところかな」
俺がそう言うと、愛空さんは怒る顔から笑顔になった。俺はその変わり身に驚いた。普通、一般的に考えても二人も彼女がいること自体がこの世界ではタブーのはずである。それなのに愛空さんはそんなことなんてお構いなしに俺とのデートを楽しんでいた。
(愛空さんって本当に何考えているかわからん)
そんなこんなで湖の周りを歩きながらデート楽しみ、ちょうど昼時になり、愛空さんが弁当を作って来ているらしく、どうせならここで食べよと言ってきたので、俺達は近くの草原のような広い場所で昼食を取ることにした。
「はい、朱刀。あまり時間がなかったから急いで作ってみたけど、口に合うといいな」
少し緊張している愛空さん。包んでいる布を取って、弁当箱の箱を取った。
「な…何だこれは」
「やっぱり少しおかしいかな」
上目遣いで俺を見てくる。そんな目で見てくるから正直な感想を言えるわけがない。一応、俺より年上に当たるから失礼なことがいえない。
(少しどころか、めちゃくちゃ下手。俺が作った方が百倍マシだよ)
弁当箱の中にモンスターの巣窟化としているかの如き光景だった。いくらなんでも、普通に作ってもこんなことにはならないはずが、現実に存在した。ここまでの下手を出している女性が。
「い…いや、ちょっとびっくりしただけだよ」
「なら、止めようか。こんなもの食べるわけないよね」
そう言って、愛空さんは弁当箱を戻そうとしていた。
(表情に出ていたかな?けどここは……)
「駄目だ愛空さん。食べようかその弁当」
「朱刀。無理しなくても」
愛空さんがそういうから俺は愛空さんの手の中にある弁当箱を奪い取り、問答無用に食べ始めた。しかし、予想外なことが起きた。
「う…うまい。初めてだよこんなの」
「無理しなくてもいいよ。自分でもわかっているから」
「いや、無理なんかしていない。ほんとに美味しい。見た目はあれだけど、美味しい」
「ほ…ほんとに?」
「俺は嘘なんか言わない。ほんとに美味しい」
無我夢中に食べた愛空さんの弁当は数十分で平らげた。見た目がおぞましいものだったが一口食べると素材の味を生かした旨味が口中に広がった。
(まさか、味がいいとは。侮れないな、愛空さんの料理)
昼食も終わり、昼からはショッピングに行った。目的は愛空さんの服選びだった。愛空さんが次々と服を選んでは、試着して俺に見せてくる。俺は素直に愛空さんの服を評価した。ここまで、よかった。ほんとにここまでは……
「ねぇ、朱刀、これどうかな」
「ちょ……ちょっと愛空さんそんなの俺に見せないでください」
あろうことか、服を買い終わった後、ランジェリーショップに立ち寄り、いい下着があるって言って、試着室に行った後、試着した下着を俺に見せてきた。俺はどうしていいのかわからない。幸い、平日の昼間だから、客はあまりいないが、もし、周りの男どもに見られてもしたら、ティッシュ1箱は勝実になるだろう。
それほどのセクシースタイル。
「朱刀ったら、顔が赤くなってるよ」
「その恰好でいる方が恥ずかしいんじゃないですか」
「別に減るもんじゃないし、朱刀にならいくらでも見せても恥ずかしくないもん」
「分かった。分かりました。後でいくらでも見ますから早く着替えてください」
俺の胸がドキドキでいっぱいだった。まさかここであんな行動に出るなんて考えていなかった。いくら俺のことが好きでもあんな行動はしない人だと思っていたが、ほんとに不思議な人だ。
「いっぱい買ってしまってごめんね」
「いいですよ。俺の服もついでに買ってくれたので」
俺は案の定、荷物持ちとしてたくさんの買い物袋を手にしていた。
その後は、ショッピングモールを回りながら一日が終わるはずだった。
「あ、あそこのケーキ美味しそう。買って」
「おいおい、ケーキ好きだな。志乃舞」
俺の耳に聞きしてならない言葉が聞こえた。俺の本来の目的。志乃舞を探すこと。俺は愛空さんを置いて、声がする方に走って行った。
「し…志乃舞?」
俺は殺気を押し殺して声をかける。殺したい相手だけど、一応、友達であり、幼馴染なのだから。
「えっ、まさか…朱刀なの?」
「ああ、そうだよ。引っ越して以来だな」
「まさかここで会えるなんて、どんな運命なの」
志乃舞の表情は恐怖でも怯えでもなく、ただ、最愛の人に出会えたかのような笑顔だった。
次で完結かな?




