夜のドライブ
周りは夜で車のヘッドライトに当てられている部分だけが明るくなっている。窓を開けると、そよ風が車の中に入って来て、とても心地よい。そして、俺を乗せた車が走り出して、10分ほど経った頃。
「そう言えば、あなたの名前聞いてなかったね。そのまま車に乗ってしまったけど」
「うん、私の名前?私は 黒姫 愛空。 それにしても、こんな夜遅くに君みたいな高校生ががあんなところにいるなんて、普通考えられないからねぇ〜。どうして、隣の県に行こうとしているの?お姉さんに教えなさい」
確かにそうだ。俺は志乃舞に一刻も早く会わないといけないからこんな夜に家を飛び出して来ている。夜じゃなくて、朝でもよかったではないかと考えている。だけど、俺は俺と、美香を一時的とは言え、志乃舞のせいで不幸のどん底に落としたことは事実だ。だから、俺は志乃舞に復襲しなければならない。俺たちと同じ運命に遭わせないといけない。まあ、そんなことをたまたま知り合った、お姉さんに教えるなんてできるわけがない。こんなことを教えたら、必ず愛空さんは俺を止めるだろう。高校生が復讐なんて止めなさいって、そんなことは分かっている。しかし、俺は志乃舞によって、どんな悲しみが出てきたか、分かって欲しい。
「そんな、お姉さんに言えるわけがないじゃないですか。こんな夜中にうろついていた人に……」
「それはそうだけど。君の顔を見ていると、悲しい顔をしていたから、自殺希望者かなって思ってね」
「大丈夫ですよ。自殺なんかしませんよ。そんなに顔に出ていましたか?」
「うん。どことなくね……」
そんな愛空の言葉に俺は顔を伏せた。
(顔に…出ていた…か。俺は結構ポーカーフェイスは得意はずなんだが、そんなに復讐に追い詰めていたのか)
俺はここまで追い詰めていたことを、それを無意識のうちにやっていたことを恥じた。この問題は俺個人の問題であって、他の人に知られるわけにはいけない。おじさん、おばさんをはじめ学校のみんな、特に二人の人物には絶対知られるわけにはいかない。まず、一人目は藤宮 昴。こいつにこのことを知られると、俺はあいつの言いなりになってしまう。昴はこれまでに俺の秘密を何個も持っている。俺が昴に教えたわけではないが何故か、どこからか情報を手に入れてくる。まあ、将来、記者になりたいって言うから仕方ないが、俺の秘密の情報で弄ぶのは止めて欲しい。そして、二人目は海香だ。海香だけには、絶対に言えない。仮にも俺と海香と志乃舞の三人は幼馴染であり、志乃舞が引っ越しをするまでは三人で遊ぶのが普通だったほどの仲良しだった。そんな志乃舞が俺たち二人を不幸にした。俺はその時に犯人の顔を見て、志乃舞であったことが分かったが、海香は犯人の顔を見ていない。それだけでも幸運なことだ。俺だけが知っている情報。これは確実に知られるわけにはいかない。どこの誰にも絶対に。
「けど、あんまり深く考えない方がいいよ。君はまだ高校生だから、1度や2度の挫折に負けちゃだめよ」
「うん。そうですね。愛空さんの言う通りかもしれません」
「そうそう。高校生は元気が一番だからね」
愛空さんの魅力的な笑顔で俺はドキッとした。車を運転しているから横顔しか見れないが、妙に癒されてしまう。大人の女性であるせいかもしれない。みんながみんなそういうわけではないが、愛空さんだけは何か特別な力を持っているような感じがする。
その後、山を越える間、たわいのない世間話で、話を盛り上げた。車の中で無言でいることは俺の性に合わない。ただの世話話でも、愛空さんは聞いてくれたし、笑っていたので、楽しい時間になった。
そして、山を越えてふもとについて、さらに30分走らせて、ようやく町に着いた。
しかし、誤算が生じた。車に乗せてくれたので早くつくことができたが、時間が早かったようだ。
「今、11時半か。いまからどうしようか?」
「私は近くのホテルにアポ取っているからそこに泊るけど、もし、行く宛てがないなら、一緒に泊らない?」
いきなり、愛空さんの誘いがあった。けど、そこまで厄介になるわけにはいけない。
「いえ、俺は野宿して一夜を過ごすのでいいです」
俺は丁寧に断った。確かに魅力的は提案だった。野宿するよりかはホテルに泊まりたい。しかし、本当の理由はお金がないってことだ。
「の、野宿!それならなおさら泊まった方がいいよ。「し…しかし……」気にしないていいよ。一人や二人増えようがどうってことないから」
愛空さんは俺の言葉を遮って、無理やりホテルに連れて行った。ホテルに着いた俺はフロントが待たされた。愛空さんはホテルの従業員に交渉しているようだ。それもそうだ。元々、一人の予約をしていたのに俺というイレギュラーが発生したことでこんな状況になってしまったのだから。
それから、20分ぐらいたった頃。愛空さんがやってきた。
「ちょっと苦労したけど、君も泊めれるようにしたから。けど、今、全部屋満席だから、私と一緒になってしまうけど構わないよね?」
と愛空さんはすこし首をかしげて俺に尋ねた。俺はちょっと動揺した。まさか愛空さんと一緒の部屋で一夜を過ごすことになるなんて思いもよらなかったから。
「俺、やっぱり野宿します」
と言って外に出ようとしたら、愛空さんがいきなり手を引いてホテルの壁際に俺を押しやった。
「いい、今から君はあたしと一緒に泊るの。分かった?もうこれは決定したことだから」
愛空さんの表情は怒りではなく、笑顔で言っていた。そんな顔をまじまじと見て、かわいいと思ってしまった。
その後、俺と愛空さんはホテルで、一夜を過ごすことになる。
次は運命の再会になりそうです。




