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『あぁ? 雄ゴリラだぁ? てめぇ、女の子を何だと思ってんのよっ!』

掲載日:2026/09/24

挿絵(By みてみん)


 動物園の飼育展示場の前。

 目の前にはゴリラの雄。

 気にいらない相手には、う〇こを投げるらしい。

 やれるもんなら、やってみなさいよ。

 あたしは、ゴリラにガンを飛ばす。


 あれ?

 なんか、意識が……


     ~ ・ ~


 気が付くと、円形の石造りの広間に。

 地面は薄い砂地。なんかゴロゴロと転がってるのは、骨とか金属片に見える。

 ここ、どこ?

 周囲を見渡すと、大きなすり鉢状の建物の、ちょうど底の広間に、あたしがいるわけね?

 で、上からぐるっと、観客席がしつらえていて、満員御礼らしい。

 観客の服装は、昔のヨーロッパ風の、布に穴を開けて手足を通しただけの、いい加減な造りのお洋服とか、帯状の布を身体にグルグル巻いて、これこそがお洋服ですよ、みたいなのとか。

 野蛮な、原始的な格好の連中しかいない。

 あたしの、このなんて可愛いらしいセーラーな制服を見てごらんなさいよ。

 なーんて、こんな野蛮人どもに、あたしの可愛らしさは伝わらないわね。


 で、なんでこうなった?

 なんか、正面の厳重な扉が開いたね。

 出てきたのは、雄ゴリラ。

 体長230センチ。体重は推定で150キロ。

 意外にハンサムなお顔の下に、マッチョな大胸筋がこんにちは、している。

 そいつを両手でバンバン叩いて、ドラミング。

 オレは強いんだぞーとアピール。

 あ、そう。ハイハイ。

 本当に強い奴は、そういう事はしない。

 黙って近づいて、本当なら忍んで近づいて、いきなりズドン。

 それが楽。それが簡単。だって、優劣というか、狩りだもん。

 というわけで。

 ゴリちゃんにお近づきになって。

 にっこり笑って。

 お、ゴリ、なんだ? というお顔ね。

 こんな可愛い女子高生に見つめられて、嬉しいでしょ?

 そのままノーモーションでボディブローを叩き込む。

 あたしの拳が、ヤツのムキムキな腹筋にモロにめり込んだ。

 な、なぜ?

 そんなお顔ね、ゴリちゃん。

 ハン、偉そうにドラミングってか?

 てめぇ、ゴリラの分際であたしに逆らうだぁ?

 そんなもん、問答無用でぶちのめすに決まってんだろうがっ!

 175センチ、85キロのあたしが、推定150キロの雄ゴリラの、悶絶して下がって来た頭を、首ごと抱え込む。

 手は、腕は、ヤツの首回りを的確にがっちりと掴んで(ホールドして)いる。

「そぉおおおらぁ!」

 そのまま、ゴリちゃんを逆さまに抱え込んで、持ち上げてやった。

 なんか喚いてるけど、あたし、ゴリラ語は知らないんだわ。

 手足をバタバタさせてるけど、放してなんかやらないんだわ。

 コイツ、丈夫そうだし、本気でもいいんだよね?

 まあ、死んでも、どうせ野生動物だし、どうでもいいや。

 あ、ワシントン条約に引っ掛かるのかも?

 まあいいや、緊急避難という事で。

 ゴリちゃんを逆さまに掴んだまま、軽くジャンプして、あたしの体重を加えてあげる。

 そのままゴリちゃんの頭ごと、尻もちをつくように地面に叩きつけた。

 垂直落下式ブレーンバスター。

 うん、ゴリちゃんの頭、キレイに地面にめり込んだね。

「レフェリー、カウント!」

 周囲を見たけど、そんな奴はいない。

 しょうがないので、あたしが自分でカウントを取る。

「ワン、ツー、スリー! カンカンカン! あたしの勝ちねっ!」


 両手を上げて勝利のポーズを取ったけど。

 観客が、シーンと静まり返っている。

 どうやら、ご期待に沿えなかったらしい。

 しょうがないなぁ。

 まあ、どうでもいいや。


挿絵(By みてみん)


 胸に手を当てて、念じると。

 身体の中から、青い宝石が組み込まれたペンダントが現れた。

 すごく、光ってる。

 やがて光が収束し、帯となって、ゴリちゃんが出てきた入口を指し示した。

 そこにいるのね?

 ズカズカと歩いていくと、管理者らしい衛兵がゾロゾロと出てきた。

「邪魔するなら、アレと同じにするけど?」

 ゴリちゃんを指で示すと、全員、おとなしくなった。

 あ、一人だけ、なんか言って近づいて来た。

 隊長さんかな?

 ウルサイんで蹴り飛ばしたら、どっかに吹っ飛んでいった。

 どうやら、バカらしい。ゴリラと同じだね。


 重そうな扉が閉ざされたので、蹴っ飛ばしてぶっ壊した。

 出てきた連中に睨みを利かせたら、すぐに大人しくなった。

 軽くスロープを下っていくと、いくつかの頑丈そうな牢屋があった。

 多分、あのゴリちゃんもそこから出されたんだと思う。

 で、その奥に。

 青いドレスを着て、キレイな金髪を複雑に結い上げた、若い女性の姿があった。

「ミレーナ、久しぶり」

「来てくださると、信じておりました」

 手荒なことは、されていないみたい。

 そういう事があれば、直接、あたしがその場に召喚(よびだ)されるだろうしね。

 まあ、公爵令嬢(おじょうさま)をこんな牢屋に閉じ込める時点で、充分に手荒な扱いだけどね。

「牢屋のカギって、誰が持ってんの?」

「うーん、分かりません」

 あ、そう。

 両手で牢屋の格子を掴んで、全身を捻る感じでぶん回すと、大きな音を立てて引き千切れていった。

「す、す、すごいですね」

「そう?」

 こんな原始的な野蛮人どもが造り出す金属なんて、その程度のもんよ?

 ま、口には出さないけど。


挿絵(By みてみん)


「で、今回は、なんなの?」


 トラブルメーカー、ミレーナ。

 最初の事件の時に彼女から預けられた、青い宝石。

 持ち主がピンチの時に、必ず守護する、青い宝石。

 んなもんを持たされたせいで、あたし、ちょくちょく異世界に召喚されちゃってる。

 そんだけ。そんだけよ。


「で、どうしたらいい?」

「外交を務めていたわたくしを突然に拉致して、こんな所に連れてきた責任を取らせれば宜しいかと存じますわ」

 なるほど。

「その連中は、まだこの辺にいるの?」

「目端が利くなら、すぐに脱出していると思いますけど」

 なるほど、そんなセンスは無いんだね。

 その辺で怯えている衛兵の首根っこを掴んで、案内させる。

 命は惜しいらしい。素直に案内してくれた。うん、賢いじゃん。

 (多分)闘技場の上の方、貴賓席まで、首根っこを捕まえた衛兵に案内された。

 何人か、警備の兵隊はいたけど、誰も止めようとはしなかった。みんな命は惜しいらしい。賢いね。

 でもさすがに、貴賓席の扉を守る近衛兵は、そういう訳にはいかないらしい。

 うん、バカだね。

 案内役の男を捨てたその手で、一撃、二撃。はい、おしまい。

 どこに目を付けてるんだろうね。誰を相手にしてるのか、全く分かってないんだね。

 さっきのゴリラと、中身は同じなんだね。


 大層な扉を蹴っ飛ばして、ぶっ壊して。

「な、なにごとだ!」

 中にいた、偉そうな男どもをひと睨み。

「此度のスクーツ家への暴虐、どのようなおつもりなのでしょうか?」

 凛とした顔で、ミレーナが男たちを一喝する。

「な、なぜ、生きて……」

 誰かが、そう呟いたけど。

 意味が、分からん。

「そなたの聖獣は、我々の聖獣に敗れ去ったのではないのか?」

 何を言ってんだ?

「わたくしの聖獣は、このイクミです。彼女が、あなたがたの召喚した“ゴリラ”を打ち破ったのではなくて?」

 ん?

 あたしと、雄ゴリラを、取り違えたの?

 あたしのどこが、ゴリラに見えるのよ!

 ま、まあ、確かに、肌は浅黒いし、毛は濃いし、顔つきも濃いとは思う。

 で、でもさぁ、可憐なセーラー服現役女子高生なんだよ、あたし。

 どこをどうやったら、そんなもん、取り違えられるのよぉ!

 男たちは、ま、まさか、という顔で、あたしを見る。

 そんなに、そんなにあたしがゴリラに見えるっていうのぉ!

「ともかく、聖獣同士の聖戦で、わたくしのイクミが勝利したのですから、聖約は守って頂きますわよ」

「う、うむ……」


挿絵(By みてみん)


     ~ ・ ~


 外交上は、勝ち目がなかった彼ら。

 無理にミレーナを拉致して、聖獣同士の聖戦に持ち込んで、一発逆転を目指したらしい。

 闘技場(バトルアリーナ)を使ったのも、観客を満員御礼にしたのも、全て必勝を期するためだったらしい。

 なんか、その、バカだねぇ。ゴリラと同じだね。

 で、彼らはミレーナと雄ゴリラを隣同士の牢屋に入れて、雄ゴリラに求婚させていたというか、ミレーナが求婚されてたんだってさ。なんだそれ?

 ああ、それであたしが召喚された時、あの雄ゴリラ、張り切ってドラミングしてたのね?

 ライバル登場ってか。ザコのクセに。


「今回も、わたくしを危機から救ってくださって、本当にありがとう」

 彼女の屋敷で歓待された、その夜のこと。

 とても怖かったので、今回も一緒に寝てほしいと言われて。

 寝巻姿(ネグリジェ)のミレーナが抱きついてくる。

 まあ、確かにお貴族様のお嬢様には、ちょっと刺激が強すぎる経験だったかもね。

 適当にあやしてやると、あたしの大きな胸の谷間に、彼女が頭をうずめてくる。

「大きい……温かくて、柔らかい……」

 まあね。あたしのおっぱい、半分は大胸筋(ゴリラとおなじ)だからね。どうしても大きくなっちゃうんだわ。

 ミレーナったら、あたしのおっぱい(ゴリラ)がすっかり気に入ったみたいね。顔をスリスリしてくるわ。

 しょうがないなぁ。

 幼児をあやすように、頭をなぜて、背中をさすってあげてたら、すっかり満足したらしい。深い寝息を立ててるね。

 さ、あたしも寝るか……


挿絵(By みてみん)


     ~ ・ ~


 ベチャ!

 顔になんか付いた感触で、目が覚めた。

 動物園。ゴリラの飼育展示場の前。

 あたしの顔に、う〇こを命中させて、ご満悦な雄ゴリラ。

「ごぉおらぁあああ!」

 あたしは、柵を乗り越え、堀を跳び越えて、ゴリラのいる飼育棟の中に殴り込んでいった。


挿絵(By みてみん)


 飼育員さんに、こってりと叱られた。くそぉ。



                    (おわり)


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― 新着の感想 ―
こんばんは(/^-^(^^*)/ 僕もミレーナの胸に顔をうずめてみたいです。 短編の方が読み切りで好きかも。 ここ、イラスト入れられるんですね ゴリラの檻の立つ女子高生の白日夢って解釈で良いのかな…
175センチ、85キロ モデルは誰だろう? 吉田沙保里先生かと思って検索したら、157cm55kgでした。 いずれにしても、強い女はいいですね。
 相手の力を利用するわけでもなく、ゴリラを抑え込む程の力技を繰り出す女子高生のチートが炸裂しまくる展開には驚きもしますが、何よりも筋肉質で体脂肪率が低いのでしょうけど175センチ、85キロの体型が気に…
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