千紗との再会、「君は特別」
再ループした世界。
でも俺には確信があった。
前よりも、ほんの少しだけ──
三人の笑顔が近くなっている。
俺の言葉が、行動が、ほんの少しずつでも
“届いてきている”という感触。
放課後、誰もいない図書室。
ページをめくる音だけが響く中で、彼女はそこにいた。
「……また、来たんだね。セイタくん」
本を閉じて顔を上げた少女、千紗。
この世界の“観測者”──いや、“神様”のような存在。
彼女はいつも、俺がループするたびに姿を現す。
でも今日の彼女は、どこか違って見えた。
「……セイタくん、君は強い人だね」
「他人の痛みに目を背けず、
自分の痛みを隠してでも、救おうとする」
「……そんな君のことが、ずっと羨ましかった」
千紗の言葉に、俺はしばらく黙っていた。
彼女の目には、ずっと前からある“孤独”が滲んでいた。
ヒロインじゃない。選ばれない存在。
この物語に居場所なんてない……そう、彼女は思い込んでいる。
「……違うよ、千紗」
「お前が俺にループを起こさせてるんじゃない。
俺が、自分の意志で何度も繰り返してるんだ」
「だって、千紗も含めて全員を救いたいからだよ」
──その瞬間、彼女の目がわずかに揺れた。
「……私も、入ってるんだ。君の“全員”の中に」
「当たり前だろ」
「お前がいなきゃ、俺は何も気づけなかった。
だから、お前も絶対に、俺の“ヒロイン”なんだよ」
……言ってから、自分でちょっと恥ずかしくなった。
けど、千紗は何も言わず、静かに立ち上がって、俺のそばに来た。
そして、そっと俺の胸に手を添えて。
「……じゃあ、ちゃんと見届けるよ。君の物語を。
君の選択が、世界を変える瞬間を」