表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/73

明日の朝、君と

朝、カーテン越しの光が差し込む。


「……セイタくん、起きてください」


耳元で囁くような声。

目を開けると、莉子の顔がすぐそこにあった。


「……まだ、眠い」


「もう朝ですよ。せっかく早起きしたのに」


「じゃあ、もうちょっとだけ」


「だめです。朝ごはん作ったんですから、食べてください」


「……結婚したみたいなセリフだな」


「……だったら、練習ですよ」


 


笑い合って、布団から出る。


莉子が用意した朝ごはんは、卵焼きに味噌汁、そして焼き鮭。

俺の好みを完璧に把握していた。


「うまっ……って、莉子、これ、だし巻き?」


「はい。甘いやつじゃなくて、出汁のきいたのが好きだって言ってたので」


「……やっぱ結婚してるじゃん、俺ら」


「ふふ、じゃあ入籍届持ってきます?」


「笑えねぇよ、マジで」


 


俺たちはあの夏から、少しずつ未来の形を固め始めた。


同じ大学への進学も決まった。

将来の話をするとき、莉子はいつも“ふたりで”って言葉を使う。


俺はそれが、心からうれしかった。


 


食後、ベランダに出る。

日差しは優しく、風は少し涼しい。


莉子が隣で、そっと手を握った。


「今日も、普通の日ですね」


「……ああ。でも、それが一番いい」


「私は、ずっとこうしていられたらいいなって思います」


「……俺も」


 


好きな人と過ごす朝。

他愛ない会話。

笑い合う時間。

心地よい沈黙。


どれもが、“特別”で、“奇跡”みたいだった。


 


莉子が顔を上げて、まっすぐに俺の目を見た。


「セイタくん。ありがとう。選んでくれて。

私……あの日、ずっと不安だったけど……

今は、自分をちゃんと好きでいられます」


「それは、俺のおかげじゃなくて、お前自身が頑張ってきたからだろ」


「でも、セイタくんがそばにいてくれたから、頑張れたんです」


「……これからも、そばにいるよ」


「……はい」


 


そして、俺たちは今日もまた、新しい“明日”を迎える。


心のどこかにまだ不安が残っていたとしても、

迷う日があったとしても、俺はこの手を離さない。


――君と一緒なら、大丈夫だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ