崩壊の予感
「なあ、セイタ。あたしのこと……まだ好き?」
夕暮れの帰り道。
並んで歩くはずだった距離に、妙な空白があった。
いつも通りツンツンして、
でも最後には笑ってくれるはずの真央が──
今夜は、違った。
「好きだよ。そんなの、言うまでもないだろ」
「……うそ」
歩みが止まる。
真央が、俺の胸元を指で突いた。
「最近、あたし以外のことばっか見てんじゃん。
紗耶にも莉子にも、同じ顔で優しくして」
「……あたしはさ、“セイタだけ”を好きでいるのに。
なんで“セイタはあたしだけ”を見てくれないの?」
刺さった。
ズルいのは、俺だった。
「みんな大事って言葉は、優しさの皮をかぶった残酷だよ」
風が吹く。
真央の前髪が揺れる。
でもその目は、揺れていなかった。
「全部、覚えてるんだよ。ループしてることも。
何度も、何度も繰り返して──
そのたびに、あたし“捨てられてきた”んだよ」
「……だったら、セイタ。
最後に聞かせて」
「今、“一番大事なのは誰?”」
沈黙。
答えが出せなかった。
その瞬間──
真央は、
俺の顔を見て、何かを諦めたように、
静かに笑った。
「……だと思った。じゃあ、あたし、先に帰るわ」
夕暮れの中、背を向ける真央。
呼び止めようとして、言葉が出てこなかった。
心が引き裂かれるような音が、風に消えていった。
──気づけば、ポケットの中の携帯が震えていた。
【着信:沙耶】
そして、通知。
【未読メッセージ:莉子「セイタ先輩、今少しだけ会えませんか?」】
世界は止まってくれない。
愛することを選び続けた俺に、
“代償”が突きつけられていく。




