選ばなきゃ壊れる。だから全部選ぶ
春。
桜が咲き乱れる大学のキャンパスは、まるで始まりを祝福するかのように輝いていた。
──そして、俺はモテている。
信じられないくらい、モテている。
「セイタ! 今日、ゼミの説明一緒に行こ!」
「オイ、鍋パの材料買い出し手伝えって言ってんだろ!」
「先輩、夜桜見ませんか? ふたりで……♡」
呼び止めてきたのは、全員──違う女の子。
優等生で気配り上手な【紗耶】。
元気すぎる幼なじみで暴力的な【真央】。
天然後輩で甘え上手な【莉子】。
全員、俺のことを好きでいてくれる。
……そして全員、同じ時間に誘ってきている。
(まーた来たよ……この選択肢)
俺はため息をつきながら、ポケットの中のスマホを握りしめる。
それは、何度目かの“ループ”の始まりの合図だった。
──選べなかったら、世界が壊れる。
選んでも、誰かが泣いて終わる。
そんなクソみたいなルールの中、
何度も、何度も繰り返してきた春。
でも──
俺は、もう決めてる。
「全員のとこ行くしかねーだろ?」
ルールなんか知らねぇ。
修羅場? まとめて来いや。
全員愛す。全員救う。
誰も泣かせないルートを、俺がこの手で作る。
これは──
“選ばない”と決めた男の、恋と戦いの物語。
さぁ行こう。
第1ルート、真央からだ。
俺は、走り出した。