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悪役戦姫ノア、男装皇帝に嫁入りする  作者: ゆいレギナ


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26話 愛されていた騎士


 今日は、私のほうが早く目覚めた。

 まだ外は暗い。それでも体内時計だけで目覚めることには慣れている。

 これまた戦場で身に着いた技術だ。


 エルはまだ隣でスヤスヤと寝息を立てているふりをしていた。

 そんな彼女の頭をそっと撫でる。


「行ってくるね」

「…………」


 私の言葉に、彼女は寝たふりを続けていたけれど。




 私が向かう先は、城の裏門。

 どうせなら正門から堂々と旅立てばいいのに、どうも定石が許さないらしい。


「俺は追放者だぞ! 正門なんて使えるはずがないだろうが!」

「そう? だからこそ堂々と振舞ってやればいいのに」


 もうすぐ陽が昇るだろう時刻。

 セべク=ヘイムダルが荷物をひとつだけ持って門を出ようとしているところで、私は引きとめた。見張りの兵士はいるが、私たちの会話を止めさせようとはしない。


 セべクは目にくまを作りながらも、やはり声だけは元気だ。


「というか、なぜ貴様が俺の見送りにくるんだっ!?」

「皇帝が行かないっぽいからさ」

「当たり前だろう! 反逆者を見送る皇帝がどこにいる!!」


 そう、私はあくまで代理だ。

 エーデルガルドが立場上、見送りができないだろうから、その代わり。

 いつか彼女が、セべクの旅立ちがどうだったのか知りたくなったとき、話してあげられるように来ただけ。ま、少なからず世話された……世話した仲でもあるし? 


 私が個人的に別れの挨拶をしたかったのもあるけどさ。

 だから、とっても軽く訊いてみる。


「行くあては?」

「そんなものない!」

「じゃあ、シャルル王国の様子を見に行ってよ」

「なんで俺が!?」

「あちこち復興だらけだからさ。力仕事は山ほどあるよ」


 戦争はシャルル王国とアニス帝国、どちらの領地でも行われていた。そのため両国とも復興作業は継続中。真面目で力持ちの男手がほしい村や町だらけだ。きっとお兄ちゃんも喜ぶに違いない。


「シャルル王国についたら、酒場で『俺は血花のノアと決闘して生き延びた男だ!』って話してみなよ。みんな面白がるだろうから、酒の一杯でも奢ってもらえると思うよ」

「そんな恥ずかしいこと言えるかっ!」


 そうかなぁ? 世界最強と謳われた戦姫と戦って、五体満足で生きているんだぞ?

 そりゃあシャルル王国の貴族界では、私は売国奴として恨まれているだろうけど……平民や戦場を知る兵士たちからはそうでもない……と、思いたい。ま、大悪女と謳われているなら、なおのことセべクが悪く言われることはないと思うんだけどな?


 私が少々むくれていると、セべクが「ふんっ」と鼻を鳴らす。


「まあ、候補のひとつに入れといてやる」

「素直じゃないなー」


 でも、その程度でいい。

 これからセべク=ヘイムダルは自由なのだから。


 それがちょっとだけ羨ましいのはナイショだ。

 国に担がれて戦場に立って、戦争が終われば敵国に嫁がされて。

 そんな私には一生経験できないだろう自由な旅で、これから彼は何を見つけるのだろう。


 やっぱりいつか、再び彼とは再会してみたいものだ。

 そう思いながら、別れの挨拶を告げようとしたときだ。


 なんか、セべクがモジモジとしている。顔も赤い。

 そして、「ん!」と彼は大剣を差し出してきた。

 角や光を象徴するような装飾のある剣は、彼が使っていた代物だ。


「これをくれてやる!」

「え、いらない」

「うるさい! 父の形見だ。俺の命よりも大事な剣だ!」

「なおのこといらないよ!」


 そんな大事なものを、出会って二日の私にあげてどうするというのだ。

 全力で拒否するものの、それでもセべクは無理やり押し付けてくる。


「……これで、エーデルガルド様を守ってやってくれ」


 そう言い捨てるやいなや、彼は門から出ていってしまった。

 形見の剣は私に押し付けっぱなし。


 慌てて追いかけようとするも、門兵に阻まれてしまう。


「ノア姫はなりません!」

「剣を返したらすぐ戻るってば!」


 問答をしているあいだに、セべクの姿はだんだんと小さくなっていく。

 だけど「なりません」と何度もつぶやく門兵の目が、とても赤かったから。


 再びセべクの背中に目を向けながら、私は「強情だなぁ」と苦笑した。



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